第九章「・・・ったくうちの使い魔は」-4
お楽しみか・・・。お楽しみたくないなぁ。
「出たよぉ。ってあれ?さっきの人は?」
事情を知らないクロノはバスタオル一枚巻いたまま入ってきた。
この使い魔って・・・。
クロノの言動にあきれてため息をつく。
「クロノ、そこに座りなさい」
「あい!」
なぜかちょこんとフローリングに正座する。
しっとりと濡れた髪や肩から上る湯気が艶めかしさを感じさせる。使い魔なのにな。
脳裏に伊莉栖の「汚らわしい!」と罵倒されたことを思い出した。
いかんな。
「あぁ、その前に服着て。話するから」
「あい!」
ピャーと風の様にその場を去り、ワイシャツ一枚羽織ってやってきた。
そしてまた、フローリングに正座した。
ワイシャツはクロノの寝間着なのだが、本来は僕のであって・・・。
落ち着くらしいからそのままにしておいている。決して邪な考えはないですよ。
締め付けられるのが嫌だとのことで留めているのは下の四つのみ。
態勢によっては・・・いやいや。そんな場合じゃない。
これからの動きを一緒に考えなくてはいけないんだから、こっちが脱線してどうする。
クロノは正座しているが反省している様子はない。
「あちゃ~~。クロノやっちゃった?」
クロノ本人に『フォルシーナ』について説明をした。
クロノ自身少し反省しているところもあるのだろうけど、反応は軽い。
「まぁ、本人と会ったというのは収穫だからいいとして・・・。にしても、父さんの事となると根拠なく信用するのな」
「ん?師匠の知り合いはみんないい人だったから!あれ?もしかしてユウ、やきもちやいてたりしてる?」
「なっ!そんなわけあるかい!」
「ホントかなぁ?ユウもクロノの事わかる様に、クロノもユウの事わかっちゃうんだからねぇ」
悟られてしまいました・・・。
まぁ、父さんに対して正直その気持ちはある。
「まっ、まぁ、今後はもっと警戒していこうな」
「うん。でも、あの人そんなに悪そうな人じゃない気がするんだよね」
「そうだな・・・。聞いている印象と違っていたし・・・どちらにしても、狙われているのは僕に関わる人たちだから。その芽は摘んでおこう!」
「わかった!」
ふぅと一息つく。
迷惑だけはかけたくない。僕だけならまだしも何もしていない人たちにまで被害が及ぶのはほんとに御免だ。
「で、どうするの?ユウ」
「そうだね。とりあえず真琴さんにもう一度報告するか。伊莉栖がどうか分からないけど、共同戦線の打診をしようか」
「そうだね。それがいいと思うよ。伊莉栖は絶対協力してくれると思うよ」
「なんでそんなこと言いきれるの?これまでの僕への扱いひどかったじゃない」
「う~ん。ユウ、分からないの?」
「わからないなぁ」
最近僕に対する受け答えはやわらかくなってきている気がするけど、それ以前の彼女を知っているから了承を得られるかすごく不安だ。
確信が持てず、ポリポリ頭を掻きながらそう考えていると、クロノがさげすむような目で僕を見ている。
「ユウ、ほんとに分からないの?」
「わからない!」
「朴念仁!」
「はぁ?」
クロノの思わぬ発言に身を乗り出して彼女を睨んだ。
彼女も彼女で睨み返す。
「分からず屋!」
「もぉ、なんだよ!とりあえず、僕は真琴さんのところへいくからな。お前も伊莉栖のところへお願い!気を付ける様に」
クロノの真意を図らず僕はミラージュブレスに念を込めて霊装着衣を行う。
「ユウこそ気を付けてね!フン!」
何を怒っているのか分からないけど、そういうとカラスに変身しリビングから飛び立っていった。
僕も魔法少女姿になって真琴さんのもとへ飛んでいく。
こんなに間をおかず真琴さんに会うとは思わなかったな・・・。
ただでさえ監察官なのに放任主義で、月一の定例ミーティングもしてくれないのに、こうもお目にかかれるなんてなぁ。
それだけ危険人物なんだろうけど・・・。




