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悪魔が捧ぐオンライン  作者: ヒノキ
三章.飛天の唄編

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1.飛天の唄と重なる巡りに【後編】

誤字脱字はお知らせください。泣いて喜びます。


 黒髪マッシュに黒マスクという、いかにもな装い百点満点の彼。

 ゲームの世界でもあまり変わらない姿。負の感情と共に刻まれた顔だ。


 一方で、相手はこちらに気付いていない。

 『ルシフェル・オンライン』は、容姿を一切を変更できない。

 可能なのは服や装飾、髪型程度で、他は全て現実そのままに反映されてしまう。


 故に大胆に髪型を変え、イメージチェンジしている沙多は判別が付きにくく、男性の彼は特定されやすい傾向にあった。

 なけなしの身バレ対策が功を奏したとも言える。


「じゃあ聞いた事あると思うけど、確認事項な。ギルド"アカシック"は当契約において――」


 順に規約を確認していく中、思考は今だに混乱中だ。


――何故こんな時に出会うのか。

 ゲームと現実で、同一人物に会うなど偶然にも程がある。

 確率論で片付ける問題では無いような気がした。


『といっても、今は嫌いですねぇ。アカシック(かれら)は』


 再び思い出すのは新堂の言葉。


『昔はまだマシでしたよぉ?曲がりなりにも理念があり、(おもむき)があった。――しかし現在は美学が無く、見境が無い。まるで下品だ』


 過去に絡まれた事実と相まって、きな臭い何かを感じ取ってしまう。

 ついでに『"エース派閥"から"マイン派閥"へ転向したのも気に食わない』とボヤく感情に引っ張られ、しれっとアイテム錬成に失敗した新堂の姿は記憶の隅へ押しやった。

 

(…あんま関わらんとこ)


 最低限の接触に留めようと決意したところで、話は本題に移る。


「――最近話題になってる奴か、お前もあの通り魔が気になった口?」


 …のだが彼、妙に馴れ馴れしい。


「てかおれ、そいつ知ってるかもだわ」

「…ねえ、ウザいんですけど」

  

 以前に利用した際はもっと淡々と終わったはずだ。が、黒のコートに身を包む彼は口数が減らない。


「なんでそいつと同じ奴追ってんだ?」

「うっさい、さっさと話進めろし」


 チッと舌打ちする沙多。ナンパされた悪印象から攻撃的になっている。

 とはいえ話が進まないのも事実。ベルタが書いたメモの人物に、未だ進捗は無い。

 そんなストレスもあり、貧乏ゆすりまで始めてしまう沙多は――不意に、手からメモを零してしまった。

 

「あッ」

 

 サッと拾い上げるものの、相手が見逃すはずもない。

 一瞬の間に、書かれた文字を認識してしまう。


「――それ…『古代言語』か…?読めんのか!?」

「いや読めんし、なんか手掛かりっぽいから持ってるだけ」


 一転、男の様子は変わった。

 「少しタイム」と、何処かへメッセージを飛ばし数秒、返信があったのか席を立った。


「…事情が変わった、うちのサブマスが会いたいって」

「はァ!?何いきなり――」

「金はいらんから」


 沙多の口は止まった。

 ベアルと組んで以降、着実に貯金は貯まっているものの、物入りには変わらない。

 情報の対価である金銭。当然、払えば払うほど質のいい見返りとなるので、巨額を投じるつもりだったが――


「――…どこ行きゃいいんよ」

 

 背に腹は代えられないと条件を呑み、せいぜい良い情報をふんだくってやろうと息巻く。


 アカシックというギルドに、拠点は存在しない。

 加えて、メンバーは常に情報収集に動くため、所在地は不定。

 故にアポイントは掲示板での接触のみ。向かうべき場所を問わずにはいられなかった。

 

「問題ない。こっちから()()()()()


 不躾に彼がインベントリから取り出したのは、とある希少な天秤(アイテム)

 以前、近藤率いる裏ギルドを掃討した際に、団員の一人が同じく所持していたものを掲げる。

 と言っても沙多とは面識が無く、対峙したベアルに聞いたとて記憶にすら残っていないだろうが。


「…『置換の天秤』?それじゃ距離足りんでしょ」


 しかし効果は知っている。指定した座標、空間同士の入れ替えだ。

 つまり向こう側の空間と、ここの空間を置換し、彼女ごとサブマスターの元へワープしようという魂胆だろう。


 それでも制限は存在する。対象が過剰な質量や、交換が長距離間だった場合だ。

 特に後者は、百メートルほど離れてしまうと効果は発揮されず、まさしく懸念点だった。

 

「それも問題無し。【付与術師(エンチャンター)】ならな」


 彼はスキルを発動。体に燐光が散らばり始めた。

 同時に沙多は苦い顔となる。仄かに輝くそれは【完全強化付与(フルエンチャント)】の証。

 裏ギルドのボスである近藤が使っていた技に、拒否反応を示した。


 だが少し異様だった。体に纏い、己を強化するのではなく、向かう先は道具(アイテム)

 光は天秤に吸われ、スキルの付与が完了する。


「…【付与術師(エンチャンター)】ってそういう事出来んだ。自分に使うだけかと思った」

「それ【付与術師(エンチャンター)】の意味ある?身体能力(フィジカル)欲しいなら、最初から【格闘家(ファイター)】とか【重戦士(ウォーリア)】とかの近接系選んどけって話だろ」

「…あーね」


 むしろこっちが主流。手間をかけてまで、自分の拳で殴りに行くのは変わり者だと正論を述べる。

 いわばアイテム特化の【付与術師(エンチャンター)】。近藤とは異なる構築だ。


 天秤を強化したことで制限は緩和され、長距離の移動が可能に。

 「しれっとアタシと近藤(アイツ)に流れ弾飛んだな…」と悲しむ沙多と共に、空間ごと転移した。


付与術師エンチャンターはアイテムや味方の強化も可能な一方、自力だと一芸に劣りがちなので、クセありなジョブです。


おまけ話だと、沙多は己だけにしか強化術を付与出来ないと思っていた。ゲームの経験値が低い。

ちなみに近藤は、殺す感触を直に味わいたくて自分自身で殴りに行く変態。

自己強化に振りまくりで、アイテムや味方の補助は最低限の構築です。


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