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※王子視点から
少し長い休暇が終わり、学園が始まった。
リリィからの報告書があれから途切れた。
ルーナたちはまだ帰ってこない。
行きの時みたいに、船に乗っている間はリリィからの報告が途切れると考えて、今船で帰ってきてるとしたらそろそろ帰ってくるんだけど。
テオはぼんやりそんなことを考えていた。
朝の鍛錬が終わった後、居ないって分かっているけど、ルーナといつも会っていたベンチに座って遠くを見ていた。
もしルーナがもう戻ってこなかったら……
「…………」
どうしても考えてしまう結末に、頭を軽く振って思考から追い出そうとする。
居なくなってから気付いた。
こんなに大切な存在になっているなんて。
「あ、いたいた! テオー!」
遠くからルーナの声がした。
声がした方を見ると、旅行に行ってたからか、綺麗に着飾ったルーナがテオの方に向かって歩いていた。
ルーナはニヘラッと笑って手を振っている。
手には何やら紙袋を持って。
「……っ!」
テオは思わずベンチから立ち上がり、ルーナの方に駆け出した。
「実はポーネ国に旅行に行ってて……って、わぶっ!!」
ルーナは駆けてくるテオにその勢いのまま抱きしめられた。
「?? ……ただいまー。寂しかった的なぁ??」
ルーナも柔らかく抱きしめ返した。
彼女はえらく酔っていた。
学園内なのに敬語じゃなくなっていることも、酔ってる証拠だった。
「さっき船で帰ってきてね、寮の部屋に荷物置いてぇ、この時間テオここかなーって思って来たら、居たぁ」
ルーナは楽しそうにケラケラ笑った。
「お土産渡そうと思ってぇ」
そう言ってテオからそっと離れて、持っていた紙袋を差し出してきた。
「サイコーに美味しいライスワインだよ!! ポーネ国に言ったのも、工房を見学させてもらうためだったのぉ」
「……ありがとう。今度一緒に飲もうか」
テオがそう言うと、ルーナが嬉しそうに目を見開いて輝かせた。
「うん!」
それが可愛いすぎたので、テオはまた、むぎゅむぎゅ抱きしめた。
「……?? ごめんごめん、何も言わずに行ったから心配してた?」
駄々っ子を慰めるように、ルーナがテオの背中をポンポン優しくたたく。
「……うん。とっても心配した」
「ごめんね。テスト勉強で忙しくて、旅行直前まで忘れててぇ」
ルーナはまたケラケラ笑った。
「なんで酔ってるの?」
テオがルーナの頭に、自分の頬をくっつけたまま喋った。
「船がなかなか着かないから我慢出来なくなってぇ……ソイルお兄様と晩酌してたら、朝になってて到着してたぁ」
そう言うとルーナがテオから少し離れ、手で隠しながら大きなあくびをした。
「……うぅ、時差で眠いー」
それは時差じゃなく、朝まで飲んでたからじゃ……
テオはちょっと怪訝な目で見つめた。
「寮まで送ってくよ」
そしてルーナの手を握って歩き出した。
「ありがとー」
「今日は学園休み?」
「うん。さすがにちょっとしんどいー」
そうして、テオとルーナは寮の入り口でバイバイして別れた。
※※ーーーールーナ視点
あれは何だったんだろう?
ルーナは寮の部屋の中に入ると、両手で顔をおおいながら思わずしゃがみ込んだ。
ドキドキして顔が真っ赤だ。
おかえりのハグだよね。
…………
思考がグルグルしだしたが、圧倒的な眠さには勝てなかった。
「……シャワー浴びて寝よ」
ルーナはモソモソ動き出した。
※※ーーーー王子視点
「リリィちゃんも戻りましたよぉ」
カンデラアカデミーのとある一室で、テオが待ち構えていると、リリィがやっぱり戻ってきた。
「何、あの報告書?」
テオがピリピリモードで言う。
「えー、まず部下に労いの言葉は無いんですかぁ」
確かにリリィは基本有能だから、今回の旅行の動きをいち早く察知し、判断して動いてくれたのには感謝している。
そうじゃないと、ルーナがどこかに行ったという情報しかなく、数日間とても心配したことだろう。
「ご苦労様」
テオは不貞腐れながら言った。
「では、報告書の続きをしましょぉ」
執務机の椅子に座っているテオの前まで移動したリリィが、立ったまま報告し出した。
「ライト様にプロポーズされた後からですねぇ。その日の夕食にはライト様は用事で参加されず、3人で楽しく飲んでいましたぁ。そして次の日には、ライト様含めジェムスパーク領のお世話になった方々に見送られながら、船に乗って帰路につきましたぁ」
そして「おしまい〜」と付け加えた。
「報告書は全部本当のこと?」
「はいぃ。私の感想以外は全て起こったことですぅ」
「…………」
「良かったですねぇ、ルーナ様戻ってきてぇ。ルーナ様は明るくって親しみやすく、どこに行ってもモテモテですよぉ。男性からのアプローチが多いからか、社交辞令と区別がつかなくなっており、ルーナ様は気付いてないですねぇ。テオ様、ルーナ様にはハッキリ言わないと行動では伝わらないですよぉ」
「……分かってる」
テオは不貞腐れながら顔をプイとそむけた。
「でも調べたら、ライトって奴は妻帯者じゃないか」
テオが頬杖をつきながらリリィを睨んだ。
「はい。ジェムスパーク領は一夫多妻制らしいですねぇ」
リリィは平気な顔をして返事をした。
「まぁおそらく、それを理由にルーナ様はあっさり断ったんだと思いますよぉ。でもテオ様、今回の件で気付いたんじゃないですかぁ」
「……何を?」
「思わず抱きしめたいほど好きだってぇ」
おそらく、先程のルーナとのやり取りを見ていたリリィは、ニヤニヤ笑った。




