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プロポーズ

*本日一度目の更新です。


無事に戻った三人をみんなは涙ぐみながら迎えてくれた。


しかし、アリソンとニックはアランの長ーい説教に耐えなければならなかった。


ニックはアリソンの様子がおかしいと疑っていた。


アリソンを異世界に送った国王が転移の間から出てきた瞬間に、ニックは自分もジンルに転移させろと迫ったらしい。


「俺を起こしてくれれば一緒に行ったのに・・・まったく、二人とも無茶な行動が多すぎる!」


アランは怒りが収まらないようだ。それだけ心配してくれたということだろう。


リズも


「無事に帰って来られたから良かったけど・・・本当にもう・・・心配ばかりかけて」


と号泣した。


何度も二人に謝罪した後、ようやくアリソンとニックは解放された。



***



ノアの報告に基づいて迅速にジンルにある異世界への扉は閉じられた。もう二度と開くことはない。


そして、ランカスター王国の外交政策が大きく転換することが発表された。


外国との交流が増えれば貿易や交流が促進し、経済も活気づくだろう。民衆にとっても大きな刺激になるに違いない。


国王は新しく始祖の女神ジュルングルと彼女の双子の兄であるジャンガウルの記念碑を建てた。


ジンルの隣に設置された石碑は今後多くの人々が訪れる場所になることを祈る。



***



慌ただしい日々が続く中、アリソンとニックは通常の学院生活に戻った。


アリソンはもう銀髪を隠すことなく、マグを肩に載せてニックと並んで登校している。


魔物が居なくなれば銀髪もそれほど特別なものではない、とアリソンは思うのだが、ニックが目を光らせているのにも関わらずアリソンにアプローチする男子生徒は後を断たない。


「まったく・・・油断も隙もあったもんじゃない!」


とニックは憤然としているが、アリソンは昔のような男性に対する恐怖を感じることはなくなった。



(私もそれなりに逞しくなったわよね)


と自分のことが少し誇らしい。



ニックの過保護は相変わらずで、二人で過ごす時間の甘さは加速度的に濃密になっていく。


普通に恋愛が出来る普通の女の子になれたんだと思うとアリソンは感慨深い。


ニックやみんなのおかげだなと感謝の気持ちが膨らんでくる。


強引だったけど還俗することになって良かったと心から思えた。




「・・・無事に異世界から帰って来られて本当に良かった」


ニックがポツリと呟く。


「うん。そうだね。ニックが来てくれたおかげだよ」


「運が良かった。ウィッシングボーンの願いも叶ったし」


ニックが照れくさそうに鼻の頭を掻いた。


「ああ、そういえば・・・ニックの願い事は何だったの?」


「俺はさ、アリーをカッコよく守れますようにってお願いしたんだ!ま、必死過ぎてそんなにカッコよくはなれなかったけどさ」


とニックは晴れやかな笑顔を向ける。


「ニックはすっごくカッコよかった!」


アリソンの言葉を聞いて照れくさそうに頭をガリガリ掻くと、ニックはその場に跪いた。


「ありがとう。アリー。子供の頃、毎日が苦しくて生きるのが辛かった。でも、君に助けられて世界が変わった。君が俺の人生に意味をくれたんだ。君のいない世界では生きていけない。君と一緒に食事をするときは何でも美味しいと感じる。逆にどんなご馳走でも君がいないと美味しく感じない。美しいものを美しいと感じることもできないんだ。君がいるだけで強くなれる。君がいないとどうしたらいいか分からない。君がいないと、君の愛がないと、俺は生きていけない・・情けないけど。だから、ずっと俺の隣に居て欲しい。魔法学院を卒業したら結婚してくれないか?」


アリソンの手を取ってニックはプロポーズした。


答えはもう決まっている。


「はい!喜んで!」

「ホントか!?」


ニックはアリソンを腕の中に抱き込んだ。アリソンはもうニックに触れられて怖いことはない。


(幸せだな・・・)


アリソンはニックの逞しい胸に顔を埋めると、腕を彼の背中に回して強く引き寄せた。



***



後日、アリソンとニックは以前アリソンが暮らしていた修道院を訪れていた。


男性は建物に入れないので、ニックは護衛騎士たちの待機場所で待っている。


アリソンは卒業後も修道院に戻らないことを決めたので、お世話になった人達に挨拶に来たのだが、彼女にはもう一つの目的があった。



実はこの修道院にはアンジェラ・ポートマン、コレット・ウィリアムズ、リリア・テイラーの三人が処罰の一環として生活している。


厳しい戒律で有名な修道院なので清貧な生活を送っているに違いない。


アリソンが面会したアンジェラは化粧っけのない顔に質素な修道服を身に纏っている。


それでも生来の美しい顔立ちが際立ち、学院で見たアンジェラよりも余程魅力的だとアリソンは思った。


「久しぶりね。もうカツラは止めたの?」


アンジェラの表情は以前よりもずっと穏やかに見える。


「うん。魔物もいなくなったし、銀髪でもそんなに特別な訳じゃなくなったから」


「そうなの!?それでもモテそうだけどね。ま、ニックが許さないか」


前世日本人の仲間としてアリソンは勝手に親近感を持っているが、アンジェラも同様なのかもしれない。昔よりも気安くおしゃべりできるようになった。


「それで何があったの?ここは俗世から隔絶しているから噂も全然入ってこないのよ」


と好奇心丸出しのアンジェラにこれまであったことを簡潔に説明する。


「へえ~、なんかすごい展開になっていたのね・・・」


感心しながら「へぇ」を繰り返すアンジェラは腕を組んで何かを考え込んだ。


「それで・・・ノアの髪の毛は突然銀色になったのね?二年生の最終日に?」


「うん。そうらしいけど。不思議よね。どうしてかしら?まさか謎だった隠しルートが解放されたとか・・・まさかね。無理ゲーだし」


と笑うアリソンにアンジェラは首を振った。


「いや、そうだと思う。タイミング的にもそうだわ。二年生まで全く身体的接触がない状態で最低二人以上の攻略キャラの好感度がカンスト・・・不可能だと思っていたけど・・・」


「アンジェラ、それはホント無理ゲーよ。ニックは子供の頃から私を好いていてくれたみたいだから、ニックの好感度はカンストしていたかもしれないけど、もう一人そんな攻略キャラがいたってこと?」


「そうね・・・。うーん。アランは?アランがあんたに恋焦がれていたんじゃない?」


「いや、それはないわ。友情はあると思いたいけど・・・恋愛感情じゃないと思うし、アランの好感度がカンストしてるのはニックに対してだから」


「じゃあ、エイドリアンは?黄色のドミトリーは銀髪の乙女に興味なさそうだったし、あんたのことも知らなかった。可能性としては赤か青の攻略対象ね・・・」


「エイドリアンが私に好意を持っていたっていうのはあり得ないわ。青の攻略対象って誰?そういえば、私覚えてなくて・・・誰だっけ?ってずっと思っていたの」


と言うとアンジェラが『信じられない』という顔をした。


「あんたさぁ、マジで?ずっと教会にこだわってた癖になに言ってんの!?」


「え!?もしかして教会関係者?イケジイとか?ちょっと年上過ぎない?」


アンジェラはぷっと噴き出した。


「ローガンよ!枢機卿のローガンが青の攻略対象だったじゃん!LGBTQのレインボー・キャンペーンが盛んな頃でビアン・ルートが入れられたんだよ!ローガンはすっごい色っぽくてねぇ。スチルが最高に美しかったわ~」


アリソンの表情がカチンと強張る。


「え・・・・・?ローガンさま、が?青の攻略対象?」


前世でオーストラリアに住んでいたアリソンは当然LGBTQのキャンペーンは良く知っているし、LGBTQの友達も多かった。


しかし、まさかローガンが攻略キャラだとは全く予想していなかった。


子供の頃から可愛がってくれたローガンは


「結婚したくないのであれば、ずっと私の傍におればよい」


と何度も言ってくれたし、彼女の好意を強く感じたこともある。


ローガンの美しさに見惚れたことはあったが恋愛対象として考えたことはなかった。


「・・・・もしかしてローガン様の好感度がカンストしていたからって可能性はある?」


恐る恐るアリソンが尋ねるとアンジェラはカラカラと笑った。


「あたしが知るわけないじゃない!でも、ま、もう終わったことだし。今更気にすることないんじゃない?ローガンのところに行って『私のこと好きですか?』なんて聞けっこないしね~」


「・・・それはそうね」


アリソンは深く考えるのを止めた。

*あと二話で完結です。今夜中に投稿する予定です!

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