春冷めて
少し騒がしい喫茶店でくるくるとスプーンを回しながら、ぼんやり考える。
目の前にいる君は、黙々と目の前に重ねられている楽譜の羅列を解きほぐしている。
その仕草が小動物と凄く似ていたから、伝えようと思ったけれど、あまりの必死さを前に、ちょっと可哀想になってやめた。
視線は絶え間なく、僕ではなく紙を睨む。
もう少し時間がかかりそうだ、なんて。見切りをつけて窓を眺める。景色ではなく、それに映る僕たちをまじまじと見た。
そこには、けして若過ぎない存在していて、費やした時間が映っている様にも思えた。
不意に『苦労したね』なんて呟けば、『苦労したよね』なんてありきたりな言葉が返ってくる。
事実なのだから、肯定されても嫌な気はしない。
でも、それすら忘れてしまいそうになるのも事実なんだよなァ…
窓から空へと目をやり、眩しい広がるの青さに何だか泣きたくなった。
それに感づいたのか
『君って思ってたよりも泣き虫だよね。』なんて言われてしまった。
『君も相当な泣き上戸だよ』と交わしつつも、この数分後には、小さな言い合いになって、君は怒りだすのだろうな。
分かっているのに喧嘩したりだとかって、物好きだよね。ほんと。
誰に言ってるのかも定かではない言葉をぽつりと零して、苛つく君に微笑む。
怪しげな笑みに、冷たい視線が痛いくらいに刺さってる。
窓の外は、
いつの間にか雪。
春なのにね。どうしてかな。僕たちのためだと思えてならないよ。
轟々と唸る様な雪は、今も尚、積もり続ける。
その最中、君といる空間から見る、青空の雪を、ただ純粋に綺麗だと思った。
読んで下さり、嬉しい限りです!
是非とも感想などありましたら、お聞かせ頂ければ光栄です。
ここまで読んで頂き、本当にありがとうございました!