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旅人は出会う

わたぬきの国の白い鳥

作者: かねおり
掲載日:2026/04/02

わたぬきの国どこかで聞いたことがありますね。

僕はずっと行ってみたいと思っていた場所が実は何度も行ったことがある場所だと知ることになるとは思っていなかった。




この世界の地図を広げた僕はこの先に冬の国があること、ふと思い出す友の事とずっと憧れだった場所の存在に気がついた。




友には挨拶しに行こうか悩んだけど、いつも心には友が居るから、憧れの地に歩を進めようとした時、声をかけられた。




「おお!やっと追いついたわい、どうやら行く方向は同じようじゃのう」と老犬と再会したのだ。




「僕何か忘れ物とかしましたか?」と聞くと、老犬は【内緒の街】の出口から僕の辿った旅路を遡って亡くなった奥さんと蜃気楼で話をし、海を渡りながら僕の話で盛り上がり、愛の巣で奥さんとの暮らしを思い出しながらあるメジロからの伝言を託されて僕を探しに来てくれたという。




「伝言は独り身だったけど、この度結婚することになったから是非祝いに来てほしいわたぬきの国で4月2日に式を挙げるから」との事だった。




ああ、あのメジロもついにツガイになる相手を見つけたんだ。




「わたぬきの国って結婚式場もあるんですか?」と老犬に聞くと、




「一年に一日だけそりゃ大人気の結婚式にぴったりな国じゃな」と老犬は言う。




年に一度しかチャンスがないなら大人気な場所なんだろう。老犬も式に呼ばれたんだろうか折角だから一緒に歩を進めた。




「奥さんにはそういえば鳥に騙されたみたいな事を手紙で言われてましたけど、愛の巣で赤い鳥はあまり居なかったですが、どんな鳥だったんですか?」と歩きながら言ってみたら、今度は内緒じゃなく話してくれるようだった。




「妻は勘違いしているだけじゃよ騙されたわけじゃないんじゃ」とだけ言ってくれた。答えになってないや。




しばらく歩くとゲートが現れ、老犬は後でまた会おうと言ってゲートに駆け足で行ってしまった。僕とは別行動の方がいいのかな?と少し寂しい気持ちもあったけど、憧れのわたぬきの国にやっと来れたんだ!




ゲートでは白い鳥が丁寧に対応してくれた。




「これはこれは旅の御人この度は入国料は無料となっています。あなたさまが来るのを待っていたのでこれでゲートを封鎖してわたくしめが今回の案内役を務めさせていただきます。ダイサギの【える】と申します」とゲートに鍵をかけて僕を導いた。




「える君?僕どこかで君に会ったことがあるのかな?」招待されているとは言え顔だけで僕がメジロの招待客だと思うとは思えないからだ。




「そうですね。お会いしていますが、そのお話は後ほどにして御式の準備も整っていますしお荷物などを宿に預けてお友達のお祝いに急ぎませんと」と言われ、それもそうだと思いながら【える】に案内されるがまま宿に入り部屋に荷物を置くと懐かしく感じる匂いがした。




準備を終えた僕は改めてこの国を見た。




太陽も月もなく辺りには提灯やランタンがあるだけなのにポカポカと暖かい風が通り過ぎた。




【える】は宿の外で待っていてくれた。




「懐かしかったですか?」と聞かれドキっとした。心を見透かされたのかな。




「よくわかるね。何か懐かしい匂いがしたんだ」と言うと【える】は嬉しそうにしていた。




「御式の会場は言わずと知れたこの国の観光名所でもある『桜のベンチ』です。今日はゆっくりと並んで歩いて参りましょう」と僕の手を取った。




なんだろうドキドキするけど、ホッともする。それにしても老犬はどこに行ったのだろう?と思いながら【える】に手を引かれながら周りを見渡した。沢山の白い鳥たちが暮らす街なんだろう。




国の名前に綿貫と付くくらいだから温かいのだろうけど、大きな白い鳥や少し小さな白い鳥、それよりも更に小柄な白い鳥色んな白い鳥がいるんだなぁ。と思っていると、




「あなたはまた一人で考えてしまってわたくしに一切聞いてくれないのですね」と【える】が寂し気にしている。なんでだろう。




「わたくしはダイサギですがここにはチュウサギやコサギもおりますが白いサギしか国民にはおりませんよ。生まれたての雛ですらふわふわではあるもののシラサギだけで暮らしています」と教えてくれた。




「君は僕の思っている事がよく分かるんだね。すごいや」と言うと、彼は少し切なそうな顔をした。




それを見て僕は胸がギュっとなる。なんでだろう。話を変えよう。




繋いだ手を離さないまま彼に老犬の話をしてみたら、老犬は式に参加するわけではなく今日は別の用事でここを訪れたらしい。帰りのゲートできっと会えると教えてくれた。




「さあて、到着しましたよ。わたぬきの国の観光名所『桜のベンチ』新郎新婦は各々別室で待機しておりますがどちらにご挨拶に行かれますか?」と言う。




そうか、結婚式の挙式直前だもんなこういう時は迂闊に友とは言え異性が会いに行っては行けなかったりするから聞いてくれたんだとこの時は思っていた。




「いや、僕は挨拶は式の後でいいかな」と答えると、




「それは新婦が残念がりますがわたくしはあなたとこうして手を繋いでこの満開の桜をまた見れて本当に嬉しい限りです」と彼は言う。




「もしかして僕は前にもここに来たことがあるの?」と彼に尋ねようとした時




沢山のひな鳥たちが一本の長い赤い毛糸を咥えて空を舞い始めた。




「新郎新婦の入場です」と言う声と共に各控室から新郎と新婦が飛び出した。




ひな鳥から赤い毛糸の端をお互いに受け取りベンチに着地をした。




「これよりご両鳥のツガイの儀式を始めます」と神父係なのだろうか司会鳥が進行を説明してくれている。




「本日は一年に一度のトゥルーエイプリルお二方の誓いの日としては最高の日となるかはたまた最悪の日になるか」と【える】が言う。




「トゥルーエイプリル?だと何かあるの?」と聞くと、4月2日だけは嘘をついてはいけない日とされていて真実しか言えないと言われているらしい。




「でも真実かどうかなんてわからないんじゃない?」と言うと、意外そうな顔で彼は答えた。




「あなたはあの老犬と一緒に居たから知っているものだと思っていましたよ。ここにもあるんですよ【内緒の街】にあるものが」と言われて自分の手首をふと見てしまった。




「ふふふ、ここには違う形で存在していますよ」と言われちょっと恥ずかしかった。




式は順調に始まり、お互いに赤い毛糸を相手の足に結び付けて、式も誓いの儀式へと進んでいった。




「新郎は新婦コトリを永久に愛しつづける事を誓いますか?」そう問われたメジロは「誓います」とはっきりと言い、周りから拍手が溢れたので僕も拍手をした。




「新婦は新郎メジロを永久に愛しつづける事を誓いますか?」そう問われた白い鳥は少し間があったものの「誓います」と言うと桜の木の周りの提灯が赤く光り白い鳥は赤い鳥に見えた。周りはザワザワとし始めたが、【える】はこうなることを知っていたようだった。




「では新婦は嘘の誓いをしてしまったようなので、新郎それでも新婦とツガイになりますか?」とメジロに再度問われたがメジロは揺らぐ事無く「誓います」と言うと、新婦である白い鳥は鳴きながら




「あたしは沢山の人とその場限りの嘘の愛を生業にしてきた穢れた赤サギサービスの雌あなたはそんなあたしでも信じてくれるの?あたしが他の誰かに愛を囁きそうになったら、どうせ居なくなっちゃうんでしょう?」と言う。




「そんな時が来ないように僕は君を僕の生まれた愛の巣に連れて帰りたい君が最期の瞬間を見届けてくれたら、その後は君はまた自由に愛を求めていいんだ。僕が生きている間だけでいい僕とツガイでいてほしい」とメジロが言うと。




チラッと僕の方を新婦さんが見た気もするけど改めて「誓います」と言った時には拍手が溢れ桜吹雪がメジロと白い鳥を包み僕の服や帽子や【える】の羽にも沢山の桜の花びらが届いた。




メジロと白い鳥のツガイに次々にお祝いのお客さまが挨拶に行き始めた時、【える】が挨拶に行く前に今日しか言えないことだからとこの街の事、新婦と僕の事を教えてくれた。




僕は記憶を売ってしまったせいで、言われたからと言って思い出せないけど、新婦であるコトリさんとは赤サギサービスでラブラブだったのだと知ったけど、今僕は純粋に友の幸せを喜んで居るから過去なんてどうでもいいさと言うと、




「ではお二方のお祝いの挨拶に参りましょう」と手を引いてくれた。




「やぁ!久しぶりだね……僕にも奥さんが出来たよ」とメジロは照れている。




「本当におめでとう!」と言った後メジロ同士じゃなくて良かったの?と小声で聞いてみたら、




「僕は寿命が生まれた時から長くてもせいぜい10年しかないし、奥さんに先立たれたらショックで心臓が止まってしまうのも幸せかもしれないけど、ここで彼女に出会えて彼女の寿命の方が遥かに長い事を知って僕が先立ってしまったら彼女はどう思うだろうかと聞いたら、


ここの街の赤サギサービスの事をこっそり教えてくれたんだ。そしてもし僕が先立ってもまたこの街で新しい愛を見つけるって言われてそれなら安心だなって思ってプロポーズしたんだ」と言う。まぁツガイ同士がそれでいいならいいんだろうなと思いながら、新婦のコトリさんにも挨拶をして、【える】と宿に戻った。




何故だろう思い出せもしないのに、嬉しさからなのか、寂しさからなのか涙が止まらない。宿のベッドの上でそんな僕を大きな羽で包み込んでくれる大きな白い鳥【える】この匂いだったんだね懐かしかったのは。




僕が孤独を感じて愛を求めて誰かに抱きしめてもらいたかった時、抱きしめてくれたのが【える】だったんだろうね。そして僕はその記憶も売ってしまったんだろう。




「ごめん【える】僕君の事、覚えていなかった。きっと大事にしてくれたのに」と泣きつくと、彼は




「今日じゃないとわたくしはあなたに本当だと思ってもらえないからずっと今日出会える事を待っていました。あなたが覚えて居なくてもわたくしとあなたは愛し合っていました。嘘偽りのない愛でした。また会えて良かった」と【える】が言っても宿の中のランタンは赤くは光らない。




「僕は忘れていただけでちゃんと愛されてたんだね」と言うと、彼はただ




「はい」とだけ答え出来るだけ今日中にはこの国を出て新たな旅に出てほしいと言った。




「今日が終わればこの街はまた旅の方々を嘘の愛で喜ばせ暖める場所に戻ってしまうからそうなればわたくしの白い羽も赤く見えてしまうたとえ、わたくしが本当の事しか言わなかったとしても、周りの嘘に街が反応してしまうから」との事だった。愛し合っていた彼を置いて僕は出て行くのだろうか。僕も彼と式を挙げれば連れ出せるのだろうか?




「まったく、本当にあなたはまたわたくしに聞いてくれないんですね。安心してください今はツガイや雛たちがおります。立派なお父さんであり夫で居ます」だから安心して先に進んでほしいと出口ゲートまで運んでくれた。




出口ゲートでは老犬が待っていて、メジロとコトリさんも愛の巣へと向かおうとしていた。




出口ゲートの内側に【える】が入ると老犬に沢山の金貨の入った袋をいくつも渡して、新郎新婦の足の毛糸を確認して、僕に羽をお守りにと渡してくれて、背中を押してくれた。




嘘で心を暖める街に隠れた真実を見つけ出すのは難しい。




どうせ嘘でしょと思われる場所でも真実の愛はあったのかもしれない。




「ところで何でここで沢山金貨受け取ってるの?」と老犬に聞くと、これは罰金と言うよりは納税に近いんだと言っていた。




警察犬時代から時々こうして4月2日には偽りを商売にしているこの国から税金を受け取り、ウシガエルに支払って帰るのを奥さんは勘違いしたんだとのことだった。




なるほど、サメの時にはアカガエルに寄付があって、手伝う僕の収入になっていた。




記憶にはないけど、きっと僕はウシガエルに少なくとも2回会いわたぬきの国の記憶を売った分のお金を貰った。




そんな僕が色んな所でお金を遣うから世の中はちゃんとお金が巡るようになっているんだなと納得した。




僕は嘘がつけないけど、みんなは嘘がつけたら4月2日にはどうぞ気を付けて。


おしまい

メジロの寿命は5年から環境が良ければ10年、シラサギの寿命は20~30年と言われていますがコトリちゃんはいったいいくつなんでしょうね?鳥同士とは言え種族が違うツガイの幸せを旅人と一緒に願ってくださると嬉しいです。


すみません最初手直しが失敗してダブってました(*-ω人)


エイプリルフールネタではなくトゥルーエイプリルに予約投稿させていただきました。


いつも読んでくださる皆様本当にありがとうございます。

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