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悪魔が捧ぐオンライン  作者: ヒイロロ*ヒノキ
四章.???編

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3.小憩インスパイア【後編】

誤字脱字はお知らせください。泣いて喜びます。


「今日はアタシが馬車引いてみていい?」

「明野って馬、操れんのか?」

「【馬術】スキル入れてみたんよ」


 今日も今日とて北上する一同。

 代り映えのしない平原を走り、街を数度と超えていく。 


「そっか、占星術士ってスキル選べるんだったか」


 とはいえ二日以上を共にすれば、互いの素性はある程度知られる。

 余談だが、彼はストリーマーとして活動していたらしい。


「けど使えるスキル枠は四つだろ?補佐(サポート)スキルなんて入れて大丈夫なのか?」


 彼が知る構成は【空蝉】と【神隠し】に【速度強化付与】。ここに【馬術】を加えれば枠は埋まる。

 そうなれば、ただ気配を消すのが上手で、馬を操れる一般人の完成だ。お荷物この上ない。


「だいじょぶ、アタシ七個スキル使えっから」


 手綱を引けば、馬は指示に従って走り出す。

 まるで熟練の腕捌きだった。


「七個…!聞いたことがない。装備や道具(アイテム)の効果か…?それとも何か違う条件…もしかして俺がいない間にゲームのアップデートが…」

「よーたろー、帰ってこーい」


 テイッと助手席に座る彼に一刀。

 思考の海から帰ってくる。

 

「…すまん悪い癖だ。『ルシフェル・オンライン』ん時からの」

「てかあれって違法ゲームっしょ。アプデなんてあんの?」

「一回だけあったな。告知も無しにいきなりドンッだ」


――非正規ゲームの、ユーザーすら知らないアップデート。


 当時は掲示板が荒れに荒れたという。

 調整内容や追加要素は明記されず、意向すら不明。

 ただ影響は大きく、プレイヤー人口は増加、巨万の富が動いたらしい。


「それこそ"レアエネミー"とか"天恵"は存在してなくてな、それを期に追加されたんだ」

「ガチ?めちゃ文明開花じゃん」

「自慢だけど最初にそれを発見したの、俺なんだぜ?」

「ふ〜ん。あ、ねえ、この道どっち?」


 差し掛かる別れ道。

 陽太郎は「興味ないか…」と、哀愁と共に周辺の地図を広げる。

 とはいえ土地勘はゼロだ。結果的に合流するらしいが、どちらの道が優れているかなど不明。


「ほう、じきに"北の帝国"へ差し迫るか。ならば右方から進めば到着も早まろう」


 しかし地理に秀でたヒテンジが室内から顔を出す。

 昨日に引き続き、同族という観点から子供の事情聴取(メンタルケア)に勤める彼女は、吉報と溢した。


「北に行ったらなんかあんの?」

「この国は北と南で区切られている。同じ国ではあるが、情勢が異なるのだ」


 国の政権争いの影響などであろうが、沙多の知ったことではない。社会科目の勉強を想起して辟易する。

 

「あと"共通語"が主流らしい。そこさえ行けば、亜人との軋轢も減るはずなんだ」

「超大事じゃん!」


 しかし補足に思考力は復活。

 言語や偏見すら区切られているらしい。

 「どうせ関西と関東の違いくらいっしょ」という想像を軽く超えた。


「上と下でそんな違うん?」

「一人の人間が先導し、新たな様式を北部に築いたのだ」

「あ、俺も本で読んだ。『帝国の英雄"ガブル"』ってのが居たらしいな」


 ほへ〜、と相槌を打ったところで、手綱を引く。

 ガラガラと慣れた手つきで馬を操り、右の道を進路とした。


「数年前、ベアル・ゼブルによって討たれたがな」

「はァッ!?それマ!?」


 しかし予想外の人物が登場し、大声を上げる。これにヒテンジの片耳は倒れ、室内へ引っ込んだ。

 そして思い出した。"ガブル"という名も。


――あれは、ガブルかッ?

――ガブル・エルシオンであるっ。帝国の英雄と謳われていた人間よ。

――…しかし何故ここにおるのだっ?


 初めてレアエネミーと相対した際の言葉が蘇る。

 ベアルが名を呼んだ、天使然とした騎士だ。


 なんで戦ったの?

 しかもその時に死んでるんじゃ?

 じゃあゲームに居たのは?


 知りたいことは山ほどある。が、この場に答えを持つ者は居ない。

 言い表せないもどかしさが、胸中に渦巻いた。

 

「アタシって色々と知らなすぎ…?」 


***


「――クハハハハッ、いざ舞い戻ろうぞっ!!」


 一方その頃、ベアル・ゼブルはVR機器を手に掲げていた。

 沙多が失踪して数日。現実世界へログアウトし、彼はその間たっぷり魔力を蓄えた。

 山吹色から深緑へとグラデーションする長髪、それを七つに束ねる水晶に濁りは無い。

 もはや透明を通り越し、発光するほどに輝きを秘めている。

  

 電気も点かない廃墟にうっすらと朝日が差し込む中、早速魔力を流し始める。

 人外の彼に、休息など必要は無い。栄養補給も睡眠も挟まずにVRを頭に被り、いざ起動すると――

 

――バチィンッ!と、乾いた音が鳴った。


「…ムッ?」 


 そこから数秒、魔力を込めども一向に始まらないゲームに、彼はヘッドセットを外す。

 すると、VR機器から焦げ臭い匂いと共に、煙が立ち上っていた。


「何故意味を成さぬ?吾が抜かったか?」


 操作に狂いは無かった。沙多が教授した正当な手順で、繊細な力加減で起動したはず。

 しかし一点だけ、特殊な方法――電力を魔力で賄うという手段を取っている。

 いつもならばそれで問題は無い。


 だが今、彼の魔力は満ち溢れんばかり。

 そんな潤沢な総量から、いつもの感覚で変換し、注ぎ込んだ。


 結果、過充電によるオーバーヒート。

 圧倒的な負荷に耐えられず、故障した。


「…ヌゥ?」


 とはいえ原因など彼に分かるはずもない。

 加えて、こういったトラブルで頼みの綱である沙多は失踪中。

 つまり、一切の行動を封じられ、事実上『ルシフェル・オンライン』から出禁となった。


こいつら異世界に居る時の方がゲームの話してんな。

『ルシフェル・オンライン』の時はスキルとかゲームの仕様とかパッションで説明してた癖に。


そう考えると未だにベアルがゲームに疎いのは沙多の説明不足。

ゲーム機壊れたのも、監督不届きの責任があります。

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