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【遠藤初陽視点】倉庫閉じ込めシチュ③

「遠藤、こんなところで何やってるんだ、通しなさい」


 体育館へと続く長廊下である。

 俺は腰を落として両手を目一杯広げ、ここから先は何人たりとも通さんぞと、気持ちの上では龍とか、虎とか、羆あたりのイメージ映像を背負った状態で左右に揺れている。


「待って! 待ってください先生! 後生ですから! あと二十分っ! せめて! せめてあと十分!!」

「二十分とか十分とか何言ってるんだ。良いからそこを退けなさい。生徒が体育館倉庫に閉じ込められてるかもしれないんだぞ」


 南城と神田の荷物を片手で軽々と持ってそう凄むのはムキムキの体育教師、寿都すっつ(二十八歳、独身)だ。恐らくこいつも遅かれ早かれこの学校で相手(♂)を見つけるだろう。俺は正直なところ、養護教諭の門別もんべつ(二十九歳、独身)なんかが適任じゃないかとアタリをつけている。どっちも北海道出身、年も近いということで、意外な組み合わせではあるものの割と仲が良いらしい。いつだったか一緒に飲みに行ったなんて話も聞いた。


 まぁ、この『意外な組み合わせ』なんてやつは、界隈では最早当たり前というか、全然意外でも何でもないのだ。ムキムキマッチョ体育教師×細身の優男養護教諭とか、こんなのもう教科書に載るくらいのお手本のような組み合わせである。何の教科書だ。何なら逆でも大丈夫。何が大丈夫なんだ!? と驚いているうちは素人だ。体格差など関係ない。この世界では細身の優男がムキムキマッチョを――なんてザラにある。これも教科書に載ってるやつだ。だから何の教科書だよ。


 いや、いまは未来のカップルについてああだこうだ考察している場合ではない。目の前の――まぁ実際に目の前にいるのはムキムキマッチョ教師なんだけど――推しカプである。


「わかってます! わかった上で言ってます! だからこそ、男、遠藤初陽(はつひ)! この場を動くわけには行かないんです!」

「わかっているならなおさら退けろ! 親御さんから学校に連絡があったんだ! 一刻も早く安否を確認しなくてはならないんだ!」

「俺だってある意味保護者みたいなもんです! ずっとあいつらを影に日向に見守って推して来たんです! あと一歩! あと一歩のところまで来ているはずなんです! いまロマンスの神様が降臨なさっているはずなんです! 後生ですからぁ! 後生ですからぁぁぁっ!」

「何の神様だか知らないが、俺は無宗教なんだ。ええい、退かないなら力づくだ! 体育教師を舐めるな若造がぁぁ!」

「うわぁぁぁ!!」


 哀れ、最近ちょっと筋肉がつき始めた程度の細マッチョでは真のマッチョに勝てるわけもなく、体罰と問題にならない程度の力でひょいと退かされ、コテーン、と転がされてしまった。畜生、そういう強引さは俺じゃなくて未来のパートナーの前で発揮してくれ。


「南城! 神田! 俺はもう駄目だ! あとはお前達の力で頑張れ! 奇跡よ、起これぇぇぇ!」


 俺は長廊下で大の字になり、天井に向かって吠えた。あいつらに届いているだろうか、俺の言葉が、この思いが。聞こえてるなら教えてくれ、あれから進展したか?


 最後に外の小窓から確認した時には、二人ぴったりと並んでいたのだ。あそこまで接近出来たんなら、さすがにもう手くらいは繋いでいるだろうし、キスだってしているかもしれない。いや、しているはずだ。だってあれから二時間だぞ!? してると言ってくれ! こちとら、具体的にナニをとは言わないが、やりたい盛りのDKなんだぞ。してないはずがあろうか!?(いや、ない)


 が、その数分後、ムキムキマッチョ教師が勢いよく倉庫に飛び込んだ後、かなり残念そうに出て来た二人の様子からして、何かはあったけど、何も起こっていないらしい。


 着衣及び頭髪の乱れ、なし。

 進展0。俺にはわかる。


 お前達、もういい加減にしろよ。



★次回予告★

 なんやかんやでサプライズお泊りをすることになった二人!

 もちろん家に家族はいない!

 彼シャツに照れる矢萩に、ボディタッチを仕掛ける夜宵!

 遠藤はまさかの形で二人を暖かく見守ります!


 次回、『なんやかんやでお泊まりすることになった二人』!

 ご期待ください!

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