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紅妖異変~赤に染まれ

宵闇は真の姿を隠す。其の力を解く者は尊大で輝かしく、醜い。醜さに惹かれ次第に朽ちてゆく者も居る。

 夏の暑さも限界になった頃、霧の湖の近くで笑い声が聞こえてくる。


「ねえねえ龍毬。いっしょに遊ぼー?」


「え~……。まあ暇だからいいけど」


「そんなこと言っていつもひまでしょ」


 そうチルノが龍毬を揶揄(からか)う。


「もう……。そんな事言ってたら遊んであげないよー」


 チルノは少し不機嫌になったが、龍毬が突然、(くさむら)の奥に何か居ると言ったので慌てて覗いた。


「あれってもしかして妖怪……」


 龍毬が指差す先には宵闇(よいやみ)の妖怪ルーミアがいた。


「うん、そーだよ!ルーミアだよ!」


「へえあれがかー。黄色い髪の魔法使いが言っていた気がする」


 龍毬は草を搔き分けルーミアに近付いた。すると、チルノは慌てて引き留めようと肩を掴んだ。


「ちょっと!あんたみたいな雑魚は近づくな!」


 悪口を言われ龍毬は腹を立てたが、実際、事実である為何も言わなかった。


「さいきょーのあたいが退治してやんよー‼」


 チルノは意気込み草陰から飛び出した。


「さあ!ルーミア!弾幕ごっこで勝負だ!倒してみやがれ!」


 ルーミアは突然の大声に吃驚し、よろめいた。(しか)し、()ぐに姿勢を戻しこう言い放った。


「ふん!チルノちゃんに負けるくらい弱くはないもんねーだ!」


「おお!言ったな!絶対に負けないよー!」


「そーなのかー」


 そしてチルノは早速、凍符「パーフェクトフリーズ」を放った。虹色の弾が周囲に散らばり、チルノから発せられる冷気により全てカチンコチンに凍ってしまった。またそれに続き蒼い氷が飛び散った。


 龍毬は返り咲くその氷に花に見惚れたが、危険だと気付き急いで木の裏に隠れた。

 

 チルノは自信満々だったが、ルーミアはいとも簡単に弾幕を避けた。


「単純な弾幕ね。こんなんじゃ(さる)でも避けれるわ」


「ぐぬぬ……」


「今度は私の番なのだ。くらえ!闇符「ディマーケイション」!」


 緑、碧、赤の弾が円形状に広がり、その後高速で暗黒の空間の帯が襲ってきた。チルノはぶつかってしまい、呆気なく負けてしまった。


「へへへ。どうだ!」


「い、今はちょっと手を抜いただけだし!っていうかなんで一面ボスに二面ボスが負けるのー」


「今の私は何だか力が湧いているの!さっさと逃げないと殺されちゃうよー!」


「うぅ……。今度は絶対負けないからなー!」


 チルノは捨て台詞を言い放ち、湖の方へ逃げていった。龍毬は木の陰から出てきて、ルーミアに歩み寄った。


「すごっかったよー!能力って何?」


「えっ?あっ、人間?何の用?」


 ルーミアは何の躊躇(ちゅうちょ)もなく話かけてくる人間に戸惑いを隠せなかった。


「ええと……。能力は闇を操る程度の能力なのだ。君にも能力、あるのー?」


「いやないよー」


 龍毬はジロジロとルーミアを見ていると、頭の髪飾りに気が付いた。


「これリボン?にしては素材がそれっぽくないような…?」


「うーん……。これねえ……。なんだろう?お札?だと思うんだけど」


「え?自分で付けてる訳じゃないの?」


「違うねー。いつから付いているのかも覚えてないし」


「そうなのかー。なんで取らんの?」


「……?取れないんだよ。変なパワーで触れない感じ」


「ホントに?案外取れるんじゃない?」


 龍毬はそう言いルーミアの髪に手を伸ばし髪飾りを解いた。


「おっ!取れるじゃん」


 龍毬はルーミアに話掛けたが返事は無かった。


「おーい、ルーミア。どうした?」


「……」


「聞いてる?」


 暫く沈黙が続いた後、突然闇の邪気が辺りへ広がった。龍毬はその気配だけで吹き飛ばされた。


「いったー……。ちょっと何?」


 龍毬は怒ったが、ルーミアは何も言わず不気味な笑みを浮かべた。龍毬は身の毛が弥立(よだ)ち、危険を感じ後退りした。走って家に帰ろうと後ろを振り返った瞬間、目の前が全く見えなくなった。


「うわ!な、何?ま、前が……」


 目が見えない状態で慌てて走ったせいで、足元の木の根に足を引っ掛け転んでしまった。


「痛たたた…。何?一体……?」


 龍毬は記憶を頼りに家の方向へ向かっていると、前が見えるようになった。後ろを振り返るとルーミアの居る場所は明らかに妖しい邪気を放っていた。如何(どう)やら龍毬を見失ったようだが、見つかればどうなるか分からない。


 家に辿り着いた龍毬は秋晶に助けを求めた。


「ルーミアって妖怪が何か様子がおかしい!」


「え?どうゆこと?」


「変な気配が漂って、近付いたら死にそうなくらい……」


「確かに……。ルーミアはそこまで強い妖怪じゃないわね。何処(どこ)にいるの?案内して」


 龍毬は秋晶の手を引いて湖の近くへ向かった。二人はルーミアの見えるところまで行くと驚いた。周りは赤黒くなっており、それは空まで届いていた。


「何これ……何があったの……?」


「髪に付いていた髪飾りを取っただけだけど……」


「髪飾り……?それ、持ってる?」


「あっ、あるよ」

 

 龍毬はズボンのポケットに手を入れ髪飾りを取り出し、秋晶に渡した。


「うーん……(ただ)の髪飾り……。⁉これお札じゃない⁉」


「え?お札?どういうもの?」


「多分、あれを封印していたんじゃないかな。あの様子のおかしいルーミアを……」


「えー⁉どうしよう!もしかしてヤバい事した?」


「まあそう……いや大丈夫だよ!(ただ)、今はそんな事、話ている場合じゃない。急いで倒さないと……」


 秋晶は空を飛び「三百の牧の若馬」を放った。流れるような藍色(あいいろ)の弾幕。心地良さを感じる儚い風の様である。

 ルーミアも少し緩んだのか動きが鈍くなり、一つの弾に当たってしまった。(しか)し、まったく怯むこともなく弾幕を放った。


 恐らくそれはスペカではないと思われる。今のルーミアには弾幕ごっこのルールは通用しないようだ。秋晶はそう感じ、時間制限も無視しスペルは使い続けたが、まったく倒せる様子もなかったので止めた。


 ルーミアの弾幕はさっきの時とは桁違いな程に密度が高い。美しさの欠片もない弾幕に秋晶は戸惑いつつもグレイズした。


 そして、ふと龍毬がいる事を思い出した。彼は空を飛ぶ事はおろか、避ける事も無理だろう。(しか)し、どの様に守れば良いか迷った。ルーミアの弾幕は物理的な物では防げそうにない。多少精神や身体に影響がある可能性も危惧したが苦肉の策としてバリアを張る事にした。


「よし…これで大丈夫だと思うけど…」


 秋晶はルーミアと再び弾幕を交わした。しかし、どんなに戦っても決着が付きそうになかった。秋晶は助けが必要だと考えて、龍毬を連れて博麗神社に行こうとした。


「龍毬付いてきて!」


 秋晶は龍毬の手を握り走ったが、龍毬はその場に(うずくま)ってしまった。秋晶は慌てて様子を確認した。


「大丈夫?やっぱりさっきのバリアの影響で…。痛い?」


「うう…。痛くはないけど…身体中が熱い感じがして動きにくい…」


「そう…。ご、御免(ごめん)ね…」


 秋晶は龍毬を背負い、博麗神社へ飛んで行った。


 博麗神社に辿り着いた秋晶は縁側(えんがわ)から入った。


「霊夢ー。ちょっと大変。異変かも。助けて!」


 霊夢はダラダラしていたが異変と聞きやる気を出した。


「異変?具体的には?」


「ルーミアが何か超狂暴になってるの。霧の湖付近にいると思う」


「そう…分かったわ。あんたは家にでも帰って」


「いや…私も戦うよ。霊夢でも危ないと思うし……」


 霊夢は怪訝な顔をしたが、わかったとだけ言い、急いで湖に向かった。秋晶は龍毬を家に帰そう先に向かった。


 (しか)し、向かっている途中でルーミアに出会ってしまった。秋晶は素早く避けたが、龍毬を落としてしまい、弾幕の雨の中に取り残された。思わず龍毬は手を伸ばした。

 するとその手から橙色の弾が出た。ルーミアは突然の事に驚き被弾した。龍毬自身も動揺したが、()の隙に秋晶の方へ走って逃げた。


「な、なんで俺弾を撃てたんだ?」


()しかせて、さっきのバリアの影響かな…?」


 秋晶は視線を右に向けた。そこにはルーミアと霊夢が戦っていた。ルーミアの周りはさっきよりの(おぞ)ましい赤に包まれれている。


「大変……。私も行かなきゃ……」


 秋晶は龍毬をどうするか考えた。出来れば一緒に戦って欲しいと思った。


「龍毬どう?戦える?人数は多い方がいいし……」


「えっ……。う、うん。原因は俺みたいだし、頑張ってみる……」


有難(ありがと)う。じゃあ行こう!」


 秋晶は飛んでから思った。龍毬に飛ぶ能力も備わったのか。後ろを振り向くと戸惑いながらも宙に浮く龍毬がいた。不安もあったが、秋晶はルーミアに向き直り愛符「三十路の苦悶」を使った。赤の弾々がハート型を作り、そして崩れていった。


 霊夢もそれに続き大結界「博麗弾幕結界」を使った。四角く区切られたフィールドに紅白の糸のような弾が襲い掛かる。ルーミアは避けきれず当たってしまったが直ぐに立て直し弾を撃った。


「どんなに被弾しても全く倒せない…。もっと強力な弾幕が必要かも…」


 霊夢でも流石に怖気づいた。


 ルーミア討伐に苦戦していると、空から赤の苦無と大弾が飛んできた。ルーミアは多くの苦無に被弾し、妖怪の山方面へ逃げてしまった。すると、弾幕を放っていた者が近付いてきた。それは八雲紫だった。


「霊夢、ルーミアのお札を取ったのかしら?」


「そうね、私じゃないけど。今はそんな事重要じゃないわ」


()()えず追いかけましょう」


 四人は妖怪の山へ向かった。


 そして、妖怪の山へ着いたがルーミアの姿は見当たらなかった。


「地下に行ったのね。天狗などと戦った跡があったわ」

 

 紫はそう言い、間欠泉センターから旧地獄へ入った。


 旧地獄では暴れているルーミアがいた。勇儀などが戦っていた。しかし、今にも負けそうになっていた。


 秋晶は助けに行く為に近付こうとした時、地面から火の柱が上がりルーミアを飲み込んだ。火柱の上では赤色をした少女がいた。


 霊夢も誰か分からなかったので近付いた。


「あんた誰?見た事ないけど?」


「お?あんたが解決屋で有名な霊夢?うちは華久坤三国(かぐつちみくに)。妖怪だよ!」


「はー……」


 お化道(どけ)た態度で接してきた事で少し霊夢は戸惑い、緩んだが、厳しい顔に戻し話した。


「あいつ倒すの手伝ってくれる?あんた強そうだし」


「いーよ!任セロリ」


 何故(なぜ)か三国も手伝う事になった。


「よーし!よく分からないけどあいつをボコボコにするよ!塩素「粗面玄武岩」!」


 巨大な岩がルーミアを襲う。しかし、全て軽々と避けた。

 紫も境符「波と粒の境界」を放った。螺旋状に広がる桃色の弾幕は目が回りそうになる。ルーミアは幾つかの弾に当たったがそれでもまだ倒れない。霊夢は札をなげ、秋晶と龍毬は妖精を処理しPポイントを集めた。

 

 すると、ルーミアも弾幕を放った。それは夜符「ミッドナイトバード」と思われるが、元々のスペカよりも高速、高密度になっている。龍毬と三国は被弾し地面に落ちてしまった。怪我もしているので(しばら)くは戦えそうにない。秋晶は霊夢と紫が戦ってくれている間に地面に降りた。


「大丈夫?怪我してるよね?()()えず岩陰に隠れよう」


「うー……。うちとした事が……。まさか負けるとは……!」


「俺、結局役に立てなかったし……」


「ううん、全然!サポートしてくれたし役に立ってたよー!」


 秋晶は二人を岩陰に連れて行き、またルーミアに対し弾幕を放った。

 (しばら)く悪戦苦闘している内にお互い疲れが見えてきた。


「はぁはぁ……いつになったら倒せるの……」


「でも霊夢!相手も明らかに動きが鈍ってる。今がチャンスよ!」


「まあこんな所でグダグダ言っててもどうにもならないしね」


 霊夢は素早く浮き上がり霊符「夢想封印」を放った。ルーミアを追いかける虹色の弾。体力も削がれていたルーミアは被弾し地面に倒れた。


 霊夢は今の内に札で封印する為に近付いた。(しか)し、その瞬間ルーミアは起き上がり周りに闇を広げた。紫は慌てて結界「生と死の境界」を使ったが、闇に飲み込まれると消えてしまった。霊夢も紫も闇に取り込まれ戦闘不能になってしまった。


 秋晶は急いで闇から逃げて無知「三尺の童」を使ったが、これも全く効果が無かった。


「嘘……。どうしたらいいの……。あっそういえば龍毬と三国は⁉大丈夫かしら……」


 岩陰を確認しに行ったが、既にそこは闇の中だった。


「そんな……。私一人でどうしたらいいの?」


 万事休すかと思われたが上の方からルーミアめがけて一直線のビームが現れた。すると闇は消えていった。秋晶が唖然としていると上から龍毬と三国、そして魔理沙が降りてきた。


「二人とも!もしかして助けを……?」


「そうだよ。適当に解決屋を連れてきてん」


「おいおい適当だなんて。私以外に適任はいないだろう?恋符「マスタースパーク」でボッコボコにしてやったよ」


「違う、適切って意味」


 龍毬はクスクスと笑った。

 秋晶は霊夢を探した。すると地面に倒れている霊夢の姿があった。体を揺すり起こした。


「霊夢大丈夫?早く封印しなきゃ」


「ん?えっ、倒したの?一人で?」


「いや違うんだけど……。話は後!また立ち上がる前に」


「……そうね」


 霊夢はルーミアの前に立ち、札を髪に括り付けた。その瞬間、さっきまでの邪気は無くなり、元のルーミアに戻った。


「よし、これで大丈夫ね」


 皆安堵したが、霊夢は辺りを見回した。ルーミアの様子の異変について紫から聞こうと思ったからだ。だが紫は既に居なくなっていた。


「まったく……肝心な時に」


そして、霊夢は暗い顔した。異変の後は宴会をするからだ。宴会の片付けは全て霊夢が行う。


 その夜、博麗神社で幻想郷の住民が騒がしく宴会をしている。幻想郷中で赤い霧がかかっていたようだ。紅魔館が主犯だと疑われていたらしい。


 少し離れた所で秋晶がいた。それに気が付いた龍毬が近付いた。


「秋晶、何か元気無くない?ほらほら飲まなきゃ!」


「ちょっと、中学生はお酒飲んだらだめでしょ。体壊すよ!」


「まあね、まあ大丈夫でしょー。それにしても何かこの異変で引っ掛かってる部分があるんじゃない?」


「う、うん。ルーミアの札が何で簡単に外せたのか分からないの」


「え?普通に外せるもんじゃないの?」


「ううん。あのルーミアを見たら分かると思うけど、強力な封印が施されているから(ただ)の人間の龍毬には 外せないの。恐らく、既に誰かが緩めていたと思うんだけど」


「ふうん……。それは誰なん?」


「さあね……。でもきっと私達よりももっと強力な奴がやったと思うの。それこそ神とか……」


「でも何で?」


「そう、そうなの。一体何の為にやったのか。確かにルーミアは強かったけど封印が出来ないかと言われると違うし、今後変な事が起こらないといいけど」


「確かに……。でもこんな辛気臭(しんきくさ)い話は止めて飲もうぜー」


「ははは……そうね」

 

 折角(せっかく)の宴会であったが、空に薄暗い雲が掛始めた。

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