#002「ピッチとスマホ」
@教室
タイラ「そういうことで。うん。はいはい。じゃあな」
タイラ、端末をポケットにしまう。
タイラ「悪いな、話の途中に」
サクラ「気にしないで。ケータイ、新しくしたんだね」
タイラ「そうなんだ。良いだろう? 一度の充電で、十六時間以上ももつんだぜ」
サクラ「良いね。フルチャージしても、すぐ無くなるから、僕も買い換えようかな」
タイラ「おう、そうしろよ。とっくの昔に、パカパカ開け閉めしてカコカコ打ち込む時代は終わってるんだ。今は、スマートなフォンの時代だ」
サクラ「賢い電話か。モチのロンみたいな言い方だね」
タイラ「やめてくれよ。俺は、そんな昭和な人間ではないんだからさ」
タイラ、黒板消しを二つ持ち、一つをサクラに渡す。
タイラ「しもしも?」
サクラ「しもしも。今、何してる?」
タイラ「ワンレン、ボディコンのレイキーなチャンネーと、ザギンでシースーしてるぜ」
サクラ「ナウいね。ウーパールーパーには、ちゃんと餌あげたの?」
タイラ「モチのロンよ。ナタデココの缶詰は届いたか?」
サクラ「届いてるよ。鉢巻きに短パンでローラースケートに乗った、某アイドルのテレフォンカードのオマケ付きでね」
タイラ「それは良かった。エアロビクスは続けてるのか?」
サクラ「元を取るつもりで続けてるよ。フィットネスクラブの入会には、大枚はたいたからね」
タイラ「健康を意識しすぎて倒れないようにな。それじゃあ、明日、てっぺんにギロッポンのディスコで」
サクラ「また明日。今度は、黒服に止められないようにね」
タイラ「大丈夫だって。あのあとすぐに、某ブランド直営店でスーツを仕立てたんだ。オーダーメイドだぜ?」
サクラ「フフッ。それなら安心だね」
タイラ「そろそろ三分経つから切るぜ。バイビー」
タイラ、黒板消しをクリーナーの上に置く。
タイラ「いつの時代のバブリーな業界人間なんだって話だな」
サクラ「本当だね。でも、最近、また流行してるみたいだよ」
タイラ「時代は繰り返すものだな。どんな時代だったかは知らないけどさ。でも、逆さ言葉は復活しないと思うぜ?」
サクラ「そうかな? 死語の世界から、よみがえってくるかもよ」
タイラ「俺のターン。死者蘇生で墓地のモンスターカードをフィールドに戻し、守備表示にしてターンエンド。おや?」
タイラ、バイブが鳴っている端末を出す。
タイラ「スマン、また電話だ。出て良いか?」
サクラ「バッテリーが切れるまで、ごゆっくりどうぞ。さて。日誌を書いてしまおう」




