ex.伏魔の王伝録
*ex.は読まなくても支障がない番外編って意識ですが、これは特に本筋と関係ないやつ。
設定資料集とか、時代背景とかが好きな人だけどうぞ
誤字脱字はお知らせください。泣いて喜びます。
『暴君ベアル・ゼブル』
『魔王ル・シファル』
厄災を体現した上記二名を様々な記録から集約し、ここに記す。
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初出日時は××/○○。「メギド帝国」の北部にて被害が発生。
目的不明の破壊活動を行い、後に『ベアル・ゼブル』と名付けられる。
当時は血を吸ったような身体ではなく、闇を身に纏った異形。後に現れる種族「人外」との類似点が数多く存在。
また、体躯は五メートルを上回ったともされる。
村一つがまるごと強大な魔力に呑まれ、更地へ変化。後に『ベアル・ゼブル』の魔力と判明。
調査を行うも、生存者なし。遺体は全て行方不明と帝国から発表。
まるで神隠しのようだとされ、伝承が広まる。
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××/○○以降、『ベアル・ゼブル』の証言に変化が見られる。
深淵の身体は変わらずも、人種族に似た耳や目、口のような器官を複数所持していた姿が報告される。
頭部らしき箇所以外にも複数の器官を備え、歪に合成された獣のようとも表されている。
加えて、会話を確認した記録も発見。
これまで意思疎通は不可能と見られていたが、共通言語らしきものを口にしたと記述があった。
また、遭遇した際の生存率はこれを期に上昇。
面と向かって応答し、何も危害を加えられず生還した者も報告に点在する。
最初に言葉を確認した報告では、聞き取るのも困難な雑音さながら。
しかし時系列順に被害をまとめると、徐々に言語は精度を増していった傾向にある。
この事から、人の文化や生態を学習する脅威と各国は認定。警戒と排除の姿勢が強まる。
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××/○○、××国による討伐作戦が決行。
初となる大規模な部隊の編成だったが、結果は壊滅に終わる。
戦場となった○○地帯からは遺体が未確認。
事後処理の報告書には、鉄の武具や血の匂いが群がるだけ。討伐対象はおろか、人影すら皆無と綴られたという。
また、『ベアル・ゼブル』らしき個体に大きな変化が見られている。
この日を境に、報告による外見は異なっていく。
"人型に押し留めた影の異物"ではなく、溶けた死体のような外見。
"血潮の表皮をツギハギに纏った何か"と記録があった。
加えて体長もこれまでより僅かに縮小、同一存在かしばらくの間議論が交わされる。
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××/○○。亡国○○による討伐作戦が決行。
記録された中では、二度目となる国家主体の討伐作戦となる。
前任の結果も踏まえ、××国の三倍にもなる戦力を投入するも、壊滅に終わった。
戦場も大きく広がり、国土の五分の一が戦火に見舞われる。
他国へ名を轟かす猛将○○・○○○や、全軍率いる提督の○○○・○○○も消息不明となり、後に戦死と下される。
また、財政に大打撃を受け、これが滅亡の引き金となる。
これを期に、報告される外見はさらに変化。
より人の皮膚に近しく、目や口といった器官の数や位置が徐々に似通った擬態となった事が報告されていく。
以下に相対した者による似せ絵も記載。参考文献○○○○――――(*以下中略)
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――国、壊滅。
計四十七の討伐を試みたが、全て失敗。
自警団等の小規模な作戦も含めれば、その数は記録に残されたものだけでも百を超える。
最初に出現が確認されて以来、数十年経過してもなお、これを討ち果たした勢力は存在しない。
この状況を受け、各国は討伐を断念。
対処不可能の存在として、嵐や蝗害と同列に、人知の及ばない災害として備える判断に風向きが強まる。
結果、この時代に『暴君ベアル・ゼブル』の名が確立された。
真に恐るべき存在が改めて全土に轟き、退魔の習慣や伝統が色濃く残る。
またこの頃から、現在に伝わる外見へと完全に姿は変わる。
背丈は二メートル強、赤黒い筋肉組織らしきものや、目や口といった器官すらを模し、形だけならば人間と全く変わらぬものへと変化。
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××/○○。「魔王」顕現。
正午過ぎ。突如と足が竦むような震えを訴えた。
これに人間も亜人も例外は無く、山や海を跨ぐ。
世界に居まう全ての人類が、一挙にこの感情を刻まれたと記録される。
過去に経験のあるものは『ベアル・ゼブル』の襲来と狼狽。彼の存在に似た圧力が発せられたという。
同時に、後述の「大穴」となる箇所から超規模な地鳴りが発生。轟音が響いたと報告された。
数日後の××/○○。「メギド帝国」にてその正体が確認される。
出現したのは一人の少女らしき何か。見た目は齢十八ほどの女性。
しかし、同じく全身が逆立つほどの恐怖が渦巻いたと残される。
また『暴君ベアル・ゼブル』を引き連れていたと明確に記録。
誰にも御することの出来なかった暴君を付き従え、徘徊。
辺境の○○村から始まり、最終的に都に立つ王城の上空を旋回し、消失した。
二名が撤退と見なされた後、「メギド帝国」は迅速に周囲の状況を確認。
幸い、国事態には直接的な被害は無しと処理されている。
この際に、自らを『ル・シファル』と名乗ったとされる。人により名付けられた『ベアル・ゼブル』とは異なり、自称を確立。
外見も人間と非常に似通っていることから、分類される種族は長い間議論された。
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また、「メギド帝国」と「亜人連邦」の国境に挟まれる北方の大渓谷が崩壊。
『ル・シファル』の出現時期と重なり、調査の結果、奈落の底まで通じるような巨大な陥没が発生。以後「大穴」と呼称されるようになる。
さらに地形と生態系が著しく変化したと発表された。
大穴の全貌は不明。
小国ならば呑み込むほどの広さを有し、地底には辿り着けず、調査は不十分のまま断念。
しかし、この大穴から異形の存在が確認される。
影のような黒い集合体は生物かも不明。
人型の深淵や、獣を模った形も報告される。
性質は様々で、攻撃的な個体から逃げ出す個体、茫然と眺めるだけで干渉しない個体など多岐に渡る。
蠅の如く、無尽蔵に発生する異形の被害が相次ぎ、特に大穴と面した「メギド帝国」と「亜人連邦」は対応に追われた。
この二国により、これらは「人外」と名付けられる。
なお「人外」は対処可能で、致命傷を負う、あるいは保有する魔力を使いきれば、泡沫のように霧散すると報告にあげられた。
これを元にした、魔力で構成された生命体という説が現在は有力。
また、大穴からは特別な鉱石が発露し、採掘されるようになる。
澄んだ透明色で装飾に好まれる他、持ち主の願いを反映する効果があると各所で言い伝えられる。
質や大きさによる差は激しく、実態は未だ解明されていない。
この鉱石は「魔鉱晶」と名付けられ、希少価値から、これを巡り先述した両国の争いは勃発。関係の悪化を辿る。
なお真偽は不明だが、様々な文献を調べた結果、以下に記載された内容が発現した願いとなり―――(*以下中略)
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××/○○、「魔王」より命を奪われる事例が発生。
「魔王」は様々な国で姿を確認されるも、「暴君」と異なり直接的な被害はゼロ。
数ある記録を探せど、表立った破壊活動は確認されない。
しかし未開地域開拓を主目的とする個人チームが○○国、○○地帯で遭遇。
駆逐を決意した統率者により接近、武器の届く間合いに入ると、突如膝を突いて倒れる。
魔王が去った後、様態を確認すると統率者は死去。
外傷も何も無く、魂だけ抜き取られたようだとパーティを同じくする者から証言があった。
使用していた武器は槍と記録され、絶命の範囲は対象から半径三メートル程度という予想が―――(*中略)
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また日を増す毎に、命を奪われる範囲が拡大している事実が明らかとなる。
前述した最初の事例では数メートル程度だったものの、××年後の××国で挙げられた報告では、村一つ呑み込まれ、住人が一斉に死亡した報告があった。
この事から各国は早急な対策を迫られる。
武力による鎮圧が意見に出たものの、本人の力が未知数。加えて「暴君」を従えていることから断念。
『ベアル・ゼブル』と同じく、対処不可能の烙印が押される。
また『ル・シファル』が出現して以来、主従となり行動は制限されているのか「暴君」による被害は減少。
○○年を期に、『ル・シファル』による被害件数が『ベアル・ゼブル』を上回る。
これを受け、魔の暴君を従えた王として、世界的に「魔王」の呼び名が普及していく。
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××年後、『魔王ル・シファル』の重圧が形を変え、世界を覆う。
××/○○を境に、活力を蝕まれるような感覚を訴える人が急増。
報告にて、一部の地域ではなく世界全土にて同じ現象が発生していると確認された。
本能によるものか、これが『魔王ル・シファル』の影響と、全人類が同時に悟った旨の文献が数多く残されている。
その重圧は命までは奪われない一方、気だるさや体力、魔力の摩耗が増加。
初期症状は非常に軽く、不調の域を出ない程度とされる。
しかし日を重ねるごとに影響力を増し、衰弱の呪いは徐々に肥大化。
衛兵が任務途中で膝をつき、農夫も日が昇りきる前に鍬を捨てる事例が勃発。
これによる被害で有名となったのが――(*中略)
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××/○○。家畜や野生生物の死骸が各所で大量に確認される。
調査の結果、どれも年老いた個体や、衰弱した個体と判明。
健康的な個体は疲弊の様子は見られるものの、命に別状は無しと判断される。
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××/○○。遂に人種族からも大量に死者が出る。
懸念されていたように、対象は老人や病気を患うものが多く該当。
先述したような動物の例と被害内容が酷似。
また健康的な青年や、鍛練を積む近衛騎士ですら仕事が手につかないほど活気を失い、日常生活が困難になる者が溢れかえる。
特に問題となったのは、赤子が死産となる事例が随所で発生。
人口が一挙に減り、労働者不足や内乱が問題となる。
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××/○○。呪いの一時的な緩和。
家畜に留まらず、野生生物が激減し、飢餓となる国が続出。
これにより、崩壊した国は七つ。種が絶滅し途絶えた生物は百六十七種。
また、衰弱から獣などによる被害は激減する一方「人外」の活動に変化は見られず、外敵は「人外」という一種類に絞られつつあった。
特に大穴に面した「メギド帝国」と「亜人連邦」は被害が顕著で、防衛戦線が瓦解。滅亡を危ぶまれた。
しかし『ガブル・エルシオン』なる人物がこれを阻止。
単独で大穴へ乗り込み、生還。採取した大量の魔鉱晶を用いて、呪いの緩和に成功したと伝えられる。
これにより××/○○以降、衰弱の影響は世界的に緩和し、初期の症状程度まで収まる。
人だけでなく生態系の回復に貢献し、再起の一因となった。
これを讃え、人々は「帝国の英雄」という称号を贈る。
また、魔鉱晶の有用性がこれを期に確認され、金を上回る価値となる。
しかし、呪い自体は継続して蔓延。
日を重ねるごとに、再び衰弱の効果は依然強まる。
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××/○○。魔王消失。
××年後、再び呪いが年老いた個体や、衰弱した個体家畜に及ぶまでに進行。
前回を鑑みて、人に被害が及ぶまで一年以下の猶予とされた。
これに対するべく、各国から首脳を集めた会合が開かれる。
しかし○○時○○分○○秒。会議の最中で、突如と呪いが消え去ったことが確認。
「魔王」による重圧の霧散。これを全人類が同時に共通の感覚を宿し、開放感を覚えた。
その後の調査にて、呪いは完全に消失。野生動物からも、その事実が報告される。
呪いの再発も確認されず、これは現在までの一度も記録されていない。
また『魔王ル・シファル』も痕跡を残さず現在未だ失踪状態。
同様に「人外」も活動を停止。「大穴」の調査で存在は確認されたものの、「大穴」より外へ進出する様子は一向になく、世界は従来の形を取り戻す。
これによって魔王が存在しない平和な世界が訪れた。
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××/○○。暴君襲来。
呪いが消失して一年。再び『暴君ベアル・ゼブル』が「メギド帝国」に出現。
『魔王ル・シファル』に随伴せず、単独で行動を確認。
これに『帝国の英雄ガブル・エルシオン』が相対。
「メギド帝国」の北端を戦場に、三日三晩に及ぶ死闘の結果、両者失踪。
どちらも遺体は未だ確認されておらず、真偽は不明。
これに帝国は相打ちと発表するも、中には戦死と主張する文献も確認された。
現在も「暴君」の姿が確認されないことから、対峙した『ガブル・エルシオン』を信奉する姿勢が強まり、未だに根強い人気を博す。
――捲るページはここで終了。
本をパタリと閉じた。
これ作中の時系列的に、出版されたの超最近のやつっぽいですね。
ベアルが転移してから数か月の間で、有り余る文献を調べてまとめあげた著者は根性あるな。筆が早くてすげえや。




