水龍異変 参~宗教騒ぎ
幻想郷で異変が起きても、幻想郷の有力者達は見て見ぬ振りをする。そうする事で自分が異変を起こした時に邪魔されない。
夏の暑さにまだ苦しむ頃、霊夢は不満そうな顔をしていた。そして小さく呟いていた。
「どうもこの頃賽銭が少ないのよねえ……。まあ元から少なかったけど……。そういえば何か宗教を人々が信仰をしている的な話を聞いたわね。生活がかかっているしちょっと様子を見に行こうかな」
霊夢は札や針を裾に入れ、縁側から空へ飛んで行った。そして、幻想郷を眺めながら言った。
「ここから見るだけじゃ何も問題ないように見えるけど……。あっ!早苗じゃない」
霊夢の目線の先には祀られる風の人間、東風谷早苗がいた。
「若しかしてあんたがまた変な宗教を広めて、神社を潰す気?そうはさせないわ!」
霊夢は大きな声で怒鳴った。早苗も同等の声で話した。
「そっちこそ。商売の邪魔になるから止めてくれない?」
「言い訳は無しよ」
そう霊夢が言い放った瞬間、針を数本投げた。早苗はオプションの発射機で防いだ。そして奇跡「白昼の客星」を使った。三方向から来るビームや鋭い弾が飛んで来た。
霊夢は最初は慎重に動いていたが、隙間を通るのに疲れてしまい、被弾してしまった。唯、時間切れになったので霊夢は素早く夢符「封魔陣」を使った。そして早苗は慣れない弾幕に、多数被弾し墜落した。霊夢はさっきよりは小さな声で言った。
「さあ。あんたの負けよ。さっさと撤収しなさい」
「何で……?私達は本当に違うよ?」
「え?違ったの?」
「そう言ったじゃない」
「じゃあ一体誰が?」
霊夢は人里に降りて調査しようと森の直ぐ上に到着した時、秋晶と出会った。
「おっ、霊夢じゃん。こんな所で何してるの?」
「新たに信仰を集めようとしている輩を探しているの。何か知らない?」
「見つけたらどーすんの?」
「勿論、成敗するのよ!」
「ふーん、それはさせないわ」
「何で?あんたには関係ないでしょ」
「煩い!霊夢には撤退してもらうよ」
秋晶は祝符「ハッピーバースデー」を放った。紙吹雪のような弾と、爆発する大きな弾。霊夢はさっきの様にならない為に、大きく動いて上手く避けた。
そして隙を見て札で被弾させた。秋晶はよろめいたが、勢いを崩さず日「86.400×10³s」を使った。時計の様に動く弾幕。
最初はゆっくりだったが、徐々に速くなっていき、霊夢は避けきれなかった。霊夢は劣勢になったが、負けじと神霊「夢想封印」を放った。飛び回って波動を出しながら、大量の札を投げた。
秋晶は驚いて大きく避けたが途中で自機狙いと気付き、対策しようとしたが間に合わず、当たってしまった。
「うー……負けた……」
「何であんたが此の異変に協力するの?関係ないでしょ?」
「それは…調べていったら分かるわよ……」
霊夢が他にも情報を求めようとした時、目の前に火のレーザーが現れた。霊夢は落ち着いて下がった。上を見上げると三国がいた。
「もう!邪魔くさいなぁ!」
「やっぱり霊夢たんだったのか!じゃあ今直ぐ処理しなくちゃ」
「何で?あんたもグルなの?」
「水龍がそう言っていたから」
「水龍……?あの水龍が?宗教をバラ撒いているの?」
「そうだよ」
「分かったわ。取り敢えずあんたをどかさなきゃ」
霊夢は霊符「夢想封印」を使った。三国は軽々と避けていたが其れは罠で、札の結界に囚われてしまった。
「うそ……」
霊夢は御払い棒で頭を思いっきり叩いた。
「いたーい……」
「もっと水龍の企みについて教えなさい」
「……最近神社を作って信仰を集めようとしているの。私が知っているのはそれだけ」
「まさか神社を作ろうとしていたなんて。中々確りと信仰集めをしているみたいね。其れは今、どれ位広まっているの?」
「うーん……。里の人間で信仰していない人はいないらしい…」
「そんなに……。情報提供有難う」
霊夢は再び高く飛び、辺りを見回した。そうすると一つ赤色が緑の中から見えた。鳥居だと思い進むと、案の定そうだった。霊夢は鳥居の上を通り、誰かいない?と叫んだ。すると拝殿から辰が出てきた。
「誰ですか?っ……!博麗さん……。思ったより早く来ましたね……。やっぱり戦いますか?」
「当たり前でしょ?あんたらの御陰でこっちは迷惑してるの。勿論、今直ぐ止めてくれるなら戦いは望まないわ」
「本当は戦闘したくないですが、之もあの方、そして幻想郷の為です。妥協は許されません」
辰はそう言い放ち、神符「自然崇拝の八尋和邇」を使った。水の流れが一つとなり、霊夢へと向かって飛んできた。霊夢は右に素早く避けた。
然し、辰は既に其処に札を数十枚固めて投げていた。霊夢は気付けず被弾した。
「ちょっと油断しちゃった。でも此処から追い上げていくよ。神技「八方龍殺陣」!」
一直線に進む札に辰は動きを制限された。そして霊夢から放射状に小さな弾が出てきた。辰は慌てて動いたせいで札にぶつかった。急いで体制を立て直し、札で牽制しながら避けた。辰は避け方を理解してその後被弾しなかった。
「ふー……。早く降参して下さい!こうなったら「老神温泉でゆっくりしていってね」を!」
辰は地面に何かを投げた。其れが地面に落ちた瞬間、小さな弾が高く散らばった。霊夢は届かない所まで上がり様子を伺った。
着弾点には水溜まり……、いや、温泉が出来ていた。其処から彼方此方に水蒸気に似せた弾が五万と出てきた。そして、湯気で全体的に視界も悪い。霊夢は細かく避けたが、幾つか被弾してしまった。
「うっ……此の儘じゃ……」
霊夢は何とか避けきり、「鬼畜生調伏に慈悲は無し」を使った。彼方此方に札をばら撒まかれた。避けるのは難しく辰も多くの札に当たった。
「よし、行けるわ。最後に霊撃よ!」
霊夢から球状に波動が広がり、辰は巻き込まれた。そして、拝殿や神社、授与所なども消し飛んだ。霊夢は抉れた地面に横たわる辰の前に降り立った。
「ふっ、之で諦めてよね」
然し、返事は無かった。如何やら気絶している様だ。霊夢は奥の本殿へと歩み始めた。すると、さっき迄は気付いていなかったが本殿から只ならぬ雰囲気を感じた。
霊夢は警戒しながら近付き、中を覗いた。だが、其処には誰も居なかった。
「うーん……。何か居る気がするんだけどな」
そう呟いていると上から滝の様に水が堕ちてきた。霊夢は中に入り、避ける事が出来た。
「一体何?上に誰かいるの?」
霊夢はそう誰かを呼ぶと水が止まり屋根の方から物音が聞こえてきた。そして、声も聞こえてきた。
「私は屋根に居るぞ。こっちにこい」
偉そうにしているので霊夢は苛立ったが、其の通りにした。すると、其処には派手な衣装を纏い、髪を複雑に仕立てている女性が居た。
「よく来たな。私は水龍だ。知っているだろう?」
霊夢は其の名を聞くと驚いた。
「へ、へぇー……。あんたが此の異変を?其れなら異変を止めて欲しいわ。無理なら戦うしかないけど…」
「異変?之はそんな物ではない。だから止める心算はない。それにまず、お前は私に勝てるのか?」
「そんなの勿論、勝つわ!勝つしかない!」
「そうかそうか、其の判断、後悔するんだな!武装「炎と水の剣」!」
水龍は何処からか二本の剣を取り出した。片方は水を纏っており、もう片方は火を纏っていた。
霊夢は何をするのかと警戒していると、水龍は剣を振るい、波動を飛ばしてきた。其れは段々と数が増えていき、又、消えるのにも時間が掛かる。
霊夢は本殿の後ろへと逃げた。水龍は建物を傷付ける訳にはいかないから攻撃の手を止めた。
霊夢は其の間に針を投げた。然し、水龍は軽く避け、霊夢を狙いやすい位置から再び斬撃を飛ばした。
霊夢は御払い棒で打ち返したが、唐突に御払い棒が半分に折れた。霊夢は霊力を消費しオプションの陰陽玉を後方に四つ出した。其処からも札を発射し戦闘力を向上させた。水龍は大きく不規則に動き当てられにくくした。
霊夢は痺れを切らし回霊「夢想封印 侘」を使った。白い大きな弾が広がり、赤や紫の札を大量に投げた。水龍は身軽に動き被弾する事は無かった。
「何で当たらないのよ!」
「矢張りお前は私に勝てない!最早之で最後だな!」
そう水龍は言い放ち水符「心綺楼だった蓬莱山」を使った。霞の様な弾が広がったかと思うと、出し抜きに実体を持った弾となった。霊夢はどの様な弾幕か分からず被弾した。
此の儘では負けてしまうと思われた時、何処からか白い糸が水龍へと向かって伸び始めた。そして、目前に来た時に大きな爆発を起こし、水龍は一気に負傷してしまった。霊夢は誰の仕業かと振り返ると其処には龍毬が宙を浮いていた。
「龍毬?そういえば姿を見ていなかったような。あんたは水龍側じゃないの?龍使いとか聞いたけど」
「うん、だから」
「え?どういう事?」
「まあまあ、先に奴を倒さなきゃ。因みに之は蜘蛛「釈迦の連地の地獄」や」
龍毬はそう言うと再び糸を水龍へと伸ばした。水龍は避けたが、執拗に追いかけてくる糸に避けられず又、爆発に巻き込まれた。龍毬は更に追い込む為に数十本糸を出した。霊夢も併せて夢符「二重結界」を使用した。水龍は通常弾幕で悪足搔きをしたが、敗北した。龍毬は誇らしげな表情を見せた。
霊夢は事件の真相を探る為に龍毬に尋ねた。
「結局、水龍は何がしたかったの?」
「多分信仰を集めたかっただけだと思うよ。彼奴何か厚かましいし、高圧的だし、我儘だし……。だから制御できんくなってこんな事になった。まさか霊夢が来るとはねー。どのみち懲らしめる予定だったけど。一応感謝だけはしてやるよ」
「何で偉そうなのよ。あんたがもっと早く動いていれば良かったのに。私が態々解決しなくたって良かったじゃない」
霊夢は若干顔を赤くした。
「はあ……。あっ、あと関係無いけど秋晶とか三国が矢鱈と阻止してきたけど理由分かる?」
「えっ?何でだろう?若しかして俺が退治されるって思ったんかな?ほら、あ、あの二人共何て言うか、ほら、好意を抱てるっていうか…、そういう感じゃん?」
霊夢は口を手で抑えた。
「そうね……。まあ之で異変解決したって事よね。じゃあ宴会ね、此処の神社でやらさてもらうよ」
龍毬は、片付けが面倒臭いもんね、と呟いて本殿の中へと消えて行った。霊夢も、やっぱりね、と呟き博麗神社へと帰っていった。