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悪魔が捧ぐオンライン  作者: ヒノキ
二章.熱と喝采編

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ex.ベルタさん【後編】

誤字脱字はお知らせください。泣いて喜びます。


 ・1月12日。(たぶん)

 ・ウチが生まれて大体4ヶ月後?


『へ~、あんちゃん宗谷(そうや)って言うんだね』

『ただの暇つぶしだけど…よろしく…』


 それから日記を付けることにした。これで少しでも記憶を思い出せれば良いかな。

 日付とかもメモしてみた。けど、ここは外の世界と微妙に時間の流れが違うらしく、正確な日は分からない。

 とりあえず、覚えている限りの言葉や記憶を、寝る前に書くようにする。


 旅も一段落して、ギルドが作られた。と言っても形だけで、活動場所も決まってないけど。

 思えば、この頃にはスガの言葉遣いに随分と侵食されていた。

 『貴方』なんて呼び方、意識しないと出てこないし、焦ったときは『やらかした』なんて言葉もたまに飛び出る。

 でも関西訛りだけは真似たら駄目らしい。本場の人に刺されるって貰った知識にあった。 


『助かった…俺は光平(こうへい)だ』

『ここらへんPK(プレイヤーキラー)多くて嫌になっちゃうわね…』


 最初のメンバーが宗谷(そうや)。しばらくして光平(こうへい)真美(まみ)さんが入った。

 おかげで、これまでより出来る事が広がって、会話も増えた。


***


 ・2月16日。(たぶん)

 ・ウチが生まれて大体5ヶ月?


 遂に拠点の場所が決まった。

 でも不思議だ。スガはこういう事は滅多にしない。

 友達は多いけど、深くはつるまないタイプなはずだ。ウチに会うまで一人(ぼっち)で活動してたんだし。


『居場所がある方が安心できるし、楽しいやろ』


 建築費という血涙を流しながら、そんな理由を聞いた。

 けど安心もしていた。ウチは滅多に死ななくなった一方、スガは代わりに傷付き、苦しむ顔が増えた。

 だから仲間がいた方が負担が減ると思った。

 時々、一人になると思い詰めた顔を作るのも嫌いだし、無くなればいいな。

 

*** 


 ・4月20日。(たぶん)

 ・ウチが生まれて大体7ヶ月半?


 最近は凄い平和だった。日記の書く内容も日常の事ばかり。

 死んだ時に読み返す用なのに、まだ一回も使っていなかった。


 …というわけで昨日、久々に死んだので読み返す。

 死因は転落死です。恥ずかしいねっ。

 

 そして読んでみたら気になる事があった。どうも忘れる内容には順番があるらしい。

 完全なランダムではなく――ママから貰った記憶、次に教えられた知識、最後にウチ自身の記憶が消えて――また最初に戻る。


 今回忘れたのは、真ん中の教えられた知識。

 気に入ってたらしい探偵モノの漫画を思い出せない。まあ、ウチには直接関係ないからどうでもいいけど。

 だとすれば、次死んだ時はウチの記憶が飛ぶはずだ。他よりも一番嫌なヤツ。


 この推理は正解だと思う。

 今まで忘れた記憶をカテゴリ分けしたら、辻褄があった。

 ただ、初めて死んだ時に何を忘れたのかは謎のまま。

 ママから何か言われてたりしたのかなぁ?


***


 ・5月5日。(たぶん)

 ・ウチが生まれて大体8ヶ月?


 スガの誕生日だ。せっかくなので日記に残しておく。

 外の世界でいっぱい祝われて来るのだろうとのんびり待ってたら、いつもより早くログインした。


『お前だけやわ、オレん誕生日覚えてくれてんの』


 どうやら友達にすっかり忘れられてたらしい。人付き合い上手くやれてんのかな?

 今日はギルドメンバーの予定が会わずオフの日。ウチ以外に誰もいない。

 いつもなら彼女という立場を利用し、からかいながら祝ってやろうと思ったけど、やめた。

 その日は、ただ拠点(ホーム)で何時間も喋った。


 プレゼント代わりに下の名を呼んでみようかな?と口を開いたものの、なんでか声に出せなかった。

 とっさに『リーダー』と呼び誤魔化したのは鮮明に覚えてる。


『ありがとな、やっぱログインして良かったわ』


 その言葉で、オフなのに当たり前にウチに会いに来ると思ってた前提に気付かされた。相当に毒されてるらしい。


***


 ・5月19日。(たぶん)

 ・ウチが生まれて大体8ヶ月半?  


 大きい音で目が覚めた。

 みんながログインするまで仮眠してたら、山が噴火した。

 何事かと思って飛び出せば、全身に火傷を負った知らないプレイヤーの影。

 

 でもウチにとっては、安全の確保が先で追えなかった。

 後でみんなと話し合えば、色々な意見が出る。

 犯人を捜索すべきとか、溶岩の撤去を試みるだとか、拠点近くの守りを固めるだとか。

 中には、いっそギルドから一旦離れるべきという意見もあった。


 それで何となく、この関係がいつか必ず終わる事を実感した。 

 ここはゲーム。いつかみんなログインしなくなる。ギルドは一年持てば良い方かな?

 お人好しの誰かさんはウチの為に残ってくれるような気がする。

 けど、また二人だけの生活に戻れば、庇いまくって傷を増やすのだろう。

 そして何年後かには必ず、世界にはウチ独りだけ残される。


***


 ・5月28日。(たぶん)

 ・ウチが生まれて大体8ヶ月半? 

 

 こうして考えると、会える回数は有限だ。そんなに多くないと感じてしまう。

 後悔しないように、名前を呼んだ回数を増やしておこう。

 …そう思ったけど、あの日から一回も出来ていなかった。


 リーダー呼び、失敗したかも知れない。

 素直に名前を呼べなくなった。なんか恥ずかしい。

  

 もはや最近は自分のレッテルをズルく利用している気さえする。

 『彼女』だからベタベタ触れてもいいし、意味もなく声を掛けてもいい。そんな免罪符。

 けどウソは続いてる。リーダーはウチの素性を知らない。

 だから最初に演じた『なんの変哲もないプレイヤー』という溝が、日に日に深くなって怖い。


 きっとウチの秘密を知ったら、もっと思い詰めた顔をする。

 今更打ち明けても遅い。もっと早くこの演技を辞めるべきだった。今のおちゃらけた態度が自分でも憎い。


 初めて、ウチの記憶が無くなれば良いのにとさえ思った。

 彼女になる為だけにゲームの世界に生まれたなんて、気分は最悪だ。


***


 ・6月12日。(たぶん)

 ・ウチが生まれて大体9ヶ月?   


 あまりにもウチの秘密が後ろめたいので、いっそ嫌いなった方がいいのかも。

 なんて考えてたら、変な二人とあった。勘違いで殴りかかったので凄い土下座した。

 名前をベアルと沙多と言い、理由は分からないが親近感が湧いた。なんか名前も似てる気がするし。


 何より驚いたのは出自を話してしまった事。

 半ば強制的みたいな感じもあったが、それでも謎の安心感に甘えちゃった。

 そしてサっちゃんはウチが彼女と聞いて、凄い食いついた。

 試しに好きな所を聞かれたが、自分でも驚くくらいスラスラ出てきた。多分あと一時間は語れる。


 嫌いになろうと思ったくせに、このお喋りのせいか、もしくはおかげか、それすら怖くなった。 

 あまりにも意思が弱いですウチ。もっと人生経験積みたい。


 なので二人と別れて独りになった夜、花占いでもしてみようと千切っていた。

 確か貰った記憶だと花弁の数だけ、好きと嫌いを交互に繰り返したはず。


 え、これであってる?偶数だったら嫌いが確定しない?

 

 待ってこの花ダメだ嫌いになっちゃうッ。

 数え間違いだったりしない!?

――あぁ待ってッ好■好■■き好■[*荒く塗りつぶされた筆跡]



 …すごい今更だけどこの日記、誰にも見せられないや。

 秘密が盛り沢山だし、何より恥ずかしすぎる。一生墓まで持ってく。

 

***


 ・6月13日。(たぶん)

 ・ウチが生まれて大体9ヶ月?   


 今日は最悪な事と最高な事があった。

 最悪なのは秘密がバレた事。本当にウチの人生終わったと思った。

 このせいでみんながバラバラになれば、もう日記をつける意味が無くなる。

 どうせ独りなら、ウチの記憶が消えようが誰にも関係ないから。

 

――けどこの日記は、もう少し続ける必要が出来た。

 

 それが今日、人生で一番の最高な事だ。



[*日記はここで終わっている]


日記での語りをどうしてもやりたk以下略。次回以降は普通に三人称視点です。

ようやく色恋沙汰から解放されました、もう二度とあってたまるか。


描写にもありますがベルタの年齢は0.9歳ほど。

肉体年齢は沙多の一つ下くらいなのでともかく、精神年齢が外部の知識に依存してるので、土壇場になるとメンタル幼かったりチグハグだったりする。


こうして考えると菅原お前ロリコn…

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