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25.葉月の会合

葉月の会合で、涼弥は宮の立て直しが進んでいるので、このまま継続して自立を目指すと宣言した。

他の下位の宮々の中では、自立は望めないと決めたのは305の中の実に、190の宮々だった。

つまりは、宮の財政を少しでも自分達で賄っていた者達は、その職人を数を増やすことで何とかできそうだと考えたらしいが、嫁がせることで支援を受けられるので全てを他の宮に頼り、職人を全く持っていなかった宮まであったので、そういった宮では、絶対に自立など今からできるはずもなく、潔く他の宮の、傘下に下ることにしたというらしかった。

だが、最上位の宮の王達は、それでもまだ、残った115の宮の中から、百年でそれを成し遂げられない宮が多く出て来ると考えているようだった。

炎嘉が、言った。

「では、これより宮の序列の変更を言い渡す。まず、今この場で序列を剥奪するのは、今名乗り出た190の宮。そして、年明けに只今下位の宮である吉賀の宮と、塔矢の宮、そして陸の宮を上から三番目に引き上げる。涼弥の宮は、今後の百年の動きの中で、財政が安定すればもう一度精査して、上から三番目に引き上げることを考える。吉賀、塔矢、陸はここから四カ月で三番目の宮に相応しい形を作るように。もし、宮の建設なども伴うようであれば、我らが軍神を派遣して補佐する。それに伴う費用も我らが負担する。これから我らで話し合い、どの宮がどの王の傘下に下るのかは追って知らせる。ちなみに自動的に、傘下を抱える事になるので、吉賀、塔矢、陸の宮は三番目の中の一位、二位、三位となる。そして、涼弥の宮も、その時の状況により傘下を抱える事になるので、そうなった時は四位まではこれら四人の宮となると心得よ。ちなみに正確な序列は、詳しく精査してから決める。この際であるから、三番目の宮々の事も、精査することにするゆえ、三番目の宮の王達は、左様心得ておるが良い。」

三番目の29の王達は、顔色を変えた。

そう言えば、二位の中でも序列第一位は、西の島で多くの傘下を抱える、翠明だ。

中に宮が多くなるということは、それだけ力を持つことになるので、自動的に上位に行く事になるらしい。

涼弥は、焦ったような顔で、言った。

「炎嘉殿、我の宮は立て直し始めたとはいえ、恐らく百年ではまだ他の宮を養えるほどの力をつけては居らぬと思うのです。そんな我らが、傘下を抱えるなど無理なのではないでしょうか。」

しかし、炎嘉は言った。

「まだやっておらぬのに、何を言うておるのだ。とにかく、主らはそういうつもりでいろということぞ。何か手が必要なら貸す。我か維心に申せ。何なら、陸のように宮の中をしっかりと回せる妃を探してやっても良いぞ。」

涼弥は、驚いて首を振った。

「そのような。分かり申した、では出来るだけご期待に沿えるよう、宮へ帰って努力致します。」

炎嘉は、満足げに頷いた。

「それで良い。では、今序列を剥奪された者達は、次の会合から来ぬで良い。そして、我らが後で申し渡す王の指示に従うのだ。それが、己の王となるゆえ、甲冑も全てその宮の物を纏う事になろうが、しかしそれも四カ月後の事。それまでは、準備があるゆえこれまで通りにしておるが良い。他の宮の傘下に入るまでは、臨時で最上位から各宮に物資を支援する。その後は、主らは己の王に支援を受ける事になる。ま、維心が何でも送って参るわ。こやつの蔵が少しでも空いておるのを見た事が無いからの。」

維心は、むっつりと炎嘉を見上げた。

「また我か。まあ190ぐらいなら別に良いが、不公平よの。ならば他の世話は主がせよ。」

炎嘉は、同じようにむっつりとした顔で維心を見た。

「分かっておるわ。だからぞ。主は外で立ち働くのが嫌いであろうが。」

そうして、葉月の会合は終わった。

最上位の宮の王達はそのまま会合の間に居残り、どうやら190の宮の行く末を考えているらしい。

涼弥達は、なので宴の行なわれる、大広間へと向かったのだった。


最上位が並ぶはずの檀上には誰も居らず、この龍の宮の第一皇子である維明がやって来て開式の宣言をしたが、さっさと退出して行った。

今宵の宴は、下位の宮々は全て出席していた。

どうやら、もうこうして龍の宮で宴に出るのも恐らく最後となるので、傘下に下る事になった王達も、居残ったらしかった。

それに、自分達が誰に仕えることになるのか、できるだけ早く知りたいからのようだ。

帰っても宮に書状が送られて来るだろうが、それを待つ間悶々とするのは嫌なので、もうここで待って聞いてしまおうということらしい。

とはいえ、皆の雰囲気は吹っ切れた様子で、そんなに悲壮な様子はなかった。

そして、その中には清の宮もあった。

「どうしたのだ、清。」斉が、言った。「主が名乗り出た時驚いた。後半分ぐらいを何とかすれば、宮が回るのではないのか。涼弥の宮より楽だったはずだぞ。」

清は、苦笑して首を振った。

「いいや、主らには言うておらなんだが、我はしょっちゅう陸に支援をもらっていたのだ。佳織を嫁がせていたからな。それに、財政だけの話ではない。我が宮には、品格を上げるための筋が無い。そもそもが自由にやって来ておって、何とか見様見真似で何とかできるのは我だけぞ。それも、会合などで他の王達の動きを見て学んで身に付けたもの。何が正しくて、何が間違っているのかも分からぬ。そんな様なので、臣下も白旗を上げたのだ。もう、こうなったら他の宮の王の傘下といえども、宮は形として残るのだから、楽になった方が良いのでは、と。もう、陸の傘下のようなものだったしの。」

陸が、渋い顔で言った。

「我が、佳織を返したいと申したからではないのか。」

涼弥が、驚いて陸を見た。

「え、主佳織を返したのか?」

陸は、頷いた。

「炎嘉殿の指示で、旭殿の皇女が我が宮に入ったであろう。その前から、それを知った瞬間から暴れて手が付けられなくなっての。宮の一室に籠めていたが、いよいよ壁に向かってブツブツと何かを呟くような様子になってしもうたので、ならば里へ帰った方が良いのでは、と。」

確かに、新しい妃が居る宮に居るのは酷だろう。

清は、ため息をついて言った。

「佳織の様を見て、これでは駄目だと思うたのよ。主が悪いのではないわ。もう主のとの縁も切れるし、確かにそれで、踏ん切りがついたのは確か。だが、良いのだ。多分吉賀が我の王となるのではないかの。隣りの隣りであるし、我が領地が吉賀の領地になるのではと思う。」

吉賀は、複雑な顔をした。

佐久が言った。

「そういえば、涼弥も妃を返したそうだの。何やら父王が宮へ怒鳴り込んで来たのだとか侍女が言うておったが。」

そんな噂が回っておるのか。

涼弥は、思ってため息をついた。

「そうなのだ。これまでもあったが、此度も同じで。妃がの…少々、我がままであったのだ。だが、我はこれまでのように機嫌を取る余裕が無うてな。宮を何としても立て直そうと必死であったし。そうしたら、父王が怒鳴り込んで参って。連れて帰ると騒ぐゆえ、ならば連れ帰れと。本当は、謝って済むなら謝るかと思うたのだが…涼夏がの。己が嫁ぐから、と申して。あれは、我を守ろうとそう言ったのだ。それで、もうこの際返そうと思うた。もう良いかなと。」

陸が、何度も頷いた。

「そうよ。謝るなど、なぜに王がそんなことで頭を下げねばならぬのよ。ならば我が、いくらでも送ってやるゆえ早う立て直せ。石工は育っておるか?」

涼弥は、そうだった、と頷いた。

「ああ、そうなのだ。主が言う通りにやってみたら、我らは石と相性が良いらしゅうて。早う上達して、この間も見に来られた炎嘉様が、庭に置きたいと言うて、椅子とテーブルのセットを持って帰られた。代わりに結構な量の反物や紙が送られて来て、そんなに価値があるのかと思うたのだ。」

陸は、頷いた。

「だろうと思うた。その土地の神は、その土地と共に発展しておるから、絶対に主の眷族は石と相性が良いとな。それに、あの場所の石は色が色々あって珍しい。我は思うのだが、北の森の向こうの岩山、あの辺りには恐らく、青玉や赤玉、もしかしたら金剛石が眠っておるやもしれぬぞ。あの岩質、我は己の領地の中にもあるのよ。そこからは、そんな石が取れるからの。一度調査してみた方が良い。そうしたら、それを加工したり、原石のままでも龍の宮へ献上したら、かなりの物資と交換してもらえるぞ。そうしたら、自立ももっと早いのではないかの。」

涼弥は、うんうんと聞いている。

塔矢が、それを聞いて感心したように言った。

「陸は博識であるな。この前我の領地へ来た時も、宮を建てるなら一枚板の岩盤があるあちらが良いとか意見を出してくれておったしな。誠にもっと話してみたいと思うわ。」

陸は、微笑んだ。

「主の宮ならいくらでも参るわ。主の方こそ博識ではないか。我が知らぬことを多く知っておって、誠に有意義だと思う。お互い、同じ格の宮になるらしいし、共に励もうぞ。話し合える友が居ると思うと気が楽になる。」

吉賀が、ため息をついた。

「我は…主らのようではないから。我には荷が重いと思うてしもうて。何しろ、我が宮は王妃があまりにも優秀過ぎるのだ。此度の話にしても、特に構える様子もなくて、翠明殿に問い合わせてみよとか申して。つまり、どうやって統治しておるのか、事前に知って置いた方が良いからと。月の宮から西の島の歴史書を取り寄せて、毎日読んでおる。」

また王妃が優秀過ぎてもつらいものか。

それを聞いて、皆は思った。

斉が、顔をしかめた。

「妃が優秀なのは良いとはいえ、己を過ぎると困るやもなあ。」と、陸に小声で言った。「それで、実際のところどうであるのだ?美しいと申しておったが、誠か?」

陸は、それには遠い目をした。

「そうなのだ。それはそれは美しい女神で。まるで夢のような心地で、まだ実感がないほどぞ。全てに淑やかというのはこんな様子かと思うほどに、動きの全てがまるで香るようでな。まるで龍王妃や、翠明殿の妃のような動きで、誠に我で良いのかと旭殿に問うたほどよ。宮も綺麗に回してくれるし、いきなりに宮の中がスッキリと流れるようになった。侍女達も、美しい王妃の動きを真似ようと、あんな風になりたいと憧れるようで、全てを見て真似ようと努力し始めたのだ。我もあれの乳母に頼んで旭殿はどう動いておるのかと教えてもろうたりして、少しでもあれに見合う王であるように、努力するようになった。この着物も…愛羅が、選んで着せてくれたものぞ。」

言われてみたら、今日の着物の重ねはとても上品だ。

髪も何やら綺麗に整えられていて、陸が普段より綺麗に見えた。

塔矢が、言った。

「誠に。良い縁であったようよな。主の身を綺麗に整えてくれるのだろう?それだけ、気が付くということぞ。主には、それぐらいの妃が居った方が良い。良かったことよ。」

陸がそれに頷いていると、檀上に最上位の王達が入って来たのが見えた。

「…決まったか。」

清が、小声でつぶやく。

ざわざわしていた大広間が、一瞬にして静まり返った。

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