表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パペッティア  作者: 武者走走九郎
7/9

007『初めてのベース』

パペッティア    


007『初めてのベース』晋三 





 陸軍特務旅団のベースは首都の南にある。



 ベースは二十年前のヨミのファーストアクトで出来た巨大なクレーターの中に潜むように存在している。


 クレーターの直径は差し渡し三キロほどもあり、所狭しと対空兵器が並んでいる。


 中央にはベースのコアに通じる入り口があり、入り口はカメラの絞りのような構造になっていて、出入りするものの大きさに合わせて変化する。


 直径二十メートルほどに開かれた入り口を、夏子たちを乗せたオスプレイが巣に着地する猛禽類のように下りていく。


 バラバラバラバラバラバラバラバラ!


 絞りの上十メートルぐらいに差しかかると、とたんに爆音が大きくなる。元祖のオスプレイよりもプロペラの効率がいいんだろう、巻き起こした風圧は、あまり横には逃げず真下に圧を掛けている。絞りの周囲の排気ダクトからはオスプレイの爆風がいなされて直上に噴き上がっている。演出というわけじゃないんだろうけど、勇壮な雰囲気がいい。


 発着デッキまでは少しある。


 空港の手荷物検査を縦にしたみたいなところを通過して緑に光る。隔壁通過を知らせるシグナルだろう、それが三つ光って発着デッキ。


 ガクン ガチャン


 着地すると同時にギアがロックされ、前方にキャリーされる。キャリーされる間にプロペラは急速に回転速度を落とし、ハンガーが口を開けるころには風車ぐらいに落ち着いて停止。


 ブーーーー


 油圧シリンダーが唸ってハッチが開く。ベテランの添乗員みたいに開き切っていないハッチを飛び出るみなみ大尉。


 デッキボスの端末にチェックを入れ、ボスがOKサイン、それを受けてみなみ大尉がノルマンディー上陸の隊長が部下をせかすように腕を回して夏子を呼ぶ。


 スターウォーズの基地のように思えてキョロキョロする夏子。


「ウッヒョオオオオオ……」


 遠慮なく感嘆の声をあげる。ちょっと恥ずかしい。


 こういう、遠慮のない反射が良くも悪くも夏子の個性だ。どっちかっていうと、生前の俺は、妹のそういうところが苦手だったが、いまの俺には好ましく思える。過去帳を住み家として二年目、少しはホトケさんらしくなってきたか。


「さ、ここからはリフトよ。三回乗り換えるから、迷子にならないでね」


 みなみ大尉はテーマパークのベテランスタッフのようにまりあをエスコートしていく。




「大尉、またお腹が空いたんですか?」




 二つ目のリフトに向かう途中、カーネルサンダースの孫みたいな曹長に声をかけられた。


「え、CICに行くとこだけど?」


「そっちは士官食堂ですよ。CICはリフトを下りて三番通路を右です」


「わ、分かってるわよ」


 見かけの割には抜けているところがあるようだ。


「こちらは主計科の徳川曹長、ベース内での日常生活は彼が面倒見てくれるわ。こちら舵司令の娘さん、いろいろ面倒見てもらうことになるから、まず徳川君のところに連れて来たんじゃない(^_^;)」


 強引な強がりに、夏子も徳川曹長も吹き出しかける。


「えと、舵夏子です。お世話になります」


「こちらこそよろしく。司令からも話があるだろうけど、ここでは君は少尉待遇だ。一応士官だからベース内の大概のところには行けるよ。当面必要なものは後で届ける。ベースの詳しいことは、その時にレクチャーさせてもらうよ、みなみ大尉に任せたら日が暮れそうだ」


「ちょっとねえ!」


「はい、回れ右して二つ目を左、二番のリフトに乗って……自分が案内しましょうか?」


「大丈夫、ここへは君に会わせに来たんだからね!」


「それは恐縮です……じゃ、幸運を祈ります」


 夏子は徳川さんに付いて来てほしかったが、目を三角にしたみなみ大尉には言えなかった。


 曹長の案内が良かったのか、それからは迷うことなくCICに着いた。



「司令、夏子さんを連れてまいりました」



 レーダーやインターフェースを見ていた四人が振り返った。夏子の姿を確認すると三人は任務があるのかでCIC内のパネルやモニターをいくつか確認したあとCICを出て行き、残った老士官も夏子とみなみ大尉に笑顔を残して出ていってしまった。任務じゃなくて人払いかよ。


 で、驚いた。


 え?


 CICは俺たちだけになってしまった。



☆彡 主な登場人物


舵  夏子       高校一年生 自他ともにナッツと呼ぶ。

舵  晋三       夏子の兄

井上 幸子       夏子のバイトともだち

高安みなみ       特務旅団大尉

徳川曹長        主計科の下士官

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ