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悪魔が捧ぐオンライン  作者: ヒイロロ*ヒノキ
四章.???編

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3.小憩インスパイア【前編】

誤字脱字はお知らせください。泣いて喜びます。

短いので次回は月曜です。


「あ、おはよー」

「おう、疲れとか無いか?」

「ばっちし。むしろ陽太郎のがクマない?」

「ああ気にすんな、考察が捗っただけだ」


 宿の確保は陽太郎が請け負った。

 言葉も流暢、人当たりも良い。軋轢なく交渉できる人間は彼しか居ない。

 引き連れた子供も外套を被れば、驚くほど平穏かつスムーズ。かくして一夜を明かした。


「てか今日はどうするん?」


 曰く、丸一日この集落に滞在するらしい。

 昨夜は「仕込みがあると」早めに解散。

 翌朝に合流場所へ赴けば、大した説明もなく彼の隣に並ばされた。

 

 不思議な点は――周囲に、やけに小道具が多い。

 横長テーブルや椅子、看板すらあった。

 文字になんと書かれているのかは不明だが、沙多には既視感があった。

 

「なんか見覚えある…」

「だろっ?この世界の文字、ゲームであった古代言語だぜ!?」

「あっ確かに、それかもっ」 

 

 それは『ルシフェル・オンライン』で長らく謎とされていた言語。

 彼の天恵は文字も翻訳されるようで、同一と高らかに告げた。


(だからヒテンジはあのメモ読めたんだ)


 ベルタに渡された『カナン』なる人物が書かれたメモ。

 極少数しか解読できなかった中に、彼女が入っていた理由を漠然と悟る。


「てか謎。なんで言葉一緒なんだろ」

「それ含めての考察だな。有力候補が四つくらいあるんだが、興味ないかっ?」

「や、なんかムズそうだしパス」

「あ…さいですか…」


 しかし興奮冷めやらぬ様子は沙多によって一刀両断。

 どうやら彼は研究者気質のようで、久しぶりの仲間と談義したかったらしい。


「それより何すんのかが気になる」


 二人が立つのは村の円形状に開けた広場。憩いの場さながら、辺りに人を散見した。

 側には馬車を配置し、中にヒテンジ含む亜人組が待機している。


「まあすぐに分かる。仕上げはこれだな」

「インベントリ?」


 獣から獲れた肉や毛皮を衆目に晒すよう並べる彼。

 沙多は怪訝な顔を向けるも――やがて目の前に()が訪れ、彼は流暢にメギド語へと切り替える。


「《兄ちゃん、丈夫な毛皮あるか?矢筒に使えるやつだ》」

「《らっしゃいっ。これならどうだ?まとめて買うなら安くしとくぞ》」

「《悪くないな、三つくれや》」

「《まいど!》」

「――何でフリマしてんの?」


 ようやく理解した沙多は、至極真っ当なツッコミをいれる。

 

「情報が欲しい。俺も立ち寄ったばかりで近況が分からないんだよ」

「昨日言ってた仕込みってこれね」


 現在、陽太郎は露店を開いていた。

 むしろこちらが本来の目的。行商人という生業で異世界を生きていたという。


「あとはシンプルに路銀だな。子供(あいつら)の面倒を最後まで見るなら、帝国(ここ)を超えて亜人の国に行く必要があるだろ?今の手持ちじゃ不安なんだ」

 

 店を開けば、もの珍しさに惹かれた村人が顔を出し人気は上々で、安定した売り上げ。

 この生活に随分と慣れているようだ。


 一方の沙多は全く喋れないため看板娘はおろか、客寄せパンダ的な扱い。とはいえ、コミュニケーション能力は健在。

 時々言葉が通じないのを逆手に、押し売りまがいの事もしているが。


「なんか今日は実入りが良いな。…なんでだ?」

「アタシのカリスマっしょ」

 

 やがて客足も落ち着けば、雑談を挟む余裕も生まれる。

 その頃には打ち解け、口数が増えていた。


「明野って元々は何しようとしてたんだ?人攫いが無かったらの話な」

「とりまヒテンジの住んでた国を目指そうかなって感じ」

「あの姉ちゃんの国か?ならどっちにしろ亜人連邦か。てっきり大穴を目指すもんかと」

 

 しかし聞き慣れない"大穴"という単語。

 沙多は「何それ」と呆けた声を出す。


「ありゃ知らんか、結構有名だけど…」

「ガチで知らん。そもそもアタシこの世界来たの、一昨日くらいだし」

「…マジか」

「マジマジ」


 想像以上の"最近"。度肝を抜くも咳払いを一つ。

 こちらに詳しくない事実から、今度は世情も少々入れる。


「大穴ってのは文字通り、馬鹿デカい穴の空いた暗い場所で、突然発生したって話だ。その原因は…――いや、ここら辺は興味ねえか?」


 だが沙多の頭から処理落ちの湯気を察知し、諸々を省略。 

 たった一つの、重要な要素だけを伝える。


「――ざっくり言えば、元の世界に帰れるかもしれん手掛かりだ」

「ガチで!?」


 大穴の詳細は分からない。が、帰還の手段と聞いて沙多は飛びつく。


「ガチだガチ。確証はないけどな」

「めちゃ大事な話じゃん!?アタシもそこ行こ!!」


 頭突きを繰り出すほどの勢いに、陽太郎は仰け反った。

 あと一瞬遅れていれば、顎を揺らされ意識を刈り取られていただろう。


「その帰りたがる反応だと、明野も不慮の事故で転移したのか」

「陽太郎も?アタシは天恵で色々あって飛ばされた感じ」


 二人の原因は、天恵絡みの似た境遇。


「やっぱ俺と似たようなケース…じゃああの()()()、完成させたのか!?」

「え知らん。なんそれ怖っ」


 しかし彼の言う"魔法陣"という単語に心当たりはなかった。


「俺がこの世界に転移させられた理由は…恐らくこれだ」


 インベントリから取り出したのは、とある図面。

 円陣の中に紋様や文字らしき何かが並んでいた。


「…魔法陣?」

「そう、これが発動して飛ばされた」

「へー。てかこれ、なんか物足りんくない?」


 しかしその巻物(スクロール)は完成形とは言い切れず、随所が欠け、曖昧な羅列。


「まだ途中なんだよなぁ。だから別の天恵で、これを完成させてくれって願ったんだけど…」

「あ〜ね、それで勝手に発動しちゃったんだ?」

「ああ、しかも発動して一回きりで消えたから、どんな絵面だったか思い出せんしなぁ。瞬間記憶力が欲しい…」


 原物は消費され、現在の図面は記憶を頼りに再現したものらしい。

 しかし彼は異世界へ放り込まれたことより、それを紛失した方が無念らしく嘆いている。


「でも知ってるか?この魔法陣って実は法則があるんだぜ!?プレイヤーの現――」

「《おいあんた、この角はいくらだ?》」

「《あぁ、らっしゃい。それは――》」


 しかし客足が途絶えたわけではなく中断。長話はこの場に向かないらしい。

 その後は斜陽に差し掛かったところで商いを切り上げ、異世界生活三日目の夜を迎える。


馬車が手に入る以前の陽太郎は、徒歩での行商だったので装飾品とか薬とかがメインでした。

怪しまれないようにデカい袋とか道具がインベントリには大量。


陽太郎が会話してる時だけ内容を《》で翻訳します。普通の「」なら日本語。

ちなみにメギド語は「□、◇」表記で、共通語は「◆、■」という差分。


どうでもいいけど《》の記号、ルビ振りや強調のコマンド的な意味もあるので、これ使うと変な暴発しそうで怖い

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