幻覚のようなもの?
RPGな世界に転生させられた主人公は謎の声に言われた通りにのんびりゆっくり冒険を始める。
どん亀更新ですが、よろしくお願いします。
この地球に生まれて15年。今まで特に何もなくただ無駄な人生を送ってきた毎日だった。そしてその続きは失われたのかもしれない。
「今日は……塾に行って、6時ぐらいか。なら、そのあとにゲームを買いに行くか」
中学三年生の受験生である俺がゲームをしていいワケがないが、模試でA判定も取れていて少しはいいんじゃないかと思っただけだ。
「準備よし。鍵しめた、窓閉めた、ストーブ消した、電気は……大丈夫だろう。いってきます」
俺は自転車に乗り、塾へと走り出した。10分ぐらいで着く場所なので特に急ぐこともなく、フラフラと蛇行運転をしていたんだ。
車通りの多い道まで来て、周囲を確認し、またゆっくり漕ぎ出した。だが、その時タイヤの横に転がっていた石を見つけられなかった。
ガッと言う音がして自転車が横倒れになった。俺も同じく倒れたのだが、方向が悪かった。倒れたあと体制を立て直そうと前を見た。
車が目の前に、迫っていた。体が思うように動かなかった。ただ、頭だけは守ろうと手を前に差し出した気はする。
次の瞬間には体と自転車が普段聞かないような音を出して2mほど飛んだ。意識は朦朧として、目も片目が全く見えなくなっていた。
死ぬよりも、あ、見えなくなったんだ。と思った。走馬灯が巡って、死ぬと理解した。腕どころか全身から血や肉が見えているのだから、
死ぬのは当たり前だと今更ながら感じた。
車から出てきた男がよく見えない……その男に手を伸ばそうとしたところで、俺の意識は消えた。
死ぬと言うことは必然であり、生きているものにとって避けられないことである。その死に怯えるのは生物にとって当たり前であり、
恐れないと言うのは、よほどの馬鹿か自殺志願者くらいだ。俺は後者に当たるのかもしれない。感受性が低いだけだと思っているが、
自分でも度が過ぎるのではないかと思う。
《……………痛い》
俺は地雷を踏んだ少年の写真をみても事実としか受け止められなかった。友人の苦しそうな顔の意味なんてわかるわけがない。
《……痛すぎる》
……さっきから聞こえている声のようなものはきっと幻聴だろう。今の俺は植物人間一歩手前の瀕死なんだろうから。
《現実では死んでいるけどね》
これが幻覚ならそれでもいいじゃないか。ずっと意識を取り戻さないような家族に未練を植え続けるような人間になるよりはマシだな。
《こちらの言葉を全く理解しようとしないね。いいか?君は死んだんだよ》
だったらどうしたと。言いたい事はそれだけだろ?煮るなり焼くなり好きにしなって。俺はもう飽きたんだよ。代わり映えの無い日常は。
ついでに言うなら学校でのめんどくさい奴らの行動が嫌になってきたんだよ。彼女できねーし。
《……彼女に関しては頑張りだと思う。煮るなり焼くなり。なら、君はぼくが作った世界で冒険でもしてくれないか?》
面白いが、人が俺一人だとかってオチはないよな?それでも構わないけど。
《ひねくれているのかい?安心しな、よくあるRPGの世界ってやつだよ。君もやったことあるだろ?》
家族は?
《いるさ》
そうか。なら好きにしてくれ。
《ひねくれているね、君は。そんなひねくれ者には少しサービスしてあげよう》
好きにしろ。
意識がまた消える。
意識が戻ったと思ったら、息ができない。死にそう。てか、幻覚のあと息できないって少しやばい?ナ、ナースコール…!
「ウオギャァ」
何だかよく分からんな。幻覚がまだ、いやもう夢だよ。夢。さっさと起きんかい。