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立春まで  作者: 若松ユウ
3/12

#002「ピッチとスマホ」

@教室

タイラ「そういうことで。うん。はいはい。じゃあな」

タイラ、端末をポケットにしまう。

タイラ「悪いな、話の途中に」

サクラ「気にしないで。ケータイ、新しくしたんだね」

タイラ「そうなんだ。良いだろう? 一度の充電で、十六時間以上ももつんだぜ」

サクラ「良いね。フルチャージしても、すぐ無くなるから、僕も買い換えようかな」

タイラ「おう、そうしろよ。とっくの昔に、パカパカ開け閉めしてカコカコ打ち込む時代は終わってるんだ。今は、スマートなフォンの時代だ」

サクラ「賢い電話か。モチのロンみたいな言い方だね」

タイラ「やめてくれよ。俺は、そんな昭和な人間ではないんだからさ」

タイラ、黒板消しを二つ持ち、一つをサクラに渡す。

タイラ「しもしも?」

サクラ「しもしも。今、何してる?」

タイラ「ワンレン、ボディコンのレイキーなチャンネーと、ザギンでシースーしてるぜ」

サクラ「ナウいね。ウーパールーパーには、ちゃんと餌あげたの?」

タイラ「モチのロンよ。ナタデココの缶詰は届いたか?」

サクラ「届いてるよ。鉢巻きに短パンでローラースケートに乗った、某アイドルのテレフォンカードのオマケ付きでね」

タイラ「それは良かった。エアロビクスは続けてるのか?」

サクラ「元を取るつもりで続けてるよ。フィットネスクラブの入会には、大枚はたいたからね」

タイラ「健康を意識しすぎて倒れないようにな。それじゃあ、明日、てっぺんにギロッポンのディスコで」

サクラ「また明日。今度は、黒服に止められないようにね」

タイラ「大丈夫だって。あのあとすぐに、某ブランド直営店でスーツを仕立てたんだ。オーダーメイドだぜ?」

サクラ「フフッ。それなら安心だね」

タイラ「そろそろ三分経つから切るぜ。バイビー」

タイラ、黒板消しをクリーナーの上に置く。

タイラ「いつの時代のバブリーな業界人間なんだって話だな」

サクラ「本当だね。でも、最近、また流行してるみたいだよ」

タイラ「時代は繰り返すものだな。どんな時代だったかは知らないけどさ。でも、逆さ言葉は復活しないと思うぜ?」

サクラ「そうかな? 死語の世界から、よみがえってくるかもよ」

タイラ「俺のターン。死者蘇生で墓地のモンスターカードをフィールドに戻し、守備表示にしてターンエンド。おや?」

タイラ、バイブが鳴っている端末を出す。

タイラ「スマン、また電話だ。出て良いか?」

サクラ「バッテリーが切れるまで、ごゆっくりどうぞ。さて。日誌を書いてしまおう」


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