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第44話:筋力増強と勇者の余裕

俺は大の字で全身火傷をおったまま、仰向けに倒れている。

体が動かない。

全身を焼かれる痛みに耐えながら、必死で意識を繋いでいる。


「殺す勢いで放ったんだが、まだ息があるみたいだな。」

「・・・。」


勇者は俺が倒れている場所まで距離を詰め、後一歩踏み出せば、俺の顔を踏み潰せる距離まで来る。

そして、勇者は俺の顔を見ながら話しかけてきた。


「あの世界で、お前達は気づいていなかっただろうから教えるが、

 レベルアップだけが能力上昇・スキル覚醒に繋がっていたわけではない。」


この状況で何を言ってるんだ。とっとと止めを刺せばいいだろうが・・・。


「筋力トレーニング・魔力操作はもちろんのことだが、瀕死の経験を乗り越えていくことでも能力値は上昇し、スキルを使用すればするほどそのスキルの攻撃力も上がっていたわけだ。」


だから、どうした。


「そして、今現在もお前の能力は上昇している。

 気づいていないのか知らないが、お前は俺が今使っている筋力増強も使えるぞ。」

「・・・・。」

「俺は鑑定持ちだからな。お前の能力は全て把握しているつもりだ。

 そして、お前の能力値は俺との差を埋めようと凄い勢いで上昇をし続けている。

 お前みたいな奴は初めてだ。HP・MPが回復するだけでなく、上限が増えているんだからな。」


勇者は笑いながら、俺の顔を見ている。

筋力増強?上がり続ける能力値だと?何を馬鹿なことを言っている。

俺はスキルを確認する


空 大地   レベル:100  専用武器:魔法剣  職業:超能力者

特殊能力:サイコキネシス 空間制御 透視 テレパシー 浮遊 テレポート

     筋力増強 サイコーメトリー 読心術


レベルが100になってスキルが3つ増えていたみたいだ。勇者が言ってたのはこれの事か。

俺の鑑定能力では自分の能力値が見えないようだが、勇者の鑑定能力は相手の能力・スキルが全裸になるみたいだな。さすが、勇者というわけか。


「そろそろ動けるんじゃないのか。」


勇者はそういうとバックステップをし、俺から距離を取る。

俺は自分の体が少しずつ動くことを認識し、ゆっくりと生まれたての小鹿のように起き上がる。

立ち上がった俺は深呼吸をし、呼吸を整える。


「ハアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」

「ほう~。」


俺は特殊能力の『筋力増強』を使用し、俺の体からも赤い粒子が出る。

今まで勇者の攻撃を受け、重たかった体が軽くなるだけでなく、体の中から力が湧き上がる。

勇者は俺の状態を能力で確認したのだろう。

ニヤっと笑いながら剣を構えていた。


「へえ~筋力増強使うと上昇値も上がるなんてな。どんだけお前はキチガイだ。」

「お前に言われたくないな!」


そういうと俺は、勇者に突進をする。今までの動きとは思えないスピードで勇者の正面まで行き、右手を勇者の胴体に向けて突き出すと同時に、空気の弾をお見舞いする。

勇者はいきなりのスピードで突進してきた俺に対処しきれずに、空気の弾を胴体に受け、数歩後ろに下がる。


「ハハハハ、いきなりここまで速くなるなんてな。能力値だけ見てても分かりにくいな。」

「その余裕も此処までだ。」


落ちているソウルイーターをサイコキネシスで操り、左手で掴む。右手は再召喚した魔法剣を握る。

勇者は腹を左手で摩りながら、右手の剣と視線は俺に向けたままだ。


「今もまだ上昇し続けてるからな・・・。お前を鑑定してる暇はなさそうだな。」


勇者は持っていた大剣の刃に左手を当て、呪文を唱えだす。するとその大剣の刃が黄金色に輝き出す。


「これが勇者専用武器、聖剣アークダースだ。魔王を一撃で葬った剣だ。

 一撃で終わるなよ。」


勇者は、一振り二振りした後、俺に聖剣の刃を向ける。一振り二振りした剣の軌跡に黄金色の粒子が輝き出る。

俺は右手で握っている魔法剣を実体剣から閃光剣に変更する。魔法剣から凄まじい光を放つが勇者は怯むことなく、俺を見ている。俺は今も湧き上がる力を右手に集めていく。


「さあ、終わりにしよう。」








ちょっと時間を与えすぎたか。

勇者は冷や汗をかく。


「だが、これが俺が求めた戦いだ!!」


勇者も聖剣を持つ右手に力を込めていく。

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