#001「食べ過ぎ注意」
@教室
タイラ、紙袋をしげしげと見る。
タイラ「食間に、二錠、お飲みください。食間と食中は同じか?」
サクラ「違うよ。食間は食後、二時間くらい経ってからという意味で、食中は食事中に服用するという意味だよ」
タイラ「そうなのか。俺は普段、薬なんか貰わないから、そのへん、詳しくなくてさ」
サクラ「僕も、そこまでお世話になっている訳では無いよ。薬も過ぎれば毒になるからね」
タイラ「食中薬が、食中毒になる」
タイラ、紙袋をしまう。
タイラ「食前とか、食後とかは、いつ飲めば良いんだ?」
サクラ「食前は食事の三十分から一時間くらい前で、食後は食事が終わってから三十分くらい経ってからだね」
タイラ「食事のすぐ前や後ではないんだな」
サクラ「そういう場合は、食直前や食直後と書かれてるよ」
タイラ、眼を瞑り、腕を組み、宙を見る。
タイラ「アレ? 何て言ったかな。アフェリエイトとか何とか。ほら、食事の前に飲む酒のこと」
サクラ「成功報酬型広告は、今の話に関係ないよ。アペリティフのこと?」
タイラ「そう、それ」
サクラ「未成年らしくないね。お酒と煙草と夜遊びは、もう辞めたのではなかったの?」
タイラ「辞めたよ。警察の世話になるのはコリゴリだからな。いつまでも札付きの不良扱いしないでくれ」
サクラ「ゴメン。過ぎたことを蒸し返すのは、品の良い行為とは言えないね」
タイラ「そう、かしこまるなよ。橘だって、もう勉強ロボットではないんだからさ」
サクラ「そうだね。私学に受からなくて良かったんだよね、タイラくん?」
タイラ「あぁ。あのまま一流大学や一流企業に入ったとしても、どこかで燃え尽きて無気力になってただろうよ」
サクラ「早い段階で自分を見つめなおして軌道修正できたと思えば、大きな収穫だよね」
タイラ「そうそう。バンバンジーが何とかって言うもんな」
サクラ「人生万事、塞翁が馬」
タイラ「それそれ。俺の言いたいことが、よく分かってるな、橘」
サクラ「二年近く一緒に過ごせば、何となくね。ボキャブラリーは貧困だけど、コミュニケーション能力には長けてると思うよ」
タイラ「一度に知識を詰め込もうとしたって、どだい無理な話さ。なまじっか、姑息な悪知恵を身に付けるだけだからな。いきなり大金が転がり込んできても、扱いに不慣れな貧乏人は、ツマラナイことで使い果たしてしまうだろう?」
サクラ「なるほどね。用法用量を守って正しく使いましょうという話か」




