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悪魔が捧ぐオンライン  作者: ヒイロロ*ヒノキ
四章.???編

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7.人外スクランブル【前編】

誤字脱字はお知らせください。泣いて喜びます。


「おい、なんだこれ!?どうなってる!?」

「分からん、意味不ッ」


 陽太郎は正面から立ち塞がった異形――暗闇が形を成した"何か"へ向かってスキルを発動。

 

「【パイルバンカー】ッ!」


 魔力を宿した鉄拳。文字通り、鋼鉄の装甲をも打ち抜く破壊力。

 だがその漆黒の異形は、後方へ飛ばされるのみ。

 砂煙だけが盛大に舞った。


「マジかッ?タフすぎんだろ!?」


 四足歩行でカサカサと跳ねる、人と獣の合成(キメラ)らしき化け物。

 続けて同じスキルを二連続で叩き込み、ようやく無力化に成功。泡のように消えていく。


「これ…どうなってんだ…?」


 視線を上げれば、遥か前方にある"大穴"。

 そこから、黒で塗り潰されたようなの化け物が、数百と這い出ていた。


 ただ唸り声をあげるだけの存在や、積極的に害を及ぼす存在。

 例を挙げればキリが無い。


「マジ地獄なんですけど…」


 帝国と亜人連邦、両者にも見境なく飛び掛かる"何か"。

 膠着状態が続く中、突如現れた第三勢力。


 築かれた陣営から、狼狽が波となって響く。

 遥か遠くからでもその惨状が確認できた。


「てかアタシ狙われてない?なんでっ?」

「分からんッ、一体何したんだよ明野ッ」

「知らんし!!」


――おまけに少しでも近づけば、多くの個体は沙多に関心を示す。

 陽太郎が眼前にもかかわらず無視。

 背後の彼女が狙われる始末だ。


「…ちょいと囮とかやってくれね?」

「え無理ッ、多分一回でも当たったらアタシ普通に死ぬて!」

「俺だって装備がパーカーだけは厳しいから!」


 沙多の職種は【占星術士】。

 【格闘家】のように、攻撃を受け止められる補佐スキル(タフネス)は無い。

 とはいえ彼も上裸。防御力が心許ないと抗議する。


「というかコイツら、さっきから…」

「そのパーカーあげるから頑張ってよッ、いい匂いなんでしょ!?」

「分かった止めろッ、俺が壁になるから変質者みたいに言うのやめてくれッ!」


 無論、チームワークすらガタガタだ。

 敵が迫っているのに、小言の応酬は止まらなかった。

  

***


「ヌゥ?――クハハハハッ」


 暗闇が消え去り、転移を終えたベアルは周囲を確認。


 異常に光の少ない空間だった。

 彼にとっては覚えのある景色に高笑う。


「ここは吾の存在した世界かッ!!」


 蓋されたように暗く、空は見えない。

 周囲は黒い土や岩肌のみ。

 明るい植物も自生せず、大量かつ巨大な鉱石が仄かに光を放つのみ。人の気すら無い。

 

――そこはまさに、"大穴"と呼ばれる地底。


「やはり主君の気配は無い。未だこの世には舞い戻っておらぬか」


 不在を悟りながら地を踏みしめる。

 と同時に、岩陰から()()()()が這い出た。


――されどベアルは気にも留めず、日常茶飯事であるように無視。

 影で造られたような異形も、そのまま徘徊する。


 人型に近しいもの、獣のようなもの、姿形は種々雑多。

 ひたすら壁を這い回ったり、二足歩行を試そうと転んだり、微動だにせず頭部だけ動かしたり。

 一様に不気味。意思もあるのか定かですらない。


 だが内の一体が、確かな攻撃意思を向ける。

 六本の足を使って駆け、闇から模した刃を突き立てた。


(フム…ル・シファル様の存在も無しに、"人外"が活性化しておる) 


――とはいえ今の彼は魔力を充分に蓄えた状態。

 扉をノックするが如く軽い動作、だがドンッと鈍い衝撃が鳴った。

 

 拳が捉えた敵の中枢。

 『人外』なる種は崩れ落ち、泡沫のように消えていく。

 ベアルはかすり傷すら無しに粉砕。"人外"を俯瞰する余裕すらあった。


(ならば同等の存在とは……)


 その抱いた違和感は、すぐさま結論に達した。


「――妹君」


 口角を吊り上げる。

 納得した理由は、彼しか知り得ない何かだ。


「久方ぶりに肩を慣らすとしようッ!」


 やがて闘志に火がつけば、次々と暗闇の住民を屠り始める。

 食い散らすように踏み潰し、あざ笑うように叩き潰す。


 最初は歯向かう存在も多かった。

 だが五百余りを撃破すれば、恐れをなし遠ざかる人外。


 それでも止まらず狩り続ければ、ベアルが辿り着いたのは大穴の出口。

 無論、逃げ惑う人外はさらにその先――外界へ進出済み。


――言うまでもなく、大量の人外が湧いて出た元凶だった。


***


「ほら来たぞっ正面三体!」


 陽太郎が人型の暗闇を突き飛ばし、背後から沙多が追撃。

 残る二体は後衛へ飛び掛かり――


「【チャリオット】ッ」

 

 凶刃が沙汰を貫く前に、硬化した肉体の突進をぶちかます。

 肉弾戦車さながら、合成獣(キメラ)もどきを飛ばした。

 しかし片割れが牙を突き立てる。


「ッ――近接特化の(ジョブ)舐めんなッ…!」


 それでも筋肉を強張らせ、異形を無理矢理に固定。

格闘家(ファイター)】でなければ、そのまま千切られていた荒技だ。

 

「今だ明野!このまま敵を狙――」


 だが途端に、息を詰まらせる。

 異世界へ訪れてから彼は基本一人(ソロ)での行動。

 つまり、チームプレイは『ルシフェル・オンライン』ぶり。


(しまったッ…"ゲーム"の感覚じゃ明野が動けねえだろ…!)


 時が停滞し、噛まれた肩も血をドクドクと零し続けた。


 ゲームならばいい。

 『誤射(フレンドリーファイア)』の痛みは激甚だが、()()()()

 だがここは異世界。迂闊と奥歯に力が入る。

 

……

――仮に現実で凶悪犯が居たとして、その隣に人質がいれば、銃で迷わず打ち抜く者はどれほどか?


 腕に自信があったとてプレッシャーは計り知れない。

 もし誤って人質に弾が当たってしまえば、文字通りの殺人だ。


 そして、これを委ねられるのは、一人の女子高生。


 見て見ぬフリも許されない。

 敵に食らいつかれたままの状況。放置など、見捨てるも同義。

 問答無用の決断を迫られる。

……


(んな責任ッ、ただの女子に背負わせるわけに――


「――【フレア】」

「□■◇■□◆ッ!?」

「頼もしいと同時に怖いっ!」


 しかし葛藤は吹き飛ばされた。

 一瞬の淀みも無い狙撃。

 目と鼻の先で消し飛び、「パンッ」と間近で打った耳朶。

 

 何なら『俺ごと狙え』と言い終わる前に実行された。


「肩、痛くない?」

「…明野って……前世が魔王だったりする?」

「何言ってんの?」


 腰を抜かす陽太郎を引っ張り起こす沙多。

――とはいえ事態は深刻だ。

 

 戦線から漏れた『はぐれ個体』と戦闘を続け、ようやく倒せるペース。

 体と精神の摩耗が尋常ではない。

 沙多は味方殺し、陽太郎は壁役(タンク)という死のリスクが付き纏う。


「にしても、こいつら…『人外』だろ…?」


 彼に至っては傷も少なくない。

 ゲームでないと、生存本能が呼吸を浅くさせていた。


「何で動いてんだ…?未知数とはいえ、活動停止って本にあったぞ…?」

「陽太郎、前ッ、前!」


 再び襲いかかる人外に、忙しなく思考すらも中断。

 瞬時に流し受けから発勁。カウンターを喰らわせ、間合いを取った回数は数知れず。


「それに何で…()()()()()()?」


 そんな災禍の最中(さなか)、呆然と立ち尽くす陽太郎。

 少し前まで前方には帝国と連邦、二つの陣営があった。

 だが既に異形の軍勢に呑まれている。


 もはや避難を優先すべきだ。

 現世に帰るだの、魔鉱晶だのと言った問題ではない。


「違う、人外(こいつら)自身じゃないっ…。介入した誰かの言葉を、オウムみたくそのまま叫んでるのか…?」


 なのに二人は、未だ戦線から離れていない。

 沙多が誰かの存在を感じ、駆け出したという一因もある。

 陽太郎が見て見ぬフリを出来なかったという一因もある。

 

 だが最大の理由は――


「――どうして人外(こいつら)()()()()()()()?」


 彼が耳にした名前にある。


陽太郎「明野が俺とゼロ距離の人外を撃ったじゃん?」

沙多 「撃ったね」

陽太郎「そん時に耳元で『明野ォォ~~』って叫ばれて怖かった」

沙多 「未練タラタラの元カレみたいで草」

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