#007「文系理系体育会系」
@居酒屋
ウメヅ「ごちそうさまです」
ユーリ「ごちそうさま。菊池先生は、腹が太いですね」
キクチ「太っ腹だと言いたいのですか、カンバラ先生?」
ウメヅ「さすが、メタボリックシンドローム。よ、ビール満タン」
ユーリ「梅津先生も褒めてますよ、菊池先生」
キクチ「今のは褒め言葉ではありませんよ、カンバラ先生」
ウメヅ「いやいや、何をおっしゃいますか。最高の賛辞を贈ってますよ」
ユーリ「大サンジですね」
キクチ「とんだ天災に見舞われたものですね」
ウメヅ「十五年に一度の春の大地震、三十一年に一度の夏の大水害、六十三年に一度の秋の大竜巻、百二十七年に一度の冬の大火災」
ユーリ「指数関数ですね。べき乗に増加してます」
キクチ「天文学的確率での一致。世も末ですな。改元しなければ」
ウメヅ「そういえば、再来年の元日に、今の皇太子殿下が新しい天皇陛下に即位するらしいという噂がありますね」
ユーリ「平成は、あと二年だと言われてるのですよ」
キクチ「これは僕の私見ですが、譲位が実現した暁には、公務を兄弟で分担すべきだと思いますよ。明治のエム、大正のティー、昭和のエス、平成のエイチ。それから、日本語に使わないエル、キュー、ブイ、エックスを外すと、使えるアルファベットは十八文字。大化から平成まで二百五十の元号で使われた漢字は七十二文字」
ウメヅ「使用頻度が一番高いのは永久の永で、二十九回だとか」
ユーリ「表計算ソフトを使うならば、有効な組み合わせを見付けることが可能そうです」
キクチ「旧制の学校に通っていた男子生徒なら、紙と鉛筆だけで出来るんでしょうけどね。教育勅語とともに、元号を暗記させられたそうですから。――ともかく、虱潰しにやっていけば、いくつかの候補に絞り込むことまではできるでしょう。でも、有名な漢籍の一節を引用するナラワシがありますから、最後は有識者の判断が必要です」
ウメヅ「男性教員が宿直で御真影を守ったそうですよね。――有識者か。漢学者だか国文学者だか、どこぞの国立大学で名誉教授をしてる爺さんが決めるんですね」
ユーリ「長老の言う通りなのですね」
キクチ「新元号が決まれば、その名の付いた企業の株価が値上がりするでしょうね。」
ウメヅ「ゲンキンですし、不謹慎な気もしますね。俺としては、文化としては残すにしても、企業や行政が混乱しないように、政界やビジネス界では西暦表記に統一したほうが良いのではないかと思います」
ユーリ「デファクトスタンダードに反してるのですからね」
キクチ「そうですね。それは、さておき。新元号からすれば、昭和は二つ前になってしまうんですよね」
ウメヅ「いよいよ古い人間だという実感が湧いてきますね。昭和から見た明治人と同じ感覚でしょうけど」
ユーリ「平成は大正の人ですか?」
キクチ「感覚的には」
ウメヅ「気が早いかもしれませんが、祝日についても気になりますね。生前退位後は今の天皇誕生日は平成の日になって、二月二十三日が新たに祝日になるんでしょうか?」
ユーリ「ダー、私も気になるのです。日本人は働きすぎですから、休みが増えるのは良いことですよ」
キクチ「そのあたりは、今の天皇陛下のお気持ち一つだと思いますよ。明治天皇の誕生日である十一月三日は文化の日で祝日でも、大正天皇の誕生日である八月三十一日は平日でしょう? ただ、僕としては祝日を増やすより、バカンスを取得しやすくする方が有効だと思いますけどね」
ウメヅ「本当ですね。教職員は、ほぼ年中無休ですもんね」
ユーリ「今日も土曜日なのに出勤したのですからね」
キクチ「ま、天皇陛下に比べれば、肉体的負担も精神的責任も軽いんでしょうけど」
ウメヅ「比較対象が違いすぎますよ」
ユーリ「私たちはロイヤルファミリーではないのです」
キクチ、舟を漕ぎ始める。
キクチ「全く。その通り。左様然り。ごもっとも」
ウメヅ、キクチの背中を平手で叩く。
ウメヅ「まだ寝ないでくださいよ。勘定が済んでません」
ユーリ「ダー、梅津先生の言う通りです。永眠には早いのです」
キクチ、フラフラと立ち上がりながら小声で呟く。
キクチ「ゲンキンで不謹慎なのは、どっちなんだか」




