第八章「狙われてる・・・やっぱり?」-3
ひと通り片づているとインターホンが鳴り響いた。
ピンポーン、ピンポーン・・・ピピピンポーン。嫌がらせかと言わんばかり・・・。
「だれだ?こんな時に・・・」
常識外れの鳴らし具合に不機嫌オーラを出しながら玄関のドアを開けると、伊莉栖が腕組みをして立っていた。
「客人をいつまで待たせるつもりでありますの?」
僕以上に不機嫌そうに、でもどこか気恥ずかしそうに。傍らにはソワールも整然と立っている。
「な、何しているの?」
率直に二人に疑問をぶつける。
「お嬢様は優雅様がどうされていらっしゃるか気になるとおっしゃられたので―――」
「ソワール!」
「本当の事でしょう?」
たしなめるようにソワールが伊莉栖を制するように続ける。
「伊勢野様との面会後、お嬢様が心配そうな表情でお戻りになられましたので、僭越ながら伺った次第でございます。その後もお変わりなく?」
「変わるも何もさっき聞いてきたところだしね」
「どこか心当たりは?」
「ん~~。特にないんだよね。聞きそびれちゃったところもあるし。それより、上がっていきます?今、福田さんも来ているし」
「福田さん・・・?どなたですか?」
「あぁ、伊莉栖はクラスが違うから知らないよね。僕と同じクラスの福田みすずさん。今、クロノに勉強を教えているんだ」
「こ、これはお嬢様!ゆゆしき事態でございます。泥棒猫がいるみたいですよ」
「なっ!ソワール!わたくしは彼の事はみじんも思っておりませんわ。失礼にも程があります」
「ならば・・・・」
二人はなぜか僕に背を向け相談を始めた。時折、伊莉栖が僕に目線を向けるもすぐにまたコソコソ話し始める。
話がまとまったらしい。二人は、また僕の方に向き直り伊莉栖が言いにくそうに切り出した。
「わ、わたくしもお邪魔してもよろしくってよ」
「へっ?あぁ、伊莉栖の家と比べ物にならないけど・・・どうぞ」
伊莉栖は狭い狭いと言いながら、玄関を抜け一直線に二階へあがって行った。
さっきの流れとは全く違う動きの速さに呆然と伊莉栖の姿を目で追っていく。なんでそんなに急いでいるんだろう・・・。
「優雅様」
「はっ!ソワール・・・まだいたの?」
「はい。優雅様、お察ししてください。お嬢様は先の戦いであなた様との力の違いをまざまざと見せつけられたのです。また、あなた様は毛嫌いされていらっしゃるにも関わらずいつもと変わらぬ顔でお嬢様を救ってくれた・・・。特別な感情を持たない訳がないでしょう?」
「はぁ・・・」
「優雅様は、朴念仁なのですか?そんなに鈍い人だとは・・・」
「あれ?ソワールに酷いこと言われている気がするけど・・・」
「お嬢様が少し不憫になってきました」
「なんで?」
「教えません。優雅様はもう少し周りをよく見る必要があります」
「だからなんで?」
「本当はわかっていて・・・ってそういうお方ではありませんものね・・・」
ソワールは僕が理解できていないことに対して厳しい責めを行っているが・・・訳わからない。
結局、クロノの勉強はそっちのけになってしまい、伊莉栖と福田さんの初顔合わせと女子トークで花を咲かせる様相になってしまった。
『リビングの方が広いよ』と場所変更を勧めるも僕以外全員が『ここがいい』と居座り続けるので諦めて付き合ってあげた。何が楽しいんだろう・・・。
初対面の伊莉栖と福田さんだが、ぎこちないながらお互い楽しくしている様に見える。しかし、お互い何かをけん制するように距離を取っていた感じもあった。
女の子って分かららないなぁ。
二人のやり取りをぼーっと見ていると『何の気にもしないで・・・相変わらずの朴念仁っぷりですね。優雅様は・・・』とソワールがさらっと僕に毒づいてきた。
「誰が朴念仁だ」と言い返してやろうと思ったが、のど元まで出かかったところでとどまった。なんとなくだけど、言ってはいけない気がしたからだ。
ソワールはそれを見越してなのだろう、「勝った」と言わんばかりの不敵な笑みを僕へ向けている。
むぅ・・・。下唇をかんで悔しがることくらいしか僕にはできなかった。




