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第十章「対峙」-1

伊莉栖たちと会議を行ってから二週間が経った。

 警戒をよそに普通の時間が流れている。

 入学後初の中間テストが一週間に迫って来ていて、放課後の部活動もテスト明けまでは自粛している。

 なので、いつもならグラウンドから聞こえる音がない。

 うちのクラスはというと意外とみんなまじめで、勉強に備えるためなのかどうなのか、6時間目のチャイムが鳴るとそれぞれが示し合せたかのように教室を離れていく。

 そんな中僕はというと・・・。今起きた・・・。

 ポカっという頭頂部の衝撃と共に顔を上げると勝の顔がそこにあった。

「ゆう・・・。中学の頃ってそんなだったっけ?一発目からかましてんなよ」

「勝・・・。もう放課後?」

「そうだよ。来週テストなのに余裕なのか?授業中も爆睡してたし、眠りが深かったんだろうな、先生たち呆れてたぞ。夜更かしも大概だぞ」

「あぁ、ごめん・・・」

「何かあるのか?ここんところ普段のお前じゃないみたいだし」

「いや、ただの寝不足だよ」

「そっか・・・抱え込んでいるなら相談しろよ。乗ってやるから」

「あぁ、ありがとう」

「じゃあ、俺は帰るからな。お前も早く帰れよ」

「うい・・・」

 勝はそういうと僕を残して帰って行った。

「ホントに誰もいないや・・・」

 クロノもいない。声かけてくれればいいのに。

 じゃあ帰りましょうか。

 鞄を持って教室を出て階段を下りていく。昼も夜もない生活で、体は疲れ切っている。階段は上るより降りる方が足腰にきてしまう、老人かと突っ込みを入れながらやっと下駄箱まで到着。スニーカーを取り出して・・・と、封筒が一つ入っていることに気が付いた。

 なんだろう・・・。

 告白?いやいや、入学して一か月も経たないし親しい友達もいない。何か目立っているわけでもない。

 スルーするわけにもいかないし見ますかね。

「うわっ!」

 封筒を手に取るとビリッと電流が走った。

これは・・・告白ではないね。

 という事は、あの人か・・・。

 恐る恐る封を開ける。

 中には女の子っぽい丸い字で「今夜、福田神社で待っています。恥ずかしいので一人でいらっしゃってください。福田みすず」と書かれている。

福田さん・・・。

なんで、こんな回りくどい。

大人しそうな彼女なら、考えられなくはないけど封筒を取った瞬間の仕掛けと文面がミスマッチすぎる。

 まぁ、行けば分かるか。

 校舎を出ると、得体のしれない違和感が感じられてきた。

 場所は・・・福田神社の方向。差出人の福田さんの家の方だ。差出人といい、福田ささんが巻き込まれている可能性は十分に想像できる。

 何か大きなものが動き出そうとしている・・・?僕の直観がそう訴えかけている。

僕だけで何とかできるのか・・・。空を見上げて考える。

 人数は多い方がいいか・・・。

 目を閉じて、クロノに念を送る。

『あれ?ユウ?どうしたの?』

『あぁ、今家にいるのか?』

『うん。勉強中~。伊莉栖とソワールに勉強教えてもらってる~』

『そっか・・・。まぁいいや。窓開けて見て』

『うん・・・』

 窓を開ける音が聞こえる。

 するとクロノの声色も変わった。

『なにこれ・・・?ビリビリと肌を刺すように痛いよ。ユウ』

『あぁ、そこに伊莉栖もいるだろう?彼女たちも今ので感じているはずだ』

『うん、今隣に立ってるよ。伊莉栖もソワールも・・・』

『そうか、じゃあ三人は僕が合図を送ったら来てね』

『ユウは?ユウはどうするの?』

『さっき下駄箱に手紙が入っていたんだ。一人で福田神社まで来いと。だから、僕一人で行ってみる。それまで待機ね』

『一人って・・・危険だよ?何があるかわからないところに一人でなんて』

『だから、合図を送ったら来れる様に・・・まぁ遮断される可能性もあるから、一時間今から連絡がなかったら来て』

 すると、ポケットにある携帯が震えだした。

 開くと伊莉栖からだ・・・。いつの間に登録したんだ?記憶にないけど。

 とりあえずとってみる。

「もやし!どういう事ですの?あの禍々しい気配は。私も行きますわ!」

 伊莉栖の声が震えている様にうかがえる。彼女も感じたことのないものなんだろう。

「心配ありがとう。でも、狙いは僕だから。迷惑はかけられない。もしかしたら、迷惑はもうかけているかもしれないけど」

「でも、私たちはチームですわ。連携する必要が―――」

「伊莉栖も、やっと認めてくれたんだね。チームとか」

「っ。今はそんなこと―――」

「僕の方はいいから。さっきクロノには言っておいたから。伊莉栖は、真琴さんと連絡を取って。それからでいい。君が動転してどうする」

「で、でも・・・」

「らしくないよ。いつもみたいに侮蔑してくれても構わないのに」

 そういう場合ではないか・・・。彼女の側だったら自分もそうすると思うし。

「わ、わかりましたわ。く、悔しいけどもやしの言う通りにいたします。でも・・・

 電話口で伊莉栖はいきなり無言になった。

「でも?どうしたの?伊莉栖」

「でも、必ずまた私たちはチームで連携して―――」

「わかった。ありがとう。じゃあ後で・・・」

「ちょっ!ひとのはな―――」

 通話終了。話の途中だけど、こっちから切った。

 狙いは僕だ。そして、相手はフォルシーナだ。

 勘違いから始まった貰い事故だけど、ほんとに第三者を巻き込むなんてな。

 いつの間にか僕は三叉路まで来ていた。

 右へ行くと我が家、左へ行くと福田神社だ。

「よし、行きますか!」

 自分の顔をパンパンとはたく。

 そうして僕の足は福田神社へと踏み出した。

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