第六章「お嬢様は正直になれない」-4
「もやしの癖にわたくしを待たせるなんて、いつの間に偉くなったのかしら?」
3メートルはあるだろうドアが開かれると何人も座れるだろう長いテーブルがあり窓を背にした中央に悠然と草薙伊莉栖が座っている。
もちろん、使い魔のソワールもそばに付き従っている。
「お待ちしておりました、優雅様」
ソワールが席に座るよう促す。
ん、僕の座ろうとする席の隣に見慣れないきれいな女性がいることに気が付いた。
案内された席に座る。
ただ、気になるのが僕の左にすわるきれいな淡い紫のドレスを着た女の子。
よくよく見ると、クロノがドレスアップしているではないか。
「なんだ・・・クロノか・・・」
見知った顔でほっとする。
「なんだ・・・って・・・ユウ!ひどい!クロノも女の子なんだからね。この洋服、ちょっと慣れないけど・・・」
「使い魔の変化にも気が付かないなんて・・・。とんだ主ね」
「そうですわ、草薙さん!とんだ主です!」
おいおいクロノ、そこは同調しなくてもいいでしょう。
「さ、揃いましたし。そろそろ夕食といたしましょう」
ソワールがパンパンと手を叩くと、ぞろぞろとメイドが料理をもって出てきた。
普段は食べられないだろう料理ばかりだ・・・。
目の前に並ぶ銀食器をどれから使っていいものか悩んでいると、
「外側からですわ・・・もやし・・・」
さりげなくアドバイスを伊莉栖がしてくれた。
テーブルマナーなんて無用な生活を送っているので、何ともそこは言い訳ができない。
伊莉栖もその光景を見ながら苦々しい表情を時折見せるが、いつものとげとげしさはない。
一つ一つ指導してくれる口調は普段とは違うやわらかいものだった。
―――なんとか食事を終えることができた。
「ごちそうさま。今日はありがとう。草薙さん」
「おいしかったぁ~。ありがとう!」
「・・・・いえ、昨日の借りをそのままにしたくはないものでしたので・・・し、仕方なくですよ」
「あら?結構ノリノリじゃありませんでした?お嬢様」
「ソ、ソワール!」
やっぱりどっちが主人かわからないなぁ。でも伊莉栖とソワール、なかなかいいコンビだと思う。
何気なく時計を見ると21時に差しかかかろうとしていた。
「こんな時間か・・・。そろそろお暇させていただこうかな」
「そ、そうですか?まだ、時間も早いですし・・・それにこのまま泊まっていかれても・・・か、かまわなくてよ。部屋はどこを使っても構わないし・・・」
「えっ?」
思いもよらなかった発言に聞き返した。
「い、いえ・・・。なんでもありませんわ。それでは送りの車を手配いたしますわ」
「いやいや・・・そこまでしてもらわなくても・・・」
「えぇ~ユウ。泊っていこうよ。むぐっ!」
「こら!クロノ!そういう事を言わない・・・。あと、頬っぺた一杯にデザート食べない・・・」
リスみたいに膨らんだ頬をこちらに向けて抗議するクロノ・・・。ソワールと見比べてあまりにだらしない・・・。
「では、どうやって帰るのですか?」
「う~ん・・・飛んで帰ろうかなと・・・」
「へっ?」
「ちょっと長いものを借りられる?それで帰るよ」
「へ、へんしんして帰ろうなんて、魔法少女を愚弄するにも程がありますわ」
「でも、便利だし・・・」
「そういうのであれば仕方ありません。箒を用意させましょう」
「草薙さん、ありがとう!」
「いえ、当たり前のことをしているだけですわ」
「そうです、気になっている男の子にどう接していいかわからないだけです。お嬢様は」
「ソ、ソワール!」
意味が解らないけど・・・まぁいいか・・・。




