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桜の下で、やっと逢えた

作者: アル治
掲載日:2026/04/19

初めての短編です。よろしくお願い致します。

桜の下で、やっと逢えた


桜の木の下で、花が咲いたらここで逢おう——

あの日、そう約束した。


それから5年。

私はずっと、この場所で春を待ち続けていた。


何通も手紙を送った。

返ってくるのは、いつも同じような言葉ばかりだった。


ごめん。

もう会えない。

君のためにも……


それでも、私はやめなかった。

この約束だけは、本当だと信じていたから。


そして今年。

やっと、その日が来た。


満開の桜。

舞い落ちる花びらの中、見慣れた背中があった。


少しだけ背が高くなったような気がする。

でも、すぐに分かった。


「……久しぶり」


振り向いた貴方は、あの頃と同じように笑った。

手にしていた鞄を足元に置き、ゆっくりと両手を広げる。


ああ、変わらない。


胸の奥が、熱くなる。

足が勝手に動いた。


走って、走って、

私はそのまま貴方の腕の中へ飛び込んだ。


「やっと……逢えた……」


声が震える。

抑えきれず、涙が溢れた。


ぽたり、ぽたりと落ちる雫。

桜の花びらに混じって、地面を濡らしていく。


温かい。


でも——


「……どうして」


ぽつりと、零れた。


「どうして、来てくれなかったの……」


抱きしめた腕に、力を込める。

離さないように、逃がさないように。


「……え?」


貴方の声が、少しだけ揺れた。


「ねぇ、覚えてる?」


耳元で囁く。


「あの夜」




一瞬、身体が強張るのが分かった。


「……あの人、置いていったよね」


沈黙。


風が吹く。

桜の花びらが、ゆっくりと舞い落ちる。


「私、ずっと待ってたの」


優しく言う。


「貴方が戻ってくるの」


手の中で、冷たい感触が軋む。


「でも——来なかった」


ぎゅっと、強く抱きしめる。


「貴方だけ、生きてた」


その瞬間。


深く、押し込んだ。


息が詰まる音。

震える体。


赤が滲む。

花びらの上に、ゆっくりと広がっていく。


「やっと逢えた」


頬を寄せて、囁く。


「私の時間、全部置いていった貴方に」


貴方は、何かを言おうとして——

言葉にならずに、崩れ落ちた。


抱きとめる。

離さない。


桜が、降り続ける。


「大丈夫」


優しく、髪を撫でる。


「これで、同じになれるね」


5年前の春と、同じように。


桜の下で、

やっと——逢えた。

読んでいただきありがとうございます。

復讐劇、楽しんでもらえたら幸いです。

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