Episode2
1964 7/3 AM5:16
「ここまで高いところに立った人間は少ないだろうな。」
ジャックが落ち着いた声で言った。
当たり前だ。英国製の最新《1963’s》軍事飛行機が高度40,000ftを時速340mを上下するぐらいで飛んでいる。
「宇宙飛行士か航空の軍人ぐらいだろう。」
ミリオ少佐が航空指令室から紅茶を片手に言う。
「米国が5年以内には月に人を着陸させると宣言したらしい。ジャック、露西亜とどちらが先に成功させると思う?」
「さーな。空より市街戦の方が得意だ」
「怖いか?」
ジャックが鼻で笑う。時間が来た。
「出動30秒前.....10...3...2...1」
「出動」
身体を前に倒す。自然に落ちてゆく。体が回転する。体制を整える。工作員ってのはすごいものだ。kmに換算して約12kmを滑空しても動揺なんてしない。訓練の賜物だ。
10分後
「かなり近づいてきた。」
「落下傘準備。」
大きな石油の合成樹脂でできた傘が大きく開く。地面が見える。木々が生い茂っている。
「落下には不向きだな。」
傘が気に引っかかる。着地直前に落下傘を外す。
「見事だ」
ミリオ少佐が拍手しながら言う。
「この無線は一旦切る。別回線から再び送信する。ジャック、私の無線の周波数は145.35だ。」
「了解。」
「ザッ」
無線が切れる音がする。無線送信音がした。また、ミリオ少佐だ。
「こちら司令部ミリオだ。」
「こちらジャック。聞こえるか?」
「問題ない。」
無線でお互い聞き取れるか確認した。ミリオ少佐が思い出すように言う。
「そうだ、これからは仮の名前で呼びあうようにする。ジャック、君の名前は│雀《Sparrow》だ。」
「すずめ《スパロウ》...なんでだ?」
「日本に多く生存するイエスズメをイメージした。詳しいことは後々話す。」
「...わかった。」




