呼び出し 後編
私はつい疑問に思ってしまった。
だって私はこんなことしか言われたことが無かったから。
『貴方、なんなんですか?自分が正しいと思って?優位性を保とうとして?未来ある私たちにそんなことを言うんですか。』
そんなことを言ってきた男性もいた。
その言葉に私は耳を傾けなかった。
『この物語はっ、ぐすっ、私がたくさんの時間をかけて、えぐっ、沢山考えて書いてきた唯一無二の話なんですっ。それを...貴方は、あなたはっ。』
ああ、そんなことを言った人もいた。
結局私は我が身が可愛かっただけなんだよね。
もう、嫌だな。
「私、もういいです。前世だけで十分でした。
だから...、もう自分が情けない。ありがとうございました。」
パンっ
一瞬何が起きたかわかっていなかった。
数秒後、アルノアが私の頬を平手打ちしたことがわかった。震える手で頬を触りながらアルノアの方を見上げると少し怒ったような顔をしていた。
「貴方はいつまでそうして蹲っている気ですか?
みっともない。
私は言いましたよね?
貴方には役目がある、と。
だから、そう簡単に諦めないでください。」
アルノアは声を震わせながらそう呟いた。
そうじゃない、私はそんなことを言われて良い人間では無い。
だって、未来ある漫画家達を追い詰めたのは他でもない私だ。
きっと私はそんな顔をしていたのだろう。
「貴方は確かに
沢山の物語を切り捨てて来たかもしれない。
多くの人に辛く恨めしい思いをさせてきたかもしれない。けれど、貴方に沢山のことを指摘されて試行錯誤して、変わろう、と思って漫画家になれた人もいたのではないですか?
貴方は周りが思っているほど冷酷ではない。私の目にはそう見えますが。」
ああ、そうだ。あの女性、あの人は努力を忘れず編集社に通ってくれた。私がどんなに酷いことを言ってもついてきてくれた。私を『先輩』と呼び頑張り続けていた。
『未熟なのは私の頭です。先輩ではないです。よーーし、頑張るぞぉぉぉぉ!!』
あの子は立派に漫画家になって行ったなぁ。
『先輩、2年間、ありがとうございました。』
そんなことを言い、去っていった。
「そんなに泣かないでください。先輩。」
そんな声が聞こえた気がした。
気のせいだろうな、と思っていても頭の中にその声はこだまし続けた。
「ほら、いるじゃないですか。
貴方の立派な教え子が。
貴方は顔に出やすすぎるんです。」
アルノアが声を掛けてくれた。
「ありがとう。」
私がそう呟くと空気が一変してアルノアが口を開いた。
「では、貴方の役目について説明します。
あなたには物語の改変を行って頂きます。」
ものがたりのかいへん?
「どういう事ですか?」
はぁ。
またアルノアがため息をついた。
この人はため息しかつけないのだろうか。
「貴方は前世でたくさんの作品のダメ出しをしてきた。ならば改善の余地があるということ。その改善したあとの作品にして頂きたいんです。」
正直めんどかったけど確かにやっちゃったのは私だし仕方なしとしても、これだけは質問しておきたかった。
「なぜ私にその役目を?」
「考えたら分かることです。貴方は本来漫画家になるべき人たちの恨みによってここに来たと私は思っています。ならばそれを解くには作品を良くする以外方法はありません。頑張ってください。応援しています。あ、そうそう、その世界に行く前に特別に作者と作品名、ジャンルを教えてあげましょう。
次回の世界は、
作者:本宮仁成
作品名:あの世界の向こう側に
ジャンル:恋愛
ですよ。頑張ってください。
では。行ってらっしゃーい。」
そうアルノアが言うと私の足元に魔法陣が現れ、
私は世界に飛ばされた。
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「ああ、行っちゃいましたね。貴方の苦労は耐えないと思いますよ。編集者さん。あ、神名を名乗り忘れていた。次きた時に言わなくては。」
今回は長くなってしまいました。
誤字脱字報告お願いします。