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人生が変わる!逆境辞典  作者: 玖雅明
あ行
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▶ 欠伸


 仕事や勉強中に猛烈な眠気を感じて、ふと口を開けて深呼吸をしてしまう。これは世間一般で欠伸と呼ばれる現象だ。日中に欠伸をするのは前日の夜に起きたイビキが原因だと指摘されているが、僕はそう思わない。欠伸をしている時は十中八九、身体が油断しきっている。すなわち身体から発生されている危険信号だ。魔法使いや超能力者にとっては集中力を切らすなど命取りだ。外的から身を守るために、常日頃から危機察知能力を全開にしておく必要がある。にも関わらず欠伸をしてしまうのは集中力を切らしている証拠だ。僕自身、新米魔法使いの頃は何処か気が抜けていて欠伸を連発していた記憶がある。そんな時はかつての上官である零界堂盾侍れいかいどうじゅんじ氏から愛の熱線ビームをお見舞いされた。そして同時に、仕事中に欠伸をするのは半人前の証だと教えてもらった。その時は上司特有の理不尽な怒りだと思ってプンスカしていたが、結婚して子供が出来て、家庭も仕事も軌道に乗り始めてから師匠の言葉は間違っていなかったと気が付いた。ある朝、部下を率いて悪魔討伐に出かけた頃だ。朝方にいくら眠いとは言え、悪魔を目の前にして大欠伸をしている新米魔法使いがいた。その者は高学歴を理由に職場内でもエリート扱いされて、傍から見れば完全に天狗になっていた。だから自分より格上の悪魔を見ても傲慢な態度が取れたのだろう。死ぬか生きるかの生存対決において、集中力を切らすのがどれだけチームの迷惑になるか、その時は過去の自分と重ね合さるかのように思い知らされた。肝心の悪魔討伐は成功したものの、やはり欠伸をしていた部下は、自分の力を存分に発揮できていなかった。


 欠伸が悪いとは言わない。自然現象だから止めようがないのも分かる。だが、緊迫した状態の中で精一杯の仕事をしている者に欠伸の症状は訪れない。獰猛な悪魔を目の前にして余裕をかますのは決してプロフェッショナルとは言えないのだ。学生時代の垢を払拭しない限り、社会人で安定した生活を送るなど不可能である。いつもより一時間早く起きて魔法の勉強をするだけでも、かなり精神力が安定する。努力をしているという明確な事実が自信に繋がって、飛躍のチャンスを生み出す。だから上司に「欠伸をするな!」と怒られても理不尽だとは思わずに、自分はまだ未熟者なんだと自覚するのも大事だ。若い時の僕はそれに気が付かなくて組織全体……いや、魔法界全体に迷惑をかけてしまった。苦しい記憶はいつまでも脳裏に焼き付いて離れられない。その忌まわしい記憶を戦いの最中にも思い出してしまい、最高のパフォーマンスを引き出せない瞬間も多々あった。だから後悔しないためにも、たかが欠伸だとは思わずに制御する術を身に着けよう。



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