幻想入り
幻想郷。幻想の生き物とは幻想郷に住む生き物の事。もし、生き物と妖の境界が幻想になれば。其れを何と呼べば良いのだろうか。
木漏れ日の中に緑の髪をした少女が眠っている。周りからは同化していて余程の者でないと気が付く事は無いなどろう。然し、幻想郷に常識など通用しない。実際、二人の妖精が気付く。
「チルノちゃん?どこ行っちゃったの?」
「大ちゃんこっちこっち。早く捕まえてみー!」
「ここに居たのね。待て待てー」
そうして大妖精が動きだしたとき足に何かが当たった。
「ちょっとチルノちゃん。ここに何かあるよ。ちょっと見てみようよ…。ってうわぁぁぁぁ!」
「どっどうしたの?」
「これ人ッ!人だよ!」
「わあ!本当だ。里の人間?」
取り敢えず二人は里まで運ぶことにした。
里に着いたので、其の辺に居た人に尋ねてみたが、知らないらしい。
ごめんくださーいと大妖精が大きな声で稗田家の扉を叩いた。すると中からどうぞど聞こえてきたので二人は扉を開け入った。
「誰かと思ったら貴方達だったのね。何の用かしら。」
座布団の上に座り、筆で何かを書いていたのは稗田阿求だ。
「さっき近くの森で倒れている人を見かけたの。それで里に連れてきたんだけど、里にそんな者はいないし行方不明者もいないって言われたからここに来たんです」
阿求はその少女を見た時、違和感を覚えた。何故なら背中そして頭にそれぞれ4枚の羽が生えており、服は派手なドレスの様である。彼女は人間ではないと思ったが、外では意外と当たり前なのかもしれないと思いこう言った。
「成程、確かにそれは奇妙ね。でも唯の外の世界の人間じゃない?それなら博麗神社に連れていったら良いと思うわ。外に返してもらえると思うわ」
「分かりました。ありがとうございます」
二人は助言通りに神社に向かった。その途中で突然少女が目を覚ました。
「うわあ!」
驚いた二人は思わず少女を落としてしまった。
「いったーーーい…」
「大丈夫⁉」
「うん?ここは何処?」
「え~っと…。とにかく博麗神社に先に行こうよ」
少女は混乱している様だが二人は特に気にせず神社に向かった。
「おーい霊夢いる?」
神社に辿り着きチルノは大きな声で呼んだ。すると神社からドタドタと歩く音が聞こえてきた。
「なに?って妖精?いったい何の用?」
「外の世界の人間を見つけたの」
「そうなの?もしかしてその緑の少女?」
「うんそうだよ」
「分かったわ有難う。もう帰ってもいいわよ」
「え~~~…」
「早く帰りなさい!」
博麗神社は人々から妖怪神社と名付けられる程に人外が集まる。悪評が広まらないように帰ってほしかったのだ。霊夢の機嫌が更に悪くならないように二人はそそくさと帰った。
霊夢は溜息を吐き、ぶっきらぼうに入ってきてと少女に言った。少女は少し怯えながらと小さく、はいと言い、靴を脱ぎ神社に上がった。霊夢は座布団を指差し座ってと言い、少女もそれに従い座った。
「でっ、一体何の用なの?外の世界…あっ、えーっと…、街から来たのかしら?」
「うーん…。よく覚えてないですね。でも確かに何か街に居た記憶があるような」
「成程、そんな感じなのね。記憶喪失かしら。名前は?私は博麗霊夢よ」
「確か島田秋晶です」
霊夢は悩んだ。見た目は外の世界の人間とは異なり、記憶もあやふや。しかも、少なくとも幻想郷にも元々住んでいた様には見えない。一体何処から来たのだろう。
他にも色々話したが結局手掛かりは見つからなかった。
「まあ今日はもう遅いからここに泊まっていきなさい。外には出ない方がいいわよ。危険な妖怪がうじゃうじゃいるわ」
そう軽く霊夢は驚かそうとしたが秋晶は特に恐れる事もなくふうんと返事を返した。その様子を霊夢は疑問に思ったが、直ぐにご飯の準備が出来ていない事に気が付き、急いで台所へ向かった。暫くして霊夢がご飯を持ってきた。秋晶がごめんなさいと言ったが霊夢は何も言わなかった。
次の日、霊夢は秋晶にこう言った。
「街に戻りたい?」
秋晶は思い出しながら、「いいえ」と言った。
「そう。因みに貴方は強いの?」
「それはどういう意味でですか?」
「弾幕とか撃てる?」
「ううん…多分…?」
予想外の返答に霊夢は驚いた。その瞬間から霊夢には秋晶は異質な物に見えた。しかし、これを直接言うのは危険かもしれない。そう思い、平然を装った。
「なら、良い所があるわ。付いてきて」
霊夢は言い、玄関から出って行った。秋晶は慌てて後を追った。
三分位歩いていると、突然霊夢が立ち止まった。秋晶は着いたのかと思い、尋ねようとする前に霊夢が言った。
「ここよ。空き家なの。前は人が住んでいたんだけど最近里の方に引っ越したの。妖怪が多い場所だからね。誰も住みたがっていないしいいわよ」
その家は二階建てで正に日本の家屋という感じだった。そして、かなり大きく豪華だった。秋晶は一人で暮らすには少し大きいなと思ったが、それ以外に別段断る理由はなかったので有難う御座います、此処で暮らします、と言った。
そして、そろそろ人々のお腹も鳴りそうな時間。また奇妙な事が起こった。
「ちょっとチルノちゃん、また人が倒れているよ!」
大妖精が指さす先には籠球の練習着らしき服を着た少年が倒れていた。
二人は昨日の同じく人里に連れて行ったが、里の人間ではなかった。だから、博麗神社にも連れて行った。
「もう…。なんでそんなに沢山見つけるの。まあいいわ、ありがとうね」
二人は昨日怒られそうになったので直ぐに帰る事にした。霊夢は二人が帰った事を確認したらその少年を起こそうとした。少し揺さぶるとかすかに瞼が動いた。目を開けると不思議そうに霊夢の顔を見つめた。霊夢はその行動に微かに笑いそうになったが堪えた。
「大丈夫?」
「あっ、いえ、はい…」
「あんたも街から来たの?」
「ん…?は、はい…」
「弾幕と撃てる?」
「弾幕?って?」
ということは彼奴と違って外の世界の人間か、と思った霊夢は外に送り返す事にした。
「じゃあこっちに来て。返してあげるから」
「その前にここはどこ?」
いきなり砕けた口調になったので霊夢はびっくりした。が、質問にしっかりと返答した。
「ここは…、幻想郷っていうんだけど。まぁちょっと危険な所だから帰った方が良いわよ」
「どこが危険なの?」
そこまで知りたいかと、霊夢は半分呆れたが素直に答えた。
「妖怪がうじゃうじゃいるのよ」
その一言で少年は驚いた。しかし、その後興味を持った。霊夢はそれを不気味だと感じた。今迄会ってきた数々の外の世界の人間は怯えたり、信じなかったりしたのに彼は違うからだ。
「まっ、兎に角帰ろう」
だが少年は首を振った。そしてこう言った。
「ちょっと妖怪の事とか気になる!」
霊夢は面倒くさいと思ったがその時名案が浮かんだ。秋晶の家に連れて行けばいいじゃないと。
「それならいい場所あるわよ。あっ、そういえばなんて名前?私は博麗霊夢」
「祟州龍毬」
「龍毬ね。付いてきて」
霊夢は昨日と同じく玄関から出て行った。
そして三分程歩き、辿り着いた。
「此処よ。中に既に人(?)がいるわ」
龍毬は誰が居るのか少し不安に感じたが霊夢も悪そうな人ではないし、大丈夫だろうと考えた。
「じゃ、私は予定あるから」
本当は予定など無いが、そう言い霊夢が空を飛んで帰った。龍毬にはこの行動は何となく分かっていたような気がした。然し、きっと気のせいと思った。それより家に入ってみよう。
それにしても何故霊夢は此処に連れてきたのだろうかと考えた。此処に暮らせという事かもしれないと思うと、霊夢は親切な人だなと思った。
そうしている内にハッとした。特に急ぐ必要があるわけではないけど、慌てて扉を叩きごめんくださーいと大きな声で呼んだ。
少ししたら、はーいと聞こえてき扉がガラガラと開けられた。その瞬間、二人の時が止まったように感じられた。
「えっと…。一体何の用?ああ、じゃなくて貴方って…?」
「う、うん。俺…」
「誰だっけ?」
龍毬はリアルにずっこけそうになった。
「ちょ、何で覚えてないの!俺だよ、祟州龍毬だよ。でっ、お前が島田秋晶だよね」
そう言った時龍毬は違和感を感じた。何故なら目の前の人は見た事が無かったからだ。しかし、龍毬は余り深くは追わなかった。そもそも秋晶とは?
「何か霊夢にここに連れてこられたんやけど」
「そうなんだ…。一緒に暮らせって事かな?」
「ああそういう事かー。じゃあこれから宜しくね!」
「うっうん!」
秋晶は妙に嬉しそうにそう言った。
籠球=バスケットボール