第三章「魔法少女 草薙伊莉栖」-2
帰り道、僕は立ち寄った公園で女子高生がはしゃいですべり台を滑り降りる光景を一歩引いたベンチから眺めている。
このシュールな光景は形容しがたい。
傍から見たらどう見えるのだろう・・・。
クロノを怖いと思ったのかさっきまでいた子供たちの姿は見えなくなっている。
経緯は校門出た直後へ遡る―――
「ユウ~。行きたいところがあるんだけど、一緒に行かない?」
初めての学校でストレスでも溜まったのかなと思い、クロノの願いをかなえてあげることにした。
たどり着いた場所は、僕が小さい頃に遊んでいた公園だ。
住宅街の中にあるその公園は、こぢんまりとしているが、ひと通り遊具が揃っている。まばらではあるが、砂場では子供たちが砂遊びをしている。
「あっ!あったぁ~!」
着いたとたんに嬉しさの感情を爆発させ、クロノは一目散に―――
すべり台の下に走って行った。
躊躇なくすべり台の階段を駆け足で上ったかと思うと、「わ~い」と両手を上げながら下りてくる。
地面に着くとまた、すべり台の階段の下へ・・・。
それの繰り返し。
「ユウ~。これ、前から好きだったんだぁ~」
テンションMAXなクロノがすべり台の頂上からまた滑り降りてくる。
「そろそろ、やめないか?女子高生がそういう事をしてはいけません」
普通の女の子が見せてはいけないものもチラチラ見えているし。罰ゲームを受けている気分にもなってくるし。
「えぇ~!なんで?なんで?」
真っ直ぐ聞いてくるクロノにわかりやすく答えるにはどうしたらいいのかな。
「う~ん。クロノ、それはもっと小さい子供が遊ぶものなんだよ。5,6歳くらいが限界じゃないか?」
「じゃあ、問題ないよぉ。クロノは5歳だし」
そういいながら滑り続けている。
カラス年齢かよ・・・。微妙に論破された感があって悔しい。
「と、とりあえず、そろそろ帰るぞ。ストップだ」
すべり台の下に立ち、彼女の「暴走」を止めようとしたところ、
「ユウ~。危ない」
目の前に彼女の膝がしらが迫ってきた。
「うわっ、ぐふぅ・・・」
やめさせようと僕がすべり台の下に立ったものだから、クロノの両足がみぞおちに入り、折り重なるように倒れてしまった。
「ユウ~大丈夫?」
心配そうに気遣う声が上から聞こえる。気を失っているわけではないけど、目の前が真っ暗だ。
「大丈夫・・・ふぅ」
「ひゃあ・・・ユウ、くすぐったいよぉ」
「えっ?」
「みゃあ!」
まさか、スカートの中なのか。
こんなところ誰かに見つかったら―――
「何しているんですか?」
良いタイミングで福田さんの声が聞こえる。
「あのね、すべり台で遊んでたら、ユウが止めに入ってきて・・・ひぃあ」
「その倒れこんでいるのは賀茂君なんですね?」
福田さんの声色が変わった気がした、ちょっと怒ってる?
彼女は、僕の上でぺたんと座りこんでいるクロノを助け起こす。
「た、たすかった・・・ありがとう、福田さん」
彼女にお礼を言おうと顔を合わせると全身をプルプル震わせている。
「か、賀茂君!そういうのは・・・ハ、ハレンチだと思います!」
「いや、ハレンチとかじゃなくて・・・」
「言い訳無用!」
右手を振り上げると僕の頬を平手打ちで一閃。
破裂音と共に痛みが走る。
福田さんはそのまま回れ右をするかのように公園を出て行った。
「なんか、あの人怒ってたよねぇ。なんでだろ?」
クロノは不思議そうに僕に問いかけてくる。
「まぁ、クロノのせいだね」
「なんでぇ?」
回り込んで僕を覗き込む。
「ユウ~。そこ痛いの?」
「まぁ。ちょっとね。心の方が痛いかもね」
「ん?」
クロノは頭の上に?を乗っけている。
それにしても、女の子にぶたれるなんて初めてだなぁ・・・。
痛む左頬をさすりながら、僕は空を見上げる。
「ハレンチって、死語じゃなかったかなぁ・・・」
「シゴってなに?おいしいの?」
「ちがいます!」
「さ、帰るよ。仕事が待ってる」
「はぁ~い」
その後も「なんで?」としつこく聞いてくるクロノを受け流しつつ帰宅した。




