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悪魔が捧ぐオンライン  作者: ヒノキ
二章.熱と喝采編

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3.少女が隠すは熱と喝采【前編】

誤字脱字はお知らせください。泣いて喜びます。


 悪魔は言った、少女――ベルタはこの世界から離れられないと。

 普通に考えれば、ゲームにハマっているという意だとか、今は中断できない事情がある等の理由になるだろう。


「どゆこと?普通にログアウトすりゃいいだけじゃないの?」


 しかし眼前のベルタが作る表情は、どれにも当て嵌まらない。

 それらの次元を超えた想いがあるように、儚く笑っていた。


「妹君よ、『ろぐあうと』なるものは異界より己が世へ帰還する術を指すのであろう?」

「そそ、言い方がなんか神々しいけど、まあそんな感じ」

「ならば必要あるまい。『げぇむ(ここ)』が小娘の世界である故に」


 沙多は理解が及ばず首を傾げる。

 まるでその物言い、その在り方は、彼女が『ルシフェル・オンライン』にしか存在しないようで――


「――そうだよ、ウチはこの世界の住民。()の世界には居ないし、出られない」


 あっけらかんとベルタは肯定する。

 予想外の告白に瞠目する沙多。

 いや、正確には薄々勘付いていた。それでも気付きたくなかった。

 ベルタと会った思い出。それはどこにも存在しないと、消えて遠ざかっていくような感覚に襲われてしまう。


――彼女は本当に存在しないのか?冗談を口にした可能性は?

 

 それら思考は沙多の中で否定される。

 僅かな時間であれど、ベルタと関わり、感情と意思に触れた。

 あれが血も涙も通っていない偽りであると沙多は断じたくない。

 

 しかし彼女を信じるならば、ゲームの中だけに人が存在するという、極めて異質な状況になるわけで――


「ほら、この世界には天恵ってあるでしょ?それで色んな願いを叶えた人が沢山いる」


 言葉を失っている沙多へ、ベルタは諭すように語り掛ける。


「お金いっぱい貰った人だったり、言語がペラペラになった人だったり」

「フム、吾も妹君より似た言葉を耳にしたな」


 同じく『ルシフェル・オンライン』に初めてログインした悪魔へ、沙多は道すがら説明していた。

 人探しに天恵というシステムを利用するという旨。その際に願いの具現化という曖昧な根拠が保証された実例を。


「で、なんとウチのリーダーもレアエネミー倒して天恵貰ったことあるんだよね」

「――あ、え…ガチ?じゃあまさかッ…!」


 そこまで聞いて、一つの憶測が脳裏を過った。

 呼び起されるのは、沙多自身が放った言葉。


――『彼女が欲しい』って願いも叶ったらしいよ!?…最後のは怪しめだけど

 

「そうッ、『彼女が欲しい』って願って、生まれたのがウチですっ!」

「うっっそぉ~ッッ…!AIとか人工知能ってやつ?」

「いやいや、ウチはれっきとした人間であると宣言するよ?根拠ないけど」


 あんぐりと開いた口が塞がらないまま、次々に投じられる情報を沙多は呑み込めない。まるで自分の証明は、本人の意思一つだけで片付くように、ベルタは自身を確信している。

 

 ならば、機械やプログラムなどからは作られていない純粋な人間が、この世界に存在しているという事実が残る。

 それは天恵が――ひいては『ルシフェル・オンライン』が、一人の命など容易く創造できることを意味する。


「えっ天恵こわッ。ってかスガはそんな願いを天恵でわざわざ使ったん?普通に頑張れし」

「ほんとは『オレと恋人になれそうな人を紹介してくれ』的な願いだったんだけど、どこ探しても存在しないから、"じゃあ新しく作ろう"って解釈になったらしいの」

「世界中探すより、一から作った方が可能性あるって事!?スガかわいそ…」

   

 驚愕から哀れみの感情へと変化する沙多。

 菅原は現実世界のトイレでくしゃみをしていた。 


「あ、でもギルドのみんなにはこれ全部内緒ね?特にウチの菅原(リーダー)には」

「えっ、秘密って…この事話してないん?」


 ベルタは確かに存在し、人間である。そう沙多は信じ、疑わないと決めた。

 しかし文字通り住む世界が違う。色々な不都合もあるだろう。

 だと言うのに、彼女は一人、胸に秘めていた。 


「うん。話したらきっと…優しいから気を使っちゃう。今の関係を変えたくないのっ」


 それは全員の友好か、一人への慕情を意味するのか、どちらかは分からない。

 しかし沙多は、彼女の言葉を聞き、それ以上は求めなかった。

 「ウチは夜行性の職業【召喚士(サマナー)】で通してるからよろしくね?」という辻褄合わせに理解を示す。


「…でもさ、アタシらには話しちゃって良さげだったの?」

「う~ん、なんか大丈夫って思えちゃった。なんでだろうね」

 

 相変わらず根拠などなく、フィーリングのみで判断する少女。

 神妙な空気が流れる中、これを沙多はどう受け止めたかは定かではないが――雰囲気が変わった。


「――それで!ルタっちは彼女なんでしょっ、付き合ってるんでしょ!?いつから好きになったんッ?どこにメロついたんッ!?」

「え~それ聞いちゃう?辛辣そうにみえて真面目さが隠しきれてない所と~、いざって時は守ってくれる所かな~!あ、それとね!?――」

「え待って待ってやば、スガはルタっちの事――」


 沙多がログアウトするまでの時間は、乙女心全開のトークで埋め尽くされた。

 当然、興味が一ミリもない悪魔はいつの間にか何処かに行った。


尺が微妙すぎるので分ける。水曜に投稿出来たらいいな。


天恵貰ったプレイヤーはいつか登場させようと思ってたけど、何故スガが最初になった

言葉ペラペラとかのが物語に深く関わりそうやろ。なんで『彼女くれ』の奴が最初に出てくんねん

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