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悪魔が捧ぐオンライン  作者: ヒイロロ*ヒノキ
四章.???編

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2.奔走プレイヤー【後編】

誤字脱字はお知らせください。泣いて喜びます。


「あ〜ムリムリ。英語もアタシ赤点余裕なのに、理解できるわけないじゃん」


 突貫で扉を補修し、拝借という名の強奪に至った馬車。

 御者台に座る沙多は、乗り心地の悪い振動に揺られながら白旗を振る。

 この周辺では、二つの言語が使用されるらしい。

 一つが”メギド語”。昨夜、ヒテンジを嫌悪する村で使われていたもの。


「■◆■◆■?」

「ゴメンね、分からんのよ」


 そしてもう一つが"共通語"。

 比較的どこの地域でも使われ、亜人の子供たちが使用する言語でもあった。


「"お姉ちゃん具合悪いの?"って聞かれてる」

「え、なして分かんのっ?」


 しかし彼は共通語を平然と理解していた。

 驚愕のまま、首を後ろに振って問い詰める沙多。

 余談だが馬を繰れる者がヒテンジしか居ない現状、子供は彼に預けられている。


「ああ、昔に天恵で色んな言葉分かるようになったんだよ」

「天恵!?やっぱそういう使い方も出来るんだ」


 また、『ルシフェル・オンライン』のプレイヤーであったことも判明。

 思えば彼がインナーの上に着た革鎧は、蛇や虫といった鱗や外骨格を元にした『ルシフェル・オンライン』の装備。

 鈍色と黄土色が合わさるそれは、湿地帯にて拾った素材(ドロップアイテム)と近しく、沙多の記憶に新しい。


***


――俺の"天恵"というワードに反応。


 確定した、この子も同じゲームからの転移者だ。

 ピンクの髪が目立つ。高校生くらいか、赤点とかいう概念が少し懐かしい。

 TPOビックリなゲーム感マシマシの修道(シスター)服だしそんな気はした。ってかスカート丈短すぎない?最近の子こわぁ。


 …じゃなくて、こっちはいい。薄々勘付いていた。身元を聞いていっそ安心した。

――問題はその隣に座る高身長の姉ちゃんだ。 


 少し発音に違和感があるものの、天恵に翻訳された感覚がない。つまり紛れもない日本語。

 となると同じくプレイヤーか?


 けど雰囲気が違う。

 外国人ってのも珍しいがあり得なくはない。でもなんか違う。

 堂に入った振る舞い。明らかに場数を踏んだ気配。


 あと関係ないけど声めっちゃ綺麗だ。さっきから鼓膜がヤバい。

 フード被ってよく見えないけど、どんな顔してんだ…?

 いや違うだろ(アホ)、そこじゃない。何の理由で顔を隠している?


 妙に気になる。けどお互いにまだ信用関係は築けていない。

 踏み込みすぎて距離を取られるのは避けたい。話題をちょいとだけズラしてみるか…?


***


「そう言えば、そっちに色々飛ばしちゃったけど大丈夫だったか?」


 カーテンで仕切られた室内から問われたのは邂逅時、接触事故の有無。

 彼の(ジョブ)は【格闘家(ファイター)】なのか派手に扉を破壊し、ヒテンジが乗り込む際に人体ごと外へ殴り飛ばした。

 ただでさえ速度の乗っていた馬車だ、巻き込まれ地面に墜落すれば怪我は避けられない。


「問題ない。予見していた」

「予見?来るって分かってたの?」


 馬を容易く操るヒテンジは、なんて事の無いように言う。

 確かに彼女は不可視の衝突を見事に避けていた。

 まるで未来を見通したかのように。


「――ほれ」

「わっモフモフッ。…ってあれ、足りなくない?」 


 手綱を離せない代わりに、差し出されたのは白銀の八尾。きめ細やかな手触りに沙多の頬は緩む。

 とはいえ実体は一本のみで、他は残像のように感触すらないが。


――しかし本来ヒテンジの尾は九つだ。一つ欠けている。


「危機を察知し、消費された。あれは魔力を多量に喰らうのでな」

「未来予知みたいなこと出来るん?やっぱただのアクセじゃなかったんだ」

「左様、魔力で補った造り物よ」


 まさしく第六感。ベアルと対峙した際、一度と致命傷を貰わなかった要因だ。


 そして同時に、馬車の室内から青年の咳き込みが聞こえた。


***


 亜人だ。確認できた。

 仕切られたカーテンの隙間から、綺麗な毛並みの尾が見えた。

 種類は狐とかに区分されるか?てか綺麗だなあの銀の尻尾。

 ともかく間違いない。出身はあちら側だ。


 いやおかしくね?


 なら日本語話せる理由は何だ?亜人だろ?そっちにゃ存在しない言語だぞ。

 んで、あの子はどうして亜人を平然と受け入れている。俺らにとっちゃ未知の存在だろ?

 いつ知り合った?付き合いは長いのか?そもそも――


――"未来予知みたいなこと出来るん"


 は?今チートみたいなワード聞こえたぞ!?

 というか待て、やけに尻尾の数が多くないか?

 ゲホッ、やばい(むせ)た。落ち着け。


 "亜人は人間よりも魔法の扱いに長けた種族”

 ”魔力を尾に変換して蓄える習性を持つ"


 そう本で読んだことがある。つまり、実力者ほど尻尾の本数が多い。

 あの姉ちゃんは何本ある?…一、二、三…ここからじゃ全部見えない。けど、もしかして相当有名だったりしないか? 


 …まずい、かなり気になってきた。

 盗み聞きばかりでさっきから子供が蔑ろだ、お守りを任されてんのに。

 てか知らん奴に任すなよ。子供ウケ良くないぞ俺。


***


「もう触れる必要は無いのだぞ」

「あとちょっとだけ〜…って、あれ」


 ベアルの水晶が魔力を表していたように、尻尾の本数で魔力の貯蓄をしているヒテンジ。

 しばらくその手触りを堪能する沙多だが、やがて尻尾にも切り落とされた傷跡を見つけた。


「尻尾も一つ切られて…怪我してない?」

「昔の話よ」

「耳とか手とかも、ゲームん時から無かったよね」


 ならば以前は二叉の尾だった彼女。

 右耳や左腕に加えて、古傷を多く抱えていた。


「アタシもなんか手伝うよ?」

「気を遣わずとも良い。案外、この腕は精巧に作られておる」


 義手で補っているものの、操縦の負担は計り知れない。

 しかし視線を悟った彼女は、不自由はないと左腕を振る。

 それは数少ない『ルシフェル・オンライン』での良い拾い物だったらしい。

 指の関節までも再現し、戦闘用の鉤爪まで自由自在だと言う。

 

「『まじっくぽぉしょん』なる魔力回復の手法にも驚いたが、これは別格よ。其方らの世界では『おぉとめいる』と申すのだろう?」

「――違うっ、それ作品が違うぞ姉ちゃんッ」

「きゃッ、ビビッたっ」


 唐突に二人に割って入る青年。

 異様に焦る様子に、沙多がビクンと跳ねる。


「その言い方は色々問題があるって」

「…?何かダメなん?ってかそれオートメイルって言うんだ。初耳」

「ダメだその言い方は錬金術師しかダメなんだっ」

「錬金…【錬金術師(アルケミスト)】?その(ジョブ)ならアタシのギルドに居るよ?」

「そうじゃなくて…ジェネレーションギャップ…」


***


 エッなに!?尻尾切られてんの…!?

 てか耳も片方だけ?隻腕!?

 どんな波乱万丈な人生送ってんだあの姉ちゃん…。


 『ゲームん時から』ってことは昔からある傷ってことで…ん?『ゲームん時から』…?


 ゴファッ。

 口の中がまた爆ぜた。

 ウトウトしてた子供が眠気を飛ばす。ごめん。

 

 理解するのが遅え(ポンコツ)ッ。時差どんだけあるつもりだ距離一メートル以下だぞッ?

 

 ゲームに亜人が居た?一体どうやってログインした?

 違う。もしかすると現実世界じゃなく、ゲームに直接やってきた可能性もある。

 どちらにせよ、どうやって転移した?


 あぁッ気になりすぎる…!思考がまとまらない。今日寝れる気がしねえわこれ。

 情報を拾おうとして耳がピクピク痙攣してきた。痛い痛い痛い。

 てかそんな話、人が後ろに乗ってる状況でしちゃダメだろ。


 一旦落ち着け、咀嚼して他の要らない情報を減らせ。


 義手は『ルシフェル・オンライン』で作られたもの。

 うん、初対面は普通に両腕あったように見えたもんな。片方が造り物だったのか。


 魔力回復薬(マジックポーション)はこっちの世界に存在しない。

 だよな、当初は驚いた。

 そういや在庫が怪しいんだった。有事に魔力切れなんてしたら死活問題だ。大事に使わねえと。

 よし、落ち着いてきた。

 

 …あの姉ちゃんは何らかの要因で飛ばされて、ゲームから戻ってきた状態と仮定する。

 つまり行って戻ってで、世界を一往復したことになる。


 ならゲームと世界は一方通行じゃなくて、相互で移動可能?

 ってことは明確に敷かれてる導線が、何らかの媒体が存在している…?


 じゃあ俺らがここにいるのは偶然なんかじゃなく、説明できる理論があって――


――"其方らの世界では『おぉとめいる』と申すのだろう?"


 うおっその話はマズイッ!


――――――

――――

――


 窓を見れば、さっき俺が出た村へと戻っていた。

 

「着いたよ〜」


 例の子がカーテンを捲り、こちらを覗き込む。

 さて、どうする?普通ならここで解散だ。

 

「なあ、二人はどうすんだ?」

「う〜ん、亜人(このコ)らに会っちゃったし色々考えんとね」

「同胞は捨て置けぬ。だがここは帝国、どうにも当ては無いな」 

  

 けど今回は事態が事態、人攫いにあった亜人がいる。

 メギド帝国は亜人との関係性が悪い。

 特にここは帝国の南半分。その傾向が強いはずだ。

 

――だからこそ、亜人の子供(コイツら)()()に使える。


 子供の行く末以上に、この二人が異質すぎる。

 もしかしたら、何かの鍵になるかもしれない。いや絶対になる。直感が確信にまで迫っている。

 

「なら一緒に行動しないか?多少ならどうにか出来るかもしんねえ、助けが欲しいんだ」


 スラスラ回る呂律に思うところはある。

 『子供を見放すのは後ろ髪が引かれる』そんな思考さえ、我ながら疑心暗鬼になる。

 だがこの情報、追求せずにはいられない。


「いいけど何すんの…てか、名前なんだっけ?」


 よし、釣れた。けど自己紹介がまだだった。

 同じプレイヤーに出会ったことや、姉ちゃんの事情あれこれで失念していた。


「ああ、俺は丁 陽太郎(ひのと ようたろう)。知ってると思うが『ルシフェル・オンライン』から転移者だ」


――今日は改めて『ルシフェル・オンライン』の秘密を確信した日だ。


元々は三人称のみの予定だった。けど読み返すと陽太郎が怪しくて絶対裏切る奴じゃん。となったので一人称視点を追加。


けど追加したら、コイツ世界の秘密とか繋がりを延々と考察しだすから、文字数が増えるわ勝手にネタバレするわで厄介者になった。著作権の力で思考を封じろ


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