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第八章「狙われてる・・・やっぱり?」ー6

「真琴さん!出ました!ってあれ・・・?」

 伊勢野不動産のドアを思いっきり開けながら入るといるはずの真琴さんが中座していた。

『外出しております。探さないでね♡』と丁寧に伝言板に書いてある。鍵もかけず不用心この上ないな・・・。

 本人が戻ってくるまで待っていようか・・・。机の前にある応接用のソファーにどっかっと腰かけた。

 チチチ・・・伊勢野不動産の中では時を刻む壁掛け時計の秒針だけが聞こえてくる。電話一つ鳴る気配がない。不動産業は本当にやっているのか心配になってくる。

「もう、30分経つのか・・・。真琴さん遅いな・・・」

 時計を見ながらこの部屋の主を待っているがいつになったら戻ってくるのやら・・・。

 チチチ・・・僕の独り言以外は時計の動く音しか聞こえてこない・・・。

 外が急に騒がしくなったかと思うと事務所のドアが開かれた。

 真琴さんの登場だ。彼女は自分の顔が隠れるほど大きなビニール袋を抱えて入ってくる。

「ただ~いまっと。あれ!優雅なんでお前がいるんだ?」

 ひょいっと袋の横から顔を出す。年齢不詳の銀髪ちびっ子が不思議そうに僕へ顔を向ける。

「遅いですよ!どこ行っていたんですか!」

「どこって・・・買い出し・・・かな?」

 なぜ疑問形・・・。

「で、優雅はどうしてここにいるんだ?」

「待ってたんですよ!真琴さんを!」

「そうかぁ~。何もないところで申し訳ないねぇ。」

「悠長に・・・。それより出たんですよ!」

「まぁまぁ・・・落ち着きなさい。お茶飲むかい?もちろん入れるのは優雅だが」

 自分が飲みたいだけじゃないかと突っ込みを入れたくなる。だが、本題を早く話す必要がある。

「そんなことより―――」

「まぁまぁ、聞いてやるから。早くお茶!」

「わかりましたよ・・・」

 ケトルに水を入れお湯を沸かす。

「やっぱりコーヒーがいいなぁ~」

「お茶じゃないんかい!」

「悪いか?」

「いえ・・・」

「ケトルの置いてある棚にインスタントがあるから、それでいいや」

「はいはい・・・」

「『はい』は一回だ!」

「わかりましたよ・・・」

「これだからいまどきの若者は・・・」

 いちいち行動にケチをつける、意地の悪いおばさんみたいだよなぁ、外見はちびっ子なのに。

「ん・・・お前、今私に対して変なこと考えただろ」

 びくっ!

心も読めるのかこの人は・・・。

「お姉さんだからって有り余る若さをぶつけられるのは私は困るぞ。あぁ~砂糖は三杯ね」

 全然違いました・・・。

 可愛いピンク色の熊のマグカップにコーヒーを入れて彼女の机の上に置いた。

「うむ・・・なかなか手際がいいな」

 そういう事ではないのだけれど、そろそろ本題に入りたいんだけどな。

 彼女はアツアツのコーヒーをひとくち含むと・・・むせた。

 その格好を見せるのが恥ずかしかったのだろう、すぐに何事もなかったかのようにすっとカップを机の上に置く。

「で、話というのはなんだい?」

「出たんですよ!」

「何が?」

「この前注意しろって言ってくれた人物が!」

「だれ?」

「だれって・・・フェルシーナ―――」

「あぁ~フェルたんね。ついに姿を現したか!」

 フェルたんで通じるんかい!

「で、どうだった?会った感想は」

「いや、顔は見えなかったんです。魔法を僕にかけたみたいで体中が重くなって・・・」

「ふむ・・・あやつも成長しているのか・・・厄介だな。で、なんか言ってたか?」

「あなたの大切なものはすべて壊してあげるって・・・」

「フェルたん・・・相変わらず執念深いな。まだあいつに固執しているとは。もう20年以上も前なのにな・・・」

「はぁ・・・」

「にしても、お前も迂闊すぎるぞ。あれだけ注意しろと言っておいたはずなのに」

「いやいや、注意しろとしか言われていないですし。どうしろっていうんですか!」

「まったくだ!」

 もぉ~!話が噛み合っていない。ねじれの位置だよ・・・。

 声を荒げそうなところをぐっとこらえて会った時の顛末を最初から真琴さんに説明した。

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