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そうだ、お酒を飲みに行こう!〜お酒大好きアクティブ令嬢と偽り身分の王子様〜  作者: 雪月花


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 それからルーナは久しぶりにマクシミリア家でゆったり過ごした。

 もう少ししたら王宮に帰らなくてはいけない。

 家族もそれが分かっているからか、いつものように甘やかしてくれた。

 

 ママも徐々に元気になって、ルーナとよくお茶をしてくれた。

「小さい時から甘えん坊でよく無茶をするルーナだったのに、いつの間にか王太子妃様になるんだね」

 もうルーナが王太子妃になるのを受け入れられたのか、ママが穏やかに語りかける。


「ママより偉くなってもいつまでもあなたはママの大切な子供よ。辛くなったら帰っておいで」

「ママ……大好き」

 ルーナは久しぶりにママにたくさん抱きついた。


 


 そうやって穏やかな時が過ぎ、王太子一行がマクシミリア家を訪れる日が明日と近づいていた。

 ルーナはリリィを連れてマクシミリア領の城下町を訪れる。

 ルーナが王太子妃になるのは新聞などで帝国内に知れ渡り、城下町の領民たちも知っていた。


「ルーナ姫!おめでとう」

「あの甘えん坊の八姫様が王太子妃様になるなんて! 俺たちにとっても喜ばしいことだ」

「エリオス王子様はカッコいい??」

 たくさんの人がニコニコしながらルーナに話しかけてくれていた。

「みんなありがとう」

 ルーナはふんわりと笑った。


「元気がないね。どうしたんだい?」

 馴染みのカフェでリリィとお茶していると、カフェの定員であるマリーさんが聞いてきてくれた。

 マリーさんはよくルーナの話しを小さいころから聞いてくれていた。

「みんなが祝ってくれるのは嬉しいんだけど、王太子妃としてやっていけるか不安で……」

 ルーナがギュッとグラスを握る。


「何だい、マリッジブルーかい?? ルーナ様なら大丈夫さ! いつも私たちのために頑張ってきただろう。その小さな体でマクシミリア領が豊かになるようにいろいろ考えて行動してくれているのを皆知ってるよ」

 マリーさんは俯いているルーナの頭をワシャワシャなでた。

「そんな優しいお姫様が女王様になって私たちを守ってくれるんだろ? みんな安心さ」

 マリーさんは清々しい笑顔を浮かべた。

 ルーナはその暖かい言葉がとても嬉しくて、少しだけ泣きそうになった。




 馴染みのご飯屋さんの前で、領地の友人たちと会った。

 ルーナが城下町にいると噂が伝わり、集まってくれたのだ。

 せっかくなのでみんなで遅めのランチをとる。

 大人数なので外のテラス席だ。


「ルーナ、おめでとう!」

「王太子妃になるなんてやるなぁ!」

「結婚式はいつ??」

 ここでもみんなが祝福してくれた。

「ありがとう。でも自信ないんだぁ……」

 ルーナは素直に自分の気持ちを打ち明けた。

 

 友人たちはお互いに顔を見合わせる。

「うーん、貴族様のお仕事のこととかよく分からないけど大変なんでしょ? 王様とかになってきたらもっとだよね。ルーナはその人を支えてあげたいな〜とか思わない?」

 最近結婚した友人がルーナにそう質問した。


「……そりゃぁ大変な時は支えてあげたいけど……」

「じゃぁ大丈夫なんじゃない? だって王太子妃って王太子様を御支えするもんでしょ??」

 普通の夫婦とどこが違うのか?というように友人は言った。

 

 ルーナはその質問にストンと腑に落ちた気分だった。

 国の最高責任者のパートナーになるという自分の重責しか目を向けてなかったが、そうか、エリオス様もこの重積をになうのか……と相手を思いやる気持ちが灯った。

 そしてそれを出来れば2人で分けたい気持ちも。


「結婚後の生活の変化に不安になるのも分かるけどねー!!」

 違う友人がルーナに喋りかける。

「でもルーナは卒なく出来てそうだけどな〜」

「そうそう、何でもお酒が〜って話しにもっていって自分のペースに持っていくもんなぁ〜」

 そう言った友人たちは昼間からお酒を注文して飲んでいた。


「もー毎回そうってワケじゃないよー」

 ルーナも怒ったフリをして突っ込む。

 そしてみんなと笑い合う。

 その楽しそうな様子と、王太子妃になったルーナがいるので領民たちがテラス席がある広場に自然と集まり、お祝いと称して半ば宴会みたいな雰囲気になってきた。


「ルーナ様、みなさんに慕われてますねぇ」

 一瞬にして宴会会場になった広場を見て、ずっと隣にいてくれているリリィが驚きの声をあげた。

「……そう? 私がマクシミリア領にいたころはよくなってたけどなぁ」

 ルーナが不思議そうに答える。

 

 その時リリィの視界の中に怪しい人の動きが見えた。

「ルーナ様!!!」

 リリィが怪しい男とルーナの間に入る。

 男はルーナの背後から忍び寄っていた。

「リリィ!!!」

 ルーナは何が起こったのかとリリィの声がした後ろを振り向くと、リリィが黒いローブをきた男にお腹を刺されていた。

「ちっ!失敗したか」

 男はそう呟いて素早く身を(ひるがえ)し去っていこうとする。

 

 ルーナの方に倒れ込んできたリリィを抱き止めながら、ルーナは思わず古代語を紡いだ。

 リリィは倒れ込みながらも一瞬だけ男の周りに鎖のような光が見えたような気がした。


「誰かお医者様を呼んできて!」

 ルーナはリリィの刺された横腹に両方の手のひらを向けながら叫んだ。

 意識はあるのかリリィが眉を寄せて唸っている。

 

 ルーナは回復魔法は使えない……人体の構造や医学を学べば作り出せるかもしれないが、倫理に反することはしたくなかった。

 だからせめて血がこれ以上流れないように止血の容量で圧をかけていた。


 街医者が飛んできてくれて治療を任せた時に誰かがルーナを呼ぶ声がした。

「ルーナ!」

 エリオス様が王家の馬車から降りてきた。

 リリィの状況を見ていち早く判断し、緊急事態の時のために引き連れていた王宮医師に支持を出す。


「エリオス様、リリィが!」

 しゃがみこんでリリィの治療にあたっていたルーナが半泣きになりながらエリオスの方を見上げる。

「……何とか生きて……ますよぉ」

 治療中のリリィが弱々しい声を出した。

 それを聞いてルーナもエリオス様も安堵する。


「ルーナはケガはない?」

 エリオス王子はルーナの隣にひざまづいてしゃがみ込み無事を確認するようにフンワリ抱きしめた。

「リリィが守ってくれたんで無いです」

 思わずルーナも抱きしめかえす。

 

 周りにいる領民たちからわぁ!!っと拍手喝采が起こった。


 緊迫した状況だが、一瞬の出来事過ぎて何が何だか分かってない領民からしたら、ただ単に王太子が王太子妃を迎えに来て抱きしめたようにしか見えなかったからだ。


 拍手の中、成り行きで抱き合ってしまってるルーナはいつかのようにエリオス様の腕の中で照れている顔をうずめて隠した。


 そして

 ーーやっぱり好きだなーー

 と改めて思った。


 

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