第九章「・・・ったくうちの使い魔は」-5
僕は真琴さんに報告を済ませ家路に向かっている。
それにしても、「あい分かった!」の一言で済ませるとはどんだけなんだろう・・・。
思いっきり肩すかしを食らった気持ちでフラフラ漂うように飛んでいる。
「そろそろ、家かぁ・・・」
と、高度を落としていくと今度は家の前にリムジンが横付けされているではありませんか。
家には灯りがともっているので、きっとクロノが伊莉栖を連れてきたのだろう。
庭に着陸すると霊装を解き、家に入るとクロノと仁王立ちで腕組みをしている伊莉栖、その後ろにはソワールが立っていた。
「た、ただいま・・・」
「悠長に・・・。ほんと呆れますわ」
まぁ、伊莉栖の発言はもっともなのはわかります。
ただ、なんか怒られるような気がしたのとこの場で良い言葉が浮かばなかっただけなんですけどね。
「ユウ・・・。呼んできたからみんなで話し合おう」
クロノも少々呆れ口調。
「そうですよ。甲斐性なしの優雅様、釣った魚に一切餌をやらない優雅様、さ、リビングへ」
ソワールも変わらずの毒舌っぷりでいらっしゃいます。
甲斐性も釣った魚もいつどこで僕がといったいところだったが、
「はい・・・」
三人にこうも言われるとものすごく悪いことをした気分になってきた。
肩を落としてリビングに入るとテーブルにはティーセットが並んでいる。
ここでお茶でもしながらなのか?
「クロノさんが慌てていらっしゃったものだから、心配して飛んできたのに、もやしは何とも感じてないのですね?」
「そうですよ、お嬢様。この方は難攻不落なのでございます。まぁそれを崩していくのもやりがいがあって・・・」
「ソワール!そういう事を言っているのではありません」
「これはこれは・・・失礼いたしました」
「とにかく!もやし!我々の場所で好き勝手にやられてはわたくしが困りますわ。なんとしてもその「フェルシーナ」をつぶしていかなくてはいけませんわ」
力強くこぶしを振り上げながら演説をする可能に雄弁と発言する伊莉栖。
なんかいつもより気合が入っている?
「優雅様、今お嬢様に見とれていましたね?あまりの変わりように・・・フフ」
えっ?そんな風に見えたのかな?思わず伊莉栖の隣に立っているソワールを見る。
「いや、なんかいつもよりというか、力説しているよねって」
「他人事ではありませんことよ。もやし!あなた自身の事ですよ」
「そっか、そうだよね。最終的な狙いは僕だもんね」
「ほら、お嬢様!この朴念仁は自分の事にはあまり関心ないんですよ。だから困ったものでしょう?」
「そうね・・・。こっちの気も知らないで・・・」
「えっ?なんか言った?」
「何も申し上げてませんわ。バカ者!」
真っ赤にして声を荒げはじめる。夜も遅いので周りの迷惑になるような物音は立ててほしくはないけど・・・・。
「ごめん!だから、もうちょっと静かに話をしよう」
「そ、そうですわね。取り乱しましたわ」
取り乱しって・・・意外と伊莉栖もやさしいんだな。
「ユウ、どうするの?」
「う~ん・・・。真琴さんからは何もアドバイスをもらえていないんだ。正直、僕らで考えて動くしかない。でも、相手がどこでどう動くか分からないから、とりあえず今は小さなことでも変化があった場合は連絡を取り合って動くしかないかな。僕に接触してきたのが二回。そのいずれも気配はなかったから。でも、彼女が姿を見せたのは夕方だったから・・・やっぱり日が落ちてからより警戒するべきなのかな」
「もやし、相手はこちらの戦い方を知っているのですよ。使い魔くずれなのですから昼間も動けないという事はありませんわ」
伊莉栖のいう事にも一理ある。
「なんか人間ぽくっていうのがちょっと嫌だな・・・
「何を今さら。狙われている本人の発言とは思えません」
狙われているのは私でしたね。
ソワールが冷静にそして的確に僕の心をえぐってくる。
「すぐにでも攻撃してくるなら、僕はもうやられている気がするんだよ。だから、今日のとろはこれからどうするかというところに力点を置きたい」
「確かに・・・では明日からは連絡を取り合い毎日定時報告をいれて、いざという時に合流するという事でいかがでしょう」
ソワールはほんとに的確な軍師だな・・・。
うちの使い魔にもそういう提案ができればいいんだけどなぁ。
「そうだね。じゃあ伊莉栖。迷惑かけるけどよろしくね」
不機嫌に顔を背ける伊莉栖に向かって手を差し伸べる。よろしくの挨拶のつもりだけど握ってくれるだろうか・・・
「フン!言われなくても分かっておりますわ」
そういうと僕の差し出した手を握った。なぜかしっとりと汗ばんでいる。
「もしかして・・・ねちょ手?」
「なっ!?最悪ですわ!もやしの癖に・・・私の気も知らないで・・・」
「はぁ・・・優雅様にはいつも驚かされます。ここまで来ても分からないとは」
何かを諦めているかのようにソワールは首を横に振る。
「ごめん・・・なにか・・・」
「お嬢様を愚弄いたしましたわ」
「そんなつもりじゃ・・・」
ほんとにそんなつもりじゃないんだけど、激おこなのでそのままにしておこう。
結局、そんなこんなで夜は更けていく・・・。
何も起こらなかったので胸をなでおろすもののこれからの日々を考えるとものすごく憂鬱な気分になってくる。
少なくとも伊莉栖には迷惑をかけてしまっているのに気が引けた。




