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第41話:勇者

俺は魔法剣を召還し、右手で柄を握り、左手にソウルイーターの柄を握り締める。

勇者と名乗った男は、俺を見てニヤニヤしている。


「さ~あ、あの世界で修行した成果を見せてもらおうか?」

「修行? 修行なんてした覚えはないがな。

 ただ、生きるのに必死だっただけだ!」


俺は踏み込み、最大加速で勇者と名乗った男の目の懐に入る。

そして、左手のソウルイーターで突こうとする。


勇者の男は突きを紙一重で避け、俺の左手首に手刀を叩き込み、ソウルイーターを落としてしまう。

俺は左手の痺れを気にせず、右手の魔法剣(実体剣)で勇者の男の半身になっている頭上から斬りつけようと上段斬りを放つ。

勇者の男はそれを、自分が持っていた大剣で弾き返す。


俺はその反動により、後ろ体重となる。

その腹目掛けて勇者の男はやくざキックを放つ。


堅い物で殴られたかのような衝撃を感じながら、俺は後ろに跳ばされ、地面をすっていく。


「くぅ~・・・。」


俺は仰向けに倒れた体を起き上がらせようと地面に手をつき、上半身を持ち上げる。


「まずは小手調べといったところだな。

 今の動きはちょっと落第点だな。」


俺は左手を勇者の男に向け、空気の弾を放つ。

その空気の弾は、今まで放った中でも一番轟音を放ち、勇者の男目掛けて飛んでいく。

勇者の男はサイドステップで、空気の弾を回避する。

み、見えてるのか・・・。


「それがお前の得意なウインドショットだな。あの世界でもよく使ってたよな。」


勇者の男は俺に左手を向けると、俺は何かに衝突したかのように後ろに跳ばされる。

そして、腹にはさきほど蹴られた痛みと違う痛みが襲い、口から血を吐く。


「ぐはぁ~。」

「俺も使えるんだ。なんといっても勇者だからね。殆どの魔法は覚えてるさ。」


俺は倒れたまま、勇者の近くに落ちているソウルイーターをサイコキネシスで操り、勇者の側面から襲わせる。

勇者は、ソウルイーターの突きを紙一重で避けると同時にソウルイーターの柄を左手で握る。


「これがサイコキネシスだね。なかなか優秀な力のようだ。」


勇者は、ソウルイーターをじっくりと見ている。


「懐かしいなぁ~、俺も勇者をやっていた頃、コイツには散々お世話になったからな。」


そして、ソウルイーターを地面に突き刺し、そこに両手をついて俺を見下ろす。


「俺の昔話でも聞いてくれ。・・・その間にじっくりと体を回復しといてくれ。

 この世界は徐々にHP/MPを回復する機能があってな。そのまま聞いててくれるといいさ。」


「お、お前も回復するってことだろう。」

「おいおい、俺はお前からダメージもらってないが。」

「ちぃ。」


「俺はさあ~、お前と一緒でさ。 日本で暮らしてたんだ。 その時の名前が、竜崎伸也。」


勇者は、自分の昔話を話し始める。


「俺は学校の校庭を歩いていたら、上から自殺する為飛び降りてきた女子高生と衝突し、そのまま・・・。

そして、気がついたらさぁ~。

 ここと同じような空間にいて、そこにはこの世の物ではないんじゃないかという美女が俺に喋りかけてきて、「シンヤさん。私はあなたを選ばさせていただきました。あの異世界を救っていただけませんか?」俺は、美女の依頼と小説で呼んでた展開が目の前に来た衝撃に感動し、すぐさまYesと言った。」


俺は自分の力が戻ってきてるのを確認しながら、勇者の話に耳を傾ける。


「俺は異世界に飛ばされ、そこはエルフや獣人、いろんな種族がいてさあ!もう俺感動しまくりよ。女神様の計らいによって、俺は初期装備からその世界の最高ランクを持っていた。」


おいおい、どんなズルしてんだよ、俺なんて学生服だっただろうが。


「女神様はそこで何年も人間を恐怖のどん底に落としている魔王と倒してきて欲しいと言っていた。俺はまずは強くならなければと、近くの建物に入るんだが、そこは冒険者ギルドだった。俺は何もわからずぼぅっと立ち尽くしていると、バカみたいにムキムキに鍛えたアホの冒険者が声をかけてきたんだ。その冒険者の顔を思い出すと、笑えてくらいアホだったんだが、アハハハハ。」


腹を抱えて、笑い出す勇者。


「でなんていってきたと思う?」

「ここはお前のようなチビがきていい場所じゃないか?」


俺がチビといったのが気にしたのか、勇者は俺が倒れている横の地面を手刀で切りさいた。

ウインドカッターという魔法だったと思う。

俺は冷や汗を出しながら、横の割れた地面を見る。


「でさ。その冒険者、身ぐるみ脱いでいけば命は見逃してやるって言ってきたんだぜ。俺さあ、レベル1だったんだけど、そいつの能力より遥かに上回ってたわけ。」

「なんでそんなのがわかるんだ?」

「そりゃあスキルで鑑定もってたから。それで俺カチーンと来て、その冒険者が伸ばしてきた手を一回転にひねってやると、頭上から床に落下し、手の骨が折れてさあ~。そいつの連れていた女二人が心配そうに近づいて泣き叫んでいたな。」


「そりゃあ気の毒に。」

「その後、俺はその片方の女に登録どうしたらいいのか聞いたら、ションベン漏らしながら教えてくれたっけ。人が話しかけただけでしょんべんちびるってちょっとショックだったな。」


お前が彼氏を一撃粉砕したからだろうが・・。


「そしてレベルを上げて行った時、レベル20で人類最強クラスになったみたいでさ。王様とかに大事に扱われるようになって・・・。あ~あ、女神様も知らなかったみたいなんだけど、俺ってさ。成長能力大幅アップっていう隠しチート能力があったみたいで、凄い勢いで強くなっちゃって・・・。

人間や魔物に俺に勝てる奴はいなくなって、王から勇者の称号いただいてさ・・・。魔王討伐に向かったんだよ。世界最強と言われる魔王に。俺さ、ワクワクしてさ。どんなに強いんだろうと。ここ最近、対等に戦える奴に出会ってなかったので、もうワクワクしまくり。


討伐チームも俺が厳選して・・・お前も知ってる奴だ。」


勇者はニヤニヤとしながら、俺のほうを見る。


「ドワーフのオルグに、エルフのシズカ、サキュバスのレアン、アルフィに・・・魔王の娘、アズサ。」

「!?」


「お前と共に戦った者たちだ。

 元いた世界では人間に迫害されて、酷い目にあってたからな・・・。

 俺の世界で人間にしたわけだ。よくアイツラ相手に戦ってきたと褒めてやりたいくらいだ。」





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