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 ルーナ・マクシミリア

 それが今の私の名前だった。


 王都からだいぶ離れた田舎と言っていい場所に、私の住んでいるマクシミリア領はあった。

 そこは温暖な地域で葡萄栽培が盛んであり、ワインの生産が国1番だった。


 幼い私は、大人が目を離したスキにワインをよく飲もうとした。

 〝まったく困った子だよ〟と両親に、事あるごとに笑いながら言われて育った。

 

 ーーだって、前世からのお酒好きなんだものーー


 

 私はマクシミリア家の八女として生まれた。

 銀色の髪と緑色の瞳。

 マクシミリア領付近では緑色の瞳の人は比較的多い。


 私の瞳の緑は、兄姉の中で1番薄かった。

 みんな深みのある綺麗な緑なのだが、私だけ薄い緑茶のような色だ。

 それに銀髪なので、全体的に色が薄い印象を受ける。

 おかげで金髪や茶髪のいる兄姉に混じると、地味な感じだった。

 

 けれど、前世が黒目黒髪だった私としては、特にコンプレックスにならず、すくすく成長した。

 末っ子だったし、前世の記憶がうっすらだけあった私は、親が怒らない限界までわがままを言うすべがあった。

 兄姉も多いので、甘えに甘えまくった。

 

 ーー幼いルーナの本能のまま。

 

 その頃の私は、マクシミリア領の領民たちに「甘えん坊の八姫」と呼ばれていた。

 そのためか、町に遊びに行くと、みんなとっても優しい。

 私がワインがとても好きなことを知っているので、代わりに葡萄ジュースをよく振る舞ってくれた。

 

 …………

 ワインが飲みたいんだけどなぁ。




 前世の私は日本人の一般的な女性で、お酒とご飯をこよなく愛する人だった。

 美味しいものを食べてる時って幸せだよね。


 今世でも、子供がお酒を飲めないのは変わらない。

 お酒が飲めない子供の私は、美味しい食べ物を食べるのに全力を使った。


 マクシミリア領は温暖な気候のためか、食材はとても豊富。

 家でシェフが作ってくれる料理も、町の庶民的な料理も、どれもとっても美味しかった。



**===========**


「どうにかこの水をお酒に出来ないかしら?」

 6歳の私は、コップに入った水を自身の目の高さに(かか)げながら言った。


「それはちょっと無理なんじゃない?」

 9歳年上の4番目の子供、ファーレお兄様が呆れながら言った。


 6歳になった私は、お酒が飲めないこと以外は何不自由無く成長し、今度はこの世界特有の魔法に興味を持った。

 この世界では、みんながみんな魔法を使えるのではなく、魔法研究者や代々の血筋の人が使える感じだった。

 

 ちょうどファーレお兄様は、魔法を研究する道に進みたいらしく、成人する前からずっとずっと勉強している。

 その研究室兼ファーレお兄様の家に、たまにお邪魔するのが最近の私のお気に入りだ。


 ファーレ兄さんは、結婚して自分達の家を建て、マクシミリア領にある魔法研究室で働いている。

 マクシミリア家は長男が継ぐことが決まっており、長女は他の貴族へ嫁いでいった。

 次男は長男の補佐として領地経営に携わっていた。 

 

 残る5人の子供たちは、市民として生活するのが当たり前で、自由気ままに生きる。

 子沢山だし、田舎の領地だからね。


 たまに貴族に見初められたり、親戚に子供がおらず養子として貴族に残ることもあるらしいけど、私は市民として暮らしたいのでそっち路線は狙わないかなぁ。


 とりあえず、独り立ちの時期はまだまだ先なので、私は魔法の勉強に(いそ)しみたい。

 ファーレお兄様のお家に頻繁に遊びに行く訳にもいかないので、自分の家の古代語で書かれた魔法書を読んで勉強したりもしていた。

 

 どうにか物質変化を極めて、お酒を作り出したいんだけど……

 この世界では16歳からお酒が飲める。

 前世とは少し違った年の数え方のようだ。

 

 あと10年……待ちきれない!


 

 

 

 

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