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26.その結果

上位の王達は、檀上に座り、炎嘉だけが立ち上がったまま、言った。

「ここに、それぞれの宮へと振り分ける、宮が決まった。」と、こちらを見た。「吉賀、塔矢、陸、こちらへ参れ。」

呼ばれた三人は、行かないわけにはいかないので、壇の前まで行って、頭を下げた。

炎嘉は、並んだ三人に、一枚ずつ紙を手渡した。

「そら。主らが傘下とする宮の王の名を書いておる。領地の境界は、下の図面の通り。四カ月後には結界を張るのだぞ。領地を見回り、宮の位置を変えたいと考えたら我らが手を貸してやるゆえ、そうせよ。それから、塔矢、主もな。主の場合は一から建てねばならぬだろうし、早う場所を決めよ。我が宮から軍神を送る。あれらならひと月ほどで建てよるわ。さ、席へ戻って己の新しい傘下の王を集めて、話すが良い。この宴の席で、いろいろ次の話し合いの日程やらを決めて帰って、宮へと呼んで始めるのだ。分からぬことは、問い合わせて参れば良いから。分かったの。」と、父親のように言うと、固唾を飲んで見ている、皆を見た。「ちなみに申す。190の宮を、王の能力と領地の兼ね合いを見て、吉賀10、陸30、塔矢30。まあ、領地を見ればわかるわ。大きいのと小さいのが綺麗に収まるように考えてある。次の会合で皆に新しい境界の絵図を配る。とうことであるから、そのようにな。で、残った120の宮であるが、これらの宮とは離れておるし、点在しておるから、これから近い宮の王で二番目、三番目の序列の王達を精査してから振り分けは決める事にした。ま、決まるまでは我らが引き続き支援を送るゆえ、案じる事は無い。以上よ。」

炎嘉は、言うだけ言うとスッと座った。

どうやら、早く仕事を終えてしまいたかったようだ。

涼弥がハラハラしながら待っていると、三人が書類を手に戻って来た。

「我は誰の傘下になった?」

清が言うのに、陸が言った。

「我ぞ。吉賀は東ではなく南へ長くなったようで。我の領地がやたらと広い。塔矢などもっとぞ。」

涼弥は、チラと絵図を見たが、確かに言う通り、やたらと塔矢の領地が大きく、その隣りに広く陸の領地があって、吉賀の領地は長めだがそう広くはないようだった。

塔矢が、ため息をついた。

「まずは、知らせねば。」と、書類を手に、言った。「これから呼ぶ者。我の前に参れ。多紀、佐間、吉野…」

塔矢は、サクサクと自分の傘下の名前を呼んでいる。

陸も、慌てて立ち上がって、言った。

「我も。名を呼ばれた者は、こちらへ参れ。」

陸も、すぐに名を呼び始める。

二人の前には、呼ばれた王達がわらわらと集まり始めた。

吉賀は、自分もやらねばと、少し離れて言った。

「我の傘下ぞ。」

そうして、名を読み上げ始める。

そうすると、吉賀の前にも王達が集まり始めた。

いつもは同じ立場だと思っていた王達で、特に仲良くしていたわけではなかったのだが、それがこれから、自分の下で、臣下ではないが、臣下のように従う事になるのだ。

そして、守って行かねばならぬのだと、実感して来た。

ふと見ると、塔矢と陸は、サクサクと説明を進めている。

ここには、那海も居ない。

吉賀は、自分は王なのだからと気を奮い立たせて、多くの王達に向かって発言を始めたのだった。


涼弥は、その情報を持って、宮へと帰った。

最近では、涼夏もしっかりと話を聞いて、一緒に考えてくれるようになった。

驚くべきことに、涼夏のお蔭で宮の中が一気に引き締められて、皆が皆、品よく動くようになって来ていた。

そして、夏奈と真木が居なくなった今、涼夏は宮の仕事を自分が引き受けると言って、あれこれ涼弥に聞いて来た。

涼弥は、なので幾つかの仕事を涼夏に振り分けて、空いた時間を職人たちの作業場訪問に使い、自分もついでにそちらで作業をして戻って来るようなことが、できるようになっていた。

出迎えてくれた涼と涼夏の顔を見てホッとした涼弥は、朱理たち臣下を連れて、本日の会合でのことを、会合の間で話した。

自立を諦めた宮が思った以上に多かったのに、三人は驚いていた。

涼が、言った。

「…それにしても、陸殿と塔矢殿に30ずつとは多いもの。しかも、我らも百年後には同じようにどこかを抱えねばならぬかもしれぬとは。」

涼弥は、頷いてため息をついた。

「その通りよ。一応、無理だろうとは言うたのだが、やってみよと申されて。できぬとは言えぬで、精進するとお答えしたのだがな。」

涼夏は、微笑んだ。

「誠に。ですが、陸様がお教えくださった北の山の事については、調べてみる価値がありそうですわね。金剛石は無理やもしれませぬが、赤玉は出て参るかも。しかも、いろいろな赤がありますでしょう。稀少な薔薇色の物であったら、神世でもかなり価値があるので、欲しがる宮も多いのではありませんか。」

涼が、頷いた。

「恐らくは。あの辺りには昔から水晶は見掛けておったので、掘ってみたら他にも出て参るやもしれませぬ。陸殿は、よう見ていらっしゃるのだな。感心しまする。」

やっぱり陸は、頭が良いのだ。

単に宮が裕福というよりは、倹約しているのに更に上を目指していろいろ策を講じて、こうなっていると考えるのが正解だろうと思われた。

涼夏は、言った。

「お父様は良い友をお持ちでしたわ。陸様にお教え頂くことで、宮の発展は進むでしょう。それに…」と、父が広げている、陸が炎嘉から受け取ったという書のコピーを見た。「…陸様は、間違いなく三番目の第一位か二位にはおなりになる。そうなれば、今懸念しておることも庇ってくださるのではありませぬか。」

言われて、涼弥は書に視線を落とした。

今懸念しているのは、高峰の動向。そして、陸は四ヶ月後にはここに書かれてある30の宮を束ねて、大きな領地を持つ上から三番目の宮になる。

高峰の宮は、今の時点でも三番目の第五位。

「…確かにの。」涼弥は、頷いた。「こうなったら、陸の宮に主が嫁いでくれたら心強いのだが…陸にさりげなく申してみたが、迅は難しい奴だから任せているので聞いておくとだけ、帰って来てな。」

ああ、迅はダメよ。

涼夏は、内心思った。

あんなやりたい放題の姿を見せている迅に、娶ってもらうなど絶対に無理。

大体、今回の支援の件でもその話が出たと迅本人から聞いている。

阻止したと言っていたのだから、よっぽど嫌だったのだろう。

涼夏は、ため息をついた。

「迅殿にも、選ぶ権利がありますでしょう。そういった政治的な縁は受けないのではと思います。もっと利用価値のある宮から娶るんじゃないでしょうか。」

計算高そうだし。

涼弥は、ため息をついた。

「そうだの。あちらからしたら得のない縁かもしれぬ。何しろ陸が、あの歳で二番目の宮から妃を迎えておるのだし…夢のように美しい女神なのだそうだ。陸が言うておった。」

和泉も言ってたなあ。

涼夏は、思った。

そんな女神が側で見ているのに、迅が涼夏を娶るなんてことは、尚更絶対にないだろう。

涼が、言った。

「ところで父上、この形…どうやら最上位の王達は、我らの東にある宮から、この先立ち行かぬ宮が出ると考えての配置でしょうか。」

言われて、涼夏も図に視線を落とすと、確かにこの宮の、東側が綺麗に空く形で三つの宮の領地の境界が描かれている。

つまり、こちらの宮が落ちて来て、この宮の下になるだろうと、考えての配置と言われたらそう見えるからだ。

「…となると、この辺りの森林なども我らの領地になることに。常に不足していた木材の確保が容易になるの。」

ここは岩ばかりに囲まれているので、森林が少ないのだ。

そちらに向けて領地が広がれば、それがなくなることになる。

「木工の職人も、少し育てておく方が良いかもしれませぬな。先を見越して、そちらも己で確保できたら、いちいち等価交換で品を取り寄せなくとも自給自足できるかと。」

「紙も急務ですわ。」涼夏は、言った。「今は確か、陸様の宮で製紙の職人も育ててもらっておるのですわね?」

涼弥は、頷いた。

「ここには製紙の技術を持つ者がおらなんだから、急いで育ててもらっておる。結局原材料が少ないからだったが、確かにいろいろと宮の中だけで調達できるようになりそうぞ。」

涼は、頷いた。

「はい。これは何としても宮の力をつけて、この東の土地をもらわねば。木があるだけで、かなり違って来ますから。」

涼夏は、これは傘下を抱える宮として、何とか回せるように今から準備しておかなければ。

涼夏は、涼弥を見た。

「お父様、それでもし陸様の宮が落ち着いたなら、我の教師にあちらの王妃様がなってくださらないか、お問い合わせ頂けませぬか。一刻も早く宮を円滑に回す方法を教わって、更にお父様には、翠明様からどう治めるのか学んでおく必要があるのでは。」

しかし、涼弥は顔をしかめた。

「まだ自立もしておらぬのに。我から今、翠明殿に教えて欲しいとは言えぬ。陸ら塔矢なら分かるがの。とにかくは涼夏、主の意向はあちらに伝えておこうぞ。確かに宮の中を整えて行かねばならぬしな。」

真木が居たら。

涼夏は、今さらにあの厳しい侍女が恋しくなった。

まだ母がここに居た、涼夏が皆を躾ようと頑張り始めた最初、それは頼りになって、いろいろ好意的に教えてくれたのだ。

真木なら、宮を回す方法も知っていたはず。

祖母からは、涼夏があんな風だったので、最低限の礼儀しか教わっていなかった。

妃の務めとしての宮の業務まで、とても教えられる様子ではなかったのだろう。

…ああ、我がもっと自分というものを分かっていたなら。

涼夏は、後悔した。

それでも、今さらどうしようもない。

ここは、とにかく出来ることからやるしかないのだ。

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