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誘拐異変 参 ~可愛い可愛いねぇ

 カラフルな弾幕が部屋に飛び交う。


 三国は「火山は午睡の夢を見る」を使った。


 レーザーの様に伸びていく火の粉が敵の直前で散った。それに合わせて辰は札を大量に投げたが、相手は軽々と避けて一つも当たらなかった。


 そして、敵は四方に弾幕を散らした。高密度な弾幕なので細かく避けたいが、自機狙いも飛んでくるので避けにくい。辰は一つの弾に被弾した。三国はギリギリで避けられたが、その間は攻撃出来なかった。


 辰は反撃する様に札を格子状に配置し、敵を閉じ込めてから水の弾を飛ばしたが、矢張(やは)り一つも当たらなかった。

 逆に、辰と同じような水の弾をより高速に発射し始めた。


「きゃ!」


 辰は反射的にお祓い棒で弾き飛ばした。(しか)し、棒は真っ二つに割れてしまった。気を取られている内に、腕に弾が当たった。


 辰は痛そうに腕を抑えていた。其処(そこ)を狙って敵は更に攻撃してきた。


 辰は必死で避けたが、集中攻撃により多数被弾した。


「辰ーッ!」


「わ、私の事はどうでも良いから……、目の前の敵に集中して……!」


 辰はそう言うと地面に座り込んだ。意識を失ったのかもしれない。


「クソッ!仇を!」


 三国は無地「ホワイトハッピー」を使った。三国の左右から白色の弾が出た。軌道は最初は真っ直ぐだったが段々と曲がって、敵の方へと向かっていった。


 だが、敵は軽々と避けたので糠に釘だった。

 逆に、高密度な弾幕を放たれて返り討ちに遭った。結局三国も負けてしまった。



如何(どう)する……?()()えず、隈ちゃんだけでも外に出る?」


「く、隈ちゃんっての止めろ!外に居た頃から変な奴だとは思ってたけど……」


「えっ……あぁ……うん……。如何(どう)する?」


「足手纏いになりそうだしそうするよ」


「足手纏い……、分かった……じゃあ抱いていくね……」


「あっ……うん……」


 秋晶は花隈の体を抱き締めた。手の冷たさとは裏腹に暖かかった。


 ()(まま)、元来た道へと進んで行った。


「そういえば、さっきから龍毬、龍毬言ってるけど誰?」


「知らない?まあ学年が違ったら覚えてないかもね。祟州龍毬は二年の先輩だよ!分かる?」


「うーん……知らん!」


「あぁ……じゃあ、幻想入りしてしまった事によって皆の記憶から消えてしまったのかな……私も……ね」


「そ、そんな事あるの?」


「うん。何なら今隈ちゃんは外の世界から忘れられている可能性が高いよ」


「えぇえ!?」


「まぁ、それが当然の反応かもね……。()の場所から出たら如何(どう)する?街に帰る?あっ、でもまた誘拐されるかもね……。(しばら)くは幻想郷に()る?そうすれば私達で守れるし」


(たし)かに」


 話ながら進んでいたが秋晶は途中で違和感を覚えた。(いく)ら進んでも出口が見つからない。


「ねぇ……。秋晶、大丈夫?帰れる?」


 秋晶は唸った。


「無理かも……。で、でも彼奴(あいつ)を倒せば戻れるかもしれないし、一旦戻ってみるか~……」


 秋晶は来た道を引き返した。(しか)し、今度はさっきの場所に戻れなくなった。


如何(どう)しよう……。戻れない……。之じゃ三国や辰とも合流出来ないよ……」


「えっ!?えっ!?やばくない!?」


「うーん……やばい……」


 秋晶は溜息をついた。


「疲れたしちょっと降ろすね」


 そう言うと地面に花隈の足を優しく置いた。気が抜けたのか花隈は座った。


「隈ちゃんを疲れた?抱っこされるのもしんどいよね」


 秋晶も隣に腰を下ろした。


「むー!抱っこじゃない!唯、連れてってもらってるだけだし!そうだよね!?」


「えー……。私は抱っこだと思ってたけど」


 花隈は顔を赤くし、頬を膨らまして秋晶をポカポカと叩いた。


「ごめ!ごめ!あっ!ガオォーって言って!」


「はっ、は?言わねえよ!」


「ほら!ガオー!!」


「が、がお~……?」


「キャーーー!」


 秋晶は馬鹿でかい声を出して叫んだ。花隈は顔を覆った。


「ちょ、な、何なんだよ、もう!あぁ!イライラする!」


御免(ごめん)御免(ごめん)……。可愛いからつい……」


「もぉーう……!()い加減にしろ!怒るぞ!」


「か、かわうぃい~~~……」


「はぁ……」


 花隈が呆れて吐息を吐いた時、上から弾が降って来た。


「わわわ!」


 二人は避けられたが、次々と弾が飛んでくるので落ち着く暇は無かった。秋晶は花隈が心配で探したが見つからない。焦っていると次は特大サイズの弾が飛んで来た。


 秋晶は宙を浮かび躱した。後ろに下がると下の方に花隈の姿が居た。


「隈ちゃん!」


 秋晶は急降下し、花隈を抱えてから再び飛び上がった。


「わっ!怪我してない?」


 腕から血が垂れていた。


「うん……。ちょっとだけ……。大丈夫だから」


「分かった。でも、離れないでね。それと、多分彼奴(あいつ)を倒さないとどうにもならないから、弾幕使うから気を付けて」


 花隈は秋晶の手の中で頷いた。顔を上げるとさっきの奴が現れた。言葉には出来ないが、同じ人物であえる事は分かった。


 幼児「孩提」を使用した。敵の前に弾が現れ、それが複雑に周囲に広がっていた。すると、一つの弾に当たった。


「す、凄い……」


「へへへ……。私だって弾幕少女なのよ!」


 相手はそれからも何個かの弾に被弾した。


「凄い……けど、秋晶って今(ただ)見てるだけ?」


「うーん……。半分正解で半分間違いかな。弾の並べ方や動かし方はテンプレートだから考えなくてもいいけど、霊力はその度に使わないといけないから見てるだけじゃないね。だから、霊力がない隈ちゃんには使えないよ」


「あー……そうなのか……」


「ん?使ってみたかった?」


「ま、まぁ……?」


「じゃあ、帰ってから特訓する?」


「え?出来るの?」


「道具を使えばある程度は放てるよ」


「へー」


 秋晶は弾幕を止めた。


「何で止めたの?」


「弾幕ごっこにはルールがあるんだけど……。攻撃がくるから後で教えるね」


 敵人は今度は下から鋭く速い弾幕を放った。


 秋晶は花隈を強く抱き締めながら避けた。(しか)し、花隈を抱えながら避けるのは簡単な事ではなく被弾した。


「だ、大丈夫!?秋晶?大分(ダイブ)やばそうな弾だけど……」


「うん。弾幕ごっこじゃ之位(これくらい)平気平気!それよりも隈ちゃんが当たらないか心配だよ!」


「ん……あり……、そう……」


 秋晶は気を緩んだのを感じ、引き締めた。今度は避けきる事が出来た。(しか)し、立て続けに交差弾が放たれた。


 度々(たびたび)弾を放ちながら、秋晶は避けた。


 少しづつダメージを与えた所で秋晶は無知「三尺の童」を使った。後ろからビームが回りながら、敵へと向いていく。


 そいつは一つのビームに当たったのを切っ掛けに、多くのビームや弾に当たった。


 そして、地面に落ちた。


「なんで龍毬や花隈を連れ去ったの?」


 秋晶は聞いたが答えなかった。


「おーい!聞いてる?」


 すると、小さく聞こえてきた。


「能力者の捕獲……」


「え?」


「NN-04-86-EX……、お前らで言う三浦花隈も持ってるだろ?」


 そいつがそう言うと、周りに霧がかかった。何が起こるのかと怯えていると、次第(しだい)に視界が良好になった。目の前には緑色が見えた。


「あれ……?さっきまで地下にいたのに……」


「秋晶……?どうなったの?」


 手の中には花隈がいたので秋晶は安心した。


「うーん……。分かんないけど帰って来れたっぽい?」


「わぁぁぁぁああ!!秋!!!」


 突然後ろから大声が聞こえてきたかと思うと、誰かに押された。


「わっ!みくちゃん!良かったー。帰れたんだー!辰も?」


「うん!其処(そこ)にいるよ!」


 三国が指した先には辰が居た。


「わぁー。良かったー!でも……、彼奴(あいつ)。一体何が目的であんな事を?それに能力者の確保……。隈ちゃんも持っている……何を……?」


「ん?どうした?」


 三国が聞いてきた。


「ん……あぁ、何でも無いよ!それより龍は見つからなかったね……」


「んー……。(たし)かに……」


 すると、花隈が聞いてきた。


「ねぇ。龍毬って()の人?」


 花隈が示す場所には倒れている龍毬が居た。


「きゃー♡龍ちゃん♡!」


 三国が駆け寄り龍毬に(もた)()かった。それにより、龍毬は目を覚ました。


「ど、如何(どう)した?三国……。そんな(はしゃ)いで」


如何(どう)してもこうしても、喧嘩して出ていったきり帰ってこないんだから!心配してたのー♡!!!♡!」


「わ、分かった、だから落ち着け!」


 龍毬は三国を押しのけた。()の時、秋晶と目が合った。


「あっ……」


「りゅ、龍……龍毬……」


御免(ごめん)ね……ムキになって……」


「私こそ、龍毬の事考えずに一方的に捲し立てて……。御免(ごめん)なさい!」


「はい!これで仲直りだね!じゃあ帰ろう!」


 三国が騒いだので二人は笑った。


「うん!隈ちゃんも!行こう!」


 秋晶が花隈の手を掴んで言った。


 花隈の手はほんの少し暖かくなっていた。

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