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アンジュお姉様との話し合いのあと、お姉様はパパたち家族に報告するために部屋を去っていった。
残されたリリィと話しをする。
「私はぁ王族の影なんですぅ。今回はルーナ王太子妃様の安全を守るために側について参りましたぁ」
リリィはルーナと一緒にそっと荷馬車に乗り込み、マクシミリア領まで着いてきてくれたのだ。
「……すごいね。私、魔法を使ってしばらく消えてたつもりなのに……」
「ルーナ様が街で1人で飲んだ後、あの魔法でよく撒かれていましたが、だんだんと目で追えるようになりましたぁ!」
リリィは誇らしげに話す。
さすがは王族の影。
リリィはマクシミリア領に到着したあと、家族には理由を説明したそうでルーナの側にいることをみんな了承しているらしい。
「こんな遠くまでありがとう……」
ルーナは弱々しく微笑んだ。
リリィはルーナのベットのそばに椅子を持ってきて腰掛ける。
「ルーナ様……王太子妃になってるなんて、全く思って無かったんですねぇ」
逆にすごいとか何とかリリィのつぶやきが聞こえた。
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次の日、小さな家族会議が行われた。
フェニスお兄様、ファーレお兄様、アンジュお姉様、それにお父様だ。もちろん当事者のルーナもいる。
お母様は昨日、王家からの正式な婚約に対しての書状が届いてから体調が優れなくて休んでいる。
驚きすぎたらしい。
「まったく、学園を無事に卒業できたと思ったら、最後の最後でやらかしたな」
フェニスお兄様は深くため息をついた。
ルーナが勝手に王宮を抜けて帰ってきてしまったのことに少し怒っているのだ。
王家からしたらマクシミリア家が勝手に王族の一員となったルーナを連れさらったと思われても仕方ない。
フェニスお兄様はルーナたちを荷馬車でみつけた直後に謝罪をこめた報告書をエリオス王子宛に送っていた。
マクシミリア家で保護しています、と。
「でもルーナは知らなかったんです。聞くとカンデラアカデミーのルーナの学年は元々王太子妃候補を集めている噂もあったようですね。しかもルーナは推薦状で編入している。候補者の上位になる可能性は高かったじゃないですか。なぜ説明してあげて無かったんですか?」
いろいろ話しを聞いてくれたアンジュお姉様がルーナの代わりにお父様に聞いてくれた。
「……まさか田舎の貴族の8番目の娘が選ばれるとは思って無かったんだ」
お父様が力無く答える。
周りの家族も父の意見には同意できる部分もあるので黙り込む。
「……ちなみにパパだって動転しているんだよ」
パパが俯きながら答えた。
「知らなかったとはいえ、ここまで事が大きくなってしまったんだ。それに王命だ。断ることは出来ない。先程、5日後には改めて挨拶に行くとエリオス殿下から手紙が届いた。ルーナはそれまでに覚悟を決めなさい」
フェニスお兄様はそうルーナに言い切ると忙しいのか会議室を出て行った。
パパはママの様子を心配して見に行った。
王太子様がそのうち来るって聞いてもママ大丈夫かな……
部屋にはファーレお兄様とアンジュお姉様が残った。
「テオ様がエリオス王子だったんだね」
ルーナから話しを聞いたファーレお兄様は会った当時を思い出して納得していた。
「伯爵ではなくもっと高貴な方だと感じてはいたが、王太子様だったとは……」
ファーレお兄様がそっと呟く。
「ルーナは、エリオス王子のこと好きなんでしょ? せっかく選んでもらったんだから、王太子妃になるのは不安だろうけど頑張っちゃいなよ」
アンジュお姉様が沈んでいるルーナの背中をポンポンとたたき励ました。
「……私に上手にできるかなぁ??」
甘えん坊の八姫がアンジュお姉様を潤んだ目で見つめる。
ファーレお兄様が優しく語りかけた。
「上手に出来なくてもいいんじゃない。エリオス王子はルーナを必要としてくれているんだよ。この前マクシミリア領の収穫祭に遊びに来てくれた時に、僕にだけルーナとの結婚を考えてるって打ち明けてくれたんだ。普段のルーナを見て選んでくれたんだ。王太子妃に向いてるからって選ばれたんじゃないんだよ」
ファーレお兄様の言葉がルーナの不安な心にあったかく広がっていく。
「……そうだね。選んでくれたことはとっても嬉しい」
ルーナは帰ってきてから1番元気な笑顔を浮かべた。




