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プロローグ

「闇へと消えろ。ミラージュアロー!」

 放たれた矢が身動きの取れない悪霊に向かって突き刺さり、悪霊は断末魔の叫びと共に霧の様に消えていった。

「ふぅ、今日の仕事はこれで終わりっと・・・陳腐だなぁ。決め台詞のセンスなしだなぁ」

 額に浮かぶ汗をぬぐいながらつぶやく。

 草木も眠る丑三つ時、暦の上では四月だが、まだまだ空気は冷たい。

 流れる風に僕はブルッと体を震わせた。

「明日も寝不足だなぁ 授業中寝ないようにしないと。 真琴さんに今度シフト変えてもらえるようお願いしようかな」

一刻も早く帰るべく、箒に跨る。

 空を飛ぶイメージを頭の中で浮かべ地面をけり上げると箒は思い切り上空へ飛び上がる。 僕の眼前には大都会の灯りが煌々と光っている。

 壮観な光景だ。何度見ても美しい。

 空を飛べる人間にとって、この光景を独り占めすることができることが特権だと思う。

「あの中に何万人もの人がいるんだよね。この仕事してないと見れないよね・・・この光景は・・・」

 感慨深げに灯りを横目に箒を家の方へ向けて進める。

 僕の名前は、賀茂優雅。この春から、市立弥生高校に通っている高校一年生。

 成り行きというか、押しつけられてというか・・・。「魔法少女トゥインクル・ミラージュ」をやっている。いや、やらされている男子高校生。

ちなみに彼女いない歴=年齢・・・。関係ない話だけど。

 僕の父さんも「魔法少女」で二代目、まぁ男子が魔法少女であること自体他に例がないみたいだけど。

 あと、魔法少女は女の子の特権だと思っていらっしゃる方、残念です。男子もやっております。僕だけですがね・・・(涙)

 「少女」という名前が付くこともあり、今着ている衣装は、ピンクを基調とした、西洋人形みたいな恰好をしています。もちろん、スカートです。パンツは・・・形容しにくいのでというか・・・スパッツをはいています。それで勘弁してください。

 スースーするのはいつまで経ってもなれないものだけど。

 一応、着ているこれは霊装と呼ばれていて霊装にならないと魔法を使うことができない。

 魔法少女に選別された13歳の時、魔法少女に成ること自体も抵抗したが、それ以上にこの格好をするのにひどく抵抗したのを覚えている。あどけなさの残る女子の徐々に変わるんですよ!それを傍から見て自分たちも意識して変わっていく・・・。男という性に目覚める時期の入口に立つ中、僕に下された命令は、この制服(霊装)着用義務だったもんで・・・。

 生まれて初めて女の子の下着を着たときの何とも言えない感覚は今でも残っている。

『どうにかなりませんか!!真琴さん!』

『諦めろ!英雄も同じだったんだぞ!』

『関係ないでしょ!』

 父さんを引き合いに出され、渋々装着している。

僕の黒歴史の一つ。  

 でも、魔法少女の男の子という事でイレギュラーな存在なわけで、他の魔法少女と区別がつくよう、帽子をグリーンベレーにするよう頼んだ。あの時はなぜかコンバット系にあこがれていたもんで・・・。一応『スカート必須且つ可愛い系の服装必須』の中ささやか抵抗ですよ。最後は男子が魔法少女という特例というのもあって管轄官の伊勢野真琴さんに許可は得られはしたけど、どこで間違えたんだかオーダーしたものと違うものが届けられた。

ベレー帽の色はコスチュームと一緒でピンク色に黄色い羽が両端に飾ってある可愛い感じの仕上がりになってしまい、結果として他の女子より目立つ可愛い感じなってしまったわけで・・・。

意味はなかったんだよな・・・。

 言っておくが、僕は魔法少女になることを望んでいない。僕にとって「普通に」学校へ通って、「普通に」部活をやって、「普通に」恋をして、それからそれから・・・あぁ~。そんな夢を壊された被害者なのだから。

 平穏に過ごしたいだけなのだけど、魔法少女歴3年の僕に「平穏」の二文字は今のところ当てはまらない。夜中までゲームしたり、友達とカラオケ行ったりしたい。

でも今は叶わぬ夢なわけで・・・。

 ちなみに「魔法少女」という職業は「視えざる者・異なる者」から一般市民を守るため日夜警備を行っている女の子の総称(僕を除く)で管轄地域も世界規模で点在している。

 僕は日本の都心のベッドタウン、250万人が住む弥生市を中心に担当している。ポジション的には実働部隊。下っ端。パシリ。

あと、もう一人担当の魔法少女はいるけどそりが合わず中々顔を合わせることが少ない。あったとしても一方的に罵られる・・・ちょっと苦手な人だ。

「誰か替わってくれないかなぁ・・・」 

 自然と愚痴を口に出してしまう。

 そうしてため息交じりに悶々と飛んでいると我が家が見えてきた。

 我が家に電気はついてない。元魔法少女の父さんは考古学のフィールドワークがあると言って旅に出ている。

母さんで、常に父さんにぴったり寄り添うように行動を共にしているので、もちろん一人息子は置いてきぼりにされる。多分元気にしているだろう、

なにせ「元」魔法少女の父さんだし。母さんと一緒にラブラブしているに違いない。

ったく・・・。寂しくなんてないや・・・。

 僕は、周囲に気を使いながら玄関前へゆっくりと降り立ち霊装を解除、寝間着に戻る。

「ただいま~」

 ガチャリとドアを開け、真っ暗な玄関に向かって一言・・・。

「って誰もいないけど・・・。ふぁあ~~・・・」

眠い目をこすりつつ階段を上がり、「優雅のへや」と書かれたプレートの前まで到着。もちろん僕の部屋ですけどね・・・。

 ノロノロと扉を開けて時計を見る。

もう三時を過ぎている。

「明日も寝不足確定だなぁ。起きられるかなぁ」

 日常生活への不安を感じつつ、僕はベッドに体を投げ出すとそのまま夢の世界へ落ちていった。


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