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悪魔が捧ぐオンライン  作者: ヒノキ
三章.飛天の唄編

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4.飛天の唄と並ぶ猛者にも【前編】

誤字脱字はお知らせください。泣いて喜びます。


「――…あっ気付いたっぽい?」


 夢うつつな、草原に横たわり、そよ風を浴びる感覚。

 次にその声が聞こえ、ヒテンジが目を開けば――いの一番に沙多の顔が映った。

 

 膝枕か…。と、瞬時に理解。

 誰かに頭を撫でられるのは新鮮ですらあった。

 先に己がした行為を返されてると知り、存外に悪くはないと喉を鳴らす。

 ついでに言えば胸という曲線には邪魔をされず、視界は良好だった。


「…どれほど寝ておった」

「一分も無いよ。だいじょぶそ?いきなり気絶してまじビビった」

「魔力切れであろうな」


 ヒテンジは身を起こし膝枕から脱出、周囲を確認。「あ〜…」と惜しむ沙多の背後には悪魔が座していた。

 部下(シュウト)はまだ伸びており、自身も不調で戦闘続行は不可能。九死に一生を得たとだけ把握する。


「何故生かした?」

「だって聞きたいこと色々ありすぎるし」


 あまりにも簡潔な尋問という理由。

 その割には、沙多は自白剤すら用意していない。


「あ、でもアイツは何かヤだから放置してる」


 部下(シュウト)を指して不機嫌になる。

 どうにも波長が合わないらしい。ジトッとした目つきが項垂れる彼を穿つ。


「んでね、とりま聞きたいのは――もしかしてベルと同じ出身?喋り方とか似てるし、アタシより詳しそうじゃん」


 沙多はレアエネミーに関する情報を追い、潜入を試みている。

 しかし今はそれらを一切無視。友人の家でくつろぐが如く、身の上話を求めた。


出身(それ)には肯定も否定も出来よう。郷土は(たが)えど、生まれた星は一つ故にな」

「どゆこと?それ言ったらアタシら全員地球で生まれてんじゃん」


 納得出来かねる沙多。

 ヒテンジは目を閉じ数秒、やがて意を決して言葉を紡ぐ。


「――かような地はそれこそ知らぬ。妾にとってそこは異界だ」

 

――でもさ、これあんまゲーム要素無くなかった?

――異世界?ってのばっかでゲームの技とか言葉出てこんね。


 以前にクラスメイトから借りた漫画の内容、そして会話が次々とフラッシュバックする。

 この半年間、知識を身につける中でゲームや異世界といった場所へ転生、あるいは転移する例を何度か見た。


(つまり…そーいうコト?)


 口を開けて固まる沙多。

 問題の方程式はグチャグチャに不明だが、解答集から既に答えだけは得てしまったような喪失感があった。

 思考では逡巡するも、直感は結論に辿り着いていた。

 ヒテンジこそがまさに、そのケースなのだと。


「…じゃあ異世界?ってトコの人間なん?」

「そも種族から異なろう。其方は人間であるが…――妾もベアル(きゃつ)も、そこには属しておらぬ」


 ヒテンジの残った白銀の一尾がゆらりと揺れる。風などではなく、明らかに意識的な動作。

 次いで沙多は、片側だけの狐耳を追う。これも視線を受け、残った左耳はピクッと動いた。

――それは神経が通っている()()を意味する。


「…ねえ」

「ほう?」


 チョイチョイと背伸びして手で招く沙多。

 その「寄れ」というサインを不思議に思ったヒテンジは身を(かが)め、目線を合わせれば――


「うわぁっガチじゃん!」

「…其方は遠慮というものを知らぬな」


 本人の許可が降りる前に左耳を撫でる沙多。

 彼女は咎めるものの、くすぐったく目を細めている。


「先頃、魔力切れにて妾の気が断たれたのも種族による差異の一つだ」 


 姿勢を戻し、身長差により手が届かない安全圏へ。

 ベアルとも渡り合ってみせた中、突如と意識を失った彼女。

 種族(そこ)に早々と敗北を悟った理由があったと、仕切り直して脱線した話を戻す。


「人間ならば激しい頭痛を引き起こし、亜人ならば意識を失い――人外ならば存在が(めっ)される」


 ベアルを尻目に、瓦礫に塞がれた道をガラガラと掻き分けて、玉座へ戻る。

 件の彼は、既に興が醒めたのか胡座をかき、度々見る精神統一をしていた。


「ベルもやっぱ人間じゃ…ない」


 語られるものは沙多の抱いた疑問にピースとして、いっそ気持ちいいほど嵌っていく。

 同時に、異様な外国人として片付けていたベアルの素性に、向き合わざるを得なかった。


 彼は言った、沙多に供した魔力を辿ってここへ来たと。

 だが魔力(それ)を貰った覚えなどない。唯一彼から貰ったのは、VRの初期セットアップを代行した礼の水晶。

 これが仮に魔力だとして、ベアルは髪留めに同一の水晶を七つ用い、時折変色させている。


 ヒテンジは言った、人外ならば存在が消滅すると。

 彼女の言い分からベアルはまず人間ではない。身体的特徴から亜人をも凌駕する化け物とだけは知っている。

 ならば仮に人外だとして、彼が負傷したのはどのような状況だったかを思い出す。


 全て、水晶が濁っていた時だ。

 つまり透明度が示すのは彼の魔力の残量。

 ではこれが完全な暗黒に染まった時、人外の彼に起こる事態は――


「それめっちゃ重要じゃん!?ベルベルベルッ!!魔力大丈夫なの!?消えちゃわないよねッ!?」 

「ヌゥ…何用であるか妹君よ」


 沙多は慌てた形相で肩を揺さぶる。常人なら首をガクンガクンと前後するだろうが、この筋肉の塊は一ミリも動かない。

 だが流石の喧しさに悪魔とて集中を乱され、意識は舞い戻った。


次の更新は日曜までに頑張ります。



ギャル特有の理解力で異世界を受け入れる沙多さんです。

ちなみにベアルを散々"悪魔"と書いてますが、別にそういう種族は存在せず、普通に"人外"という括りになります。

人型なのも便利だからであって、やろうと思えば怪物とか人以外の異形になれる。


沙多は着実に異世界人との交流を増やしてるけど、絡まれやすくなるフェロモンでも出てんのか

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