表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪魔が捧ぐオンライン  作者: ヒノキ
二章.熱と喝采編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/59

8.悪魔に倣うは熱と喝采【前編】

誤字脱字はお知らせください。泣いて喜びます。


「ねえ!ねえってばリーダー!なんで突っ込むの!?」


 出来るだけ声を抑えながら、それでも器用に叫ぶベルタは、止まらず走る背中へ問いをぶつける。

 少女には理解不能だった。

――何故、今なのか。

 

 天恵を諦めないにしても、タイミングがおかしい。

 ギルドのメンバーは欠け、不死鳥が何体も出現という不測の事態。

 攻略しようにも、もっといい頃合いなど山ほどある。


 人員も戦力も不安定で準備不足。

 おまけに二人には、致命的なわだかまりが生まれたばかり。

 それでも全てを呑み込んで今、弾かれたようにこの時を選んだ。


「お前は()らんくて知らんかったかもしれんけどな、アイツは一回倒せてる」


 ベルタが胸を貫かれ死亡したその後、悪魔を始めとし、幾度と復活するそれを消滅まで至らしめた。


「でも何も起こらんかった。頭ん中に流れる声も、天恵くれるオーブもや」

 

 過去に菅原は単独でのレアエネミー撃破を経験している。

 その際には、恒星のように淡く輝くオーブが宙に漂っていた。

 更にオーブに触れれば、討伐の功労者へ、思念伝達のように頭の中にメッセージが流れる。

 最後に願いを問われ、実行可能ならそれが天恵として実現する。


 しかし昨日(さくじつ)、それらのイベントは無く敵が消えただけ。


「ならしっかり倒せてないって事や!っても相手は不死鳥モチーフ、なんぼ倒そうが復活してまう」


 象徴するは不死や永遠の命。

 寿命を迎えると自ら火中に入って焼かれ、その灰の中から再生するとされている伝説上の生物だ。


「じゃあ絶対に倒せん敵っちゅうことになる。けど、んなのゲーム的にありえんやろ!」


 言わばメタ読み。ゲームとして成立するバランスを想定した仮説を打ち立てる。


「つまり、読みが正しけりゃアイツらとは別の本体がいる。(にお)うんは頂上、噴火した所や!敵が出払ってる今なら叩けるやろッ!」


 無論これに根拠などない。強いて言うならば、『ルシフェル・オンライン』にて培われた感覚のみ。


「答えになってないよ!今じゃなくてもいいじゃんッ」


 確かに勝機はあるかもしれない。

 だが勝機(それ)だけの話だ。今、行動する動機ではない。

 さらに言えば一度仕切り直し、メンバーを揃え、不死鳥を一体だけ出現させた状態で試みた方が遥かに安全だ。


「いや今や、今しか無理なんやっ」


 菅原は視線を後方、派手に戦闘音を奏でる悪魔と沙多を見やる。

 知り合って僅か数日、だが走る切っ掛けを与えてくれた二人。

 多大な負担を押し付けていることは重々承知で、次にベルタを瞳に映し――


「左やッ!」


 少女を胸に抱いた。

 瞬間、訪れる大地の隆起。

 仲間の技ではなく――原典のエネミー、岩石の蜥蜴によるものだった。 


 鋭利な杭が地面からせり出し、彼を穿つ。

 背中に命中したものの、辛うじて鎧に守られた箇所だ。

 【聖騎士】という肉体強度が上がる(ジョブ)の補正も相まって、軽傷。

 ましてや彼の手で包まれたベルタは反撃の隙すらあった。

 助言を元に、素早くエネミーを片手の枠に収め、消し去る。

 

 しかし衝撃は残った。突き飛ばされ、ゴロゴロと転がる二人は小さな窪みに落下。砂塵が舞い散る。

 気も緩めず、菅原は眼前の少女を確認。胸の中で縮まるベルタは、傷一つ無い。


「ええか!?このゲーム、レアエネミーの価値は分かっとるやろ!?」 

「ぅちょっ!近い近い!?」

「せや、近いんや!天恵を得るチャンスはオレらがいっちゃん近い!」

「そういう意味じゃなくッ!」


 もはや顔と顔が接触しそうな距離で話の続きをなぞる。

 対してベルタは気が気ではない。見つめられ、しどろもどろに。

 ついでに菅原は"近い"の意味を履き違えている。


「けどそれが大噴火して、今日は山すら派手に割れた。他のプレイヤーがこれを放置すると思うかッ?『絶対何かある』、そう思って火山(ここ)来るに決まっとる!」


 大きな環境変化に、破壊された地形。

 これを目にしたプレイヤーは何を想像するかは明白だ。


「余程おめでたい奴じゃなきゃ、レアエネミーが居るって気付く!!プレイヤーが血眼になって探すくらいや、妨害やPK(プレイヤーキル)も出てくるッ。現実(リアル)まで暴力沙汰になった例もな!オレらのチャンスは無いに等しくなんねん!」


 彼らのギルドは所謂ガチ勢ではない。仲間との交流を優先し、ゲームを楽しみ、ついでに僅かな小銭でも稼げれば万々歳。そんなスタンスだ。

 天恵を求めて止まない狂乱者と競れば、後塵を拝する。


 故に時間との勝負。他所の介入を許す前に、自分たちでケリを付けたいと言う。


――己の成すべき事象とは、()のそれとは相反して然るべきであろう。

――みんな中途半端なんて許さない。ちゃんと最後までやれって言う気がする。


 思い出すのは二人の言葉。

 今まさに、彼はその意志に従い本懐を遂げようとしている。


「でも元は…ウチの、ウチだけの我儘なんだよ…?」


 しかしベルタは、悪魔や沙多のように割り切れなかった。

 どれだけ頑張ろうと、必ずどこかに迷惑はかかる。

 そして誰かの傷付いた顔を見れば、彼女は立ち止まってしまう。


()()()()()があったのに…どうして何も言わないの?どうしてここまでしてくれるの…?」


 それでも目の前の彼は――成功したとしても己に得など無い決死行を、少女以上に願っていた。

 今までの嘘を知ったとしても、何も言わず少女の傍で身を捧げていた。

 

「あのなベルタ…これは――」

「リーダーは辛辣そうでお人好しだからねっ、どうせ気にしてないとか言っちゃうんでしょッ」 

 

 菅原の胸にうずくまるベルタ。

 彼はそんな少女に両手を頬に優しく添え、向き合い――力いっぱい揉みしだいた。


()()()()()!そんだけや!」

「もぎゃ~ッッッ!!」


 ムニムニと頬が縦横無尽に駆け巡ること数秒、ようやくその両手から解放。


「オレがお人好しやから気にせんて?気にするわボケ!むしろ特別重いっての」

「は、はい…っ?」

「あと例の悪魔(あんちゃん)がシンプルに怖いっ。立ち止まってたら何されっか分からんやろ!」

「ちょっとッ!そこは言うセリフ違うでしょ!せっかく良さげなムードだったのにッ」

「知らん知らん!怖いもんは怖いわ!ほら、行くで」

「ヤダッ、やり直し!やり直し!」


 立ち上がった菅原は、半ば無理やりベルタの手を取った。


また尺微妙なので話を二分割します。続きは近いうちに


もしラブコメ描写上手だったら深堀りした気がするけど、作者がギブアップしたので退場です。死ぬかもしれん場面で何イチャついとんねん。


沙多もベアルも出番が全くないオンライン

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ