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悪魔が捧ぐオンライン  作者: ヒイロロ*ヒノキ
四章.???編

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6.大穴リバウンド【後編】

誤字脱字はお知らせください。泣いて喜びます。


 光を一切通さない、漆黒に染まる空間。

 地図で見ればスポイトで塗りつぶされたように、肉眼で見れば地表にブラックホールが出現したかのように巨大な跡地が口を広げる。


 それこそが、大穴。


(トラップ)も、戦争(あれ)の産物で…俺らの世界だと未処理の地雷踏んだようなもんか」 


 更にその手前。

 陽太郎が視線を飛ばす先――開けた台地には、大穴を挟むように築かれた二つの陣営。


 もはや集落と言って差し支えない規模。

 大きく距離を隔てた、帝国と連邦による戦線だ。


「エグっ、したらめちゃ喧嘩のど真ん中じゃん」

「やっぱあの姉ちゃん居ないと…地図だけじゃダメだな」


 行き掛けではヒテンジにより避けられていた。

 一方で帰りは地理に疎い二人なばかりに、戦線に近いルートを辿ってしまっていたらしい。

 

……

 戦争と聞いて、思い浮かべる情景は何か?

 

 猛る人々の怒号。ヒュンと飛んでいく矢の音に、劈く剣の音。


 彩る業火と、混じる血の匂い。数えきれない屍。

 これすらも雑多で揉み消し、踏み潰していく行進。

  

 まさに地獄絵図と呼ぶに相応しい景色だ。

……


「――けど意外と大人しいってか、ほんとに喧嘩してんの?」

「表立っての抗争は無し…冷戦ってやつなのか?」


 緊張の糸は張り詰めるも、どちらかと言えば砦を構え、大穴への抜け駆けを互いに監視する動きが活発。


 駐屯兵は千を超える。

 しかし実態は、想像よりも静かで穏やか。

 遠巻きに眺める二人には、軽口を交わす余裕すらあった。


「てか願い叶えるだけじゃないんだ大穴って。宝石も喧嘩の原因だったりする?」

「むしろ魔鉱晶(こっち)がメインっぽい、願いを叶えるのも鉱石の力らしいぞ」

「マッ!?」


 渡された破片をぞんざいに指で弾いていた沙多。

 だがしれっと聞いた一言(メイン)。途端に大事に扱い出した。


「大穴ではもっとデカい魔鉱晶が採れて、異質な魔力が籠っているって本にあったな」

「へー、じゃあ()っちゃいこれも集めまくれば願い叶う?もう帰れる!?」

「流石にそんな簡単な話だったら争う意味ないだろ」


 残念と肩を落とす沙多。

 「じゃ今日中は無理か~」と、帰還の目途は"数日以内"に戻る。


――だが魔鉱晶の特性には、ある覚えがあった。

  

(てかこれ、ベルの…)


 透明な、だが少し濁ったような、既視感のある輝き。

 直感のままインベントリから取り出すのは、片手に余る大きさの水晶。

 悪魔の根源である魔力だ。


「明野、それ…魔鉱晶か?随分と質が良さそうだが一体何処で…」

「ねー?やっぱ似てっしょ」


 それはベアルが髪を束ねるのに用いたものと同一。前に礼として渡されたもの。

 確証もない。理論もない。

 だが得意げに水晶を地面に設置。次に目を閉じ、数秒沈黙した。


「…っぱダメ、叶わんわ」

「もしかして今願ってた?」


 とはいえ現実は非常。ぐぬぬと面妖な顔で祈りを捧ぐも無反応。

 うんともすんとも言わなかった。

 

「ちなみに何を願ったんだ?」

「アタシを元の世界返して~!って」

「それ置き去りじゃね?俺」

「あ、そか。メンゴメンゴ――っとと…」 


 謝罪と共に水晶を拾い上げるも、ツルッと手が滑る。

 完全な球体で掴み損ね、そのまま道の傍へ転がった。


「あ〜待って待って」

「おいおいっ、動き回るとさっきみたいな罠が――」 


 そしてとある地点に到達すれば――地面から円の紋様、魔法陣が仄かに浮かんだ。


「言わんこっちゃ!」

「くぇっ?」

 

 咄嗟に腕を引く陽太郎。

 罠に背を向け、自身を挟み込み、爆発を一身に受けた。

 

 幸い、寸前に距離を取ったおかげで無傷。吹っ飛ばされたものの数メートル。

 陽太郎は容易く受け身を取り、同時に飛ばされてくる沙多を受け止める。 


「な、ないすきゃっち…」

「二次被害も馬鹿になんねえな戦争って…」

「……あっヤバ!?ヒビ入ったッ」

 

 だが次第に、彼女の目は点となった。

 流石に負荷があったらしい。とはいえ原型が残るだけで異常だが。

 色も澄んだ透明から、濁ったものへと変色している。


「あとでベルに謝らんと…」


 しょぼんと垂れる沙多の眉。

 文字通りの割れ物を、優しくそっと触れる。

 そして両手で拾い上げ、高く掲げると――


――バリンッ。


「うわっ、()()()わ」


 甲高い音を立て、弾け飛んだ。

 ビクンと肩を揺らす。


――その瞬間、水晶から重く、禍々しい魔力が解放された。


「あ、明野!?」


 刹那、周囲の草木が枯れ始める。


 最初に余波を浴びたのは陽太郎。

 息が乱れ、過呼吸気味に。首を絞められたような大量の冷や汗だ。


 次に魔力は、昆虫や小動物の命を喰らっていく。


「今のなんだッ!?鳥肌立ったぞ!?」

「え、そう?確かに割れたガラスって危ないけどさ」

「そんな問題じゃねえって!」


 沙多は間近に居たにもかかわらず、影響を微塵にも受けていない。

 能天気に破片を拾い集めている。


「これね、ベルから貰ったやつなんだけど」

「前から気になってたんだけど『ベル』って誰だよっ…」


 一方で、伝播した魔力は二人の預かり知らぬ間に崖下まで伸びていった。

 陣営を構えていた戦士にすら警鐘を鳴らさせ、やがてそれは大穴まで到達し――


「知ってるしょ?前見た、石像の人を殺しちゃった人外?ってやつ」

「…おい、それってまさか暴君の…ベアル・ゼブ――」


――ドクンッと、大気が揺れた。


 先程の魔力、それすらもが軽いと思えるほどの躍動。

 世界は時間を忘れ、空白を生んだ錯覚すらあった。


「――…ベル?」


 そして沙多は一人、その名を呼ぶ。


***


「――感じ取ったぞッ」


 同時刻、ベアル・ゼブルは目を見開く。VR機器が壊れた翌日の出来事だった。


 ゲームにログインできない以上、行方を知る機会は失われた。しかし彼は止まらない。

 ならばと数多の世界へ魔力を、次元を超えて探知網を巡り渡らせる。

 あまりに型破りな手段。

 だが、彼は掴んだ。


 渡した水晶の残滓、破壊で溢れたエネルギー。

 そこに自身の力を集約させ――


――刹那、廃屋が光に満たされた。


 呼応し浮かび上がる紋様。

 現れた魔法陣は、陽太郎が完成させあぐねていた図面そのもの。


 やがてベアルは魔法陣へ手を伸ばし――()()()()()()()()

 魔法陣ごと、何もないはずの空間を両手で引き裂き、次元の狭間を生じさせる。

 禍々しい暗闇で彩られた異次元へ、躊躇いもなく身を投じた。


今のベアルの魔力量をバッテリーで例えると60%ほど。逆に言えばゲームだと5%くらいで活動してます。

寿命間近のスマホみたいな容量だな。


*次回は月曜更新の予定です。

 ついで来週までには序章の手直しをしたい。

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