プロローグ
*前作はちょっと急ぎ過ぎてしまい、多くの反省点が生じました(汗)。今回はじっくり更新していこうと思っています。ストーリーは(頭の中で)完成しているので完結はお約束できますが、不定期更新になると思います。のんびり待っても構わないという読者様向きです(*^-^*)
*男性恐怖症なのに何故R18の乙女ゲームを知っているのか?という疑問には追々事情が分かってきますので、どうか気を長くお待ち頂けると有難いです<m(__)m>
*読んで下さってありがとうございます!
アリソン・ロバーツ男爵令嬢は絶望していた。
彼女には前世の記憶が鮮明に残っている。
前世は日本人。
しかし、前世では諸事情によりオーストラリアの森の中で社会とは隔絶した生活を送っていた。
三十歳の時に事故で死亡。
死後『銀色の伝説:カラー・ソワレ』というR18の乙女ゲームに前世の記憶を持ったまま転生した。
しかもヒロインとして!!!(←重要)
R18ということはつまり、ヒロインは不適切でハレンチなアレコレに巻き込まれることが必須なのである。
彼女は前世で男性恐怖症を発症し、彼氏いない歴=年齢のまま事故死して転生したのだ。
恐怖に慄きながらも彼女は死に物狂いの努力をして十歳で修道院に入ることに成功した。
よしよし、このまま修道女として死ぬまで処女を守り切るぞと安心したのも束の間。
彼女が十七歳の誕生日を迎える頃、突然還俗して魔法学院に通うようにと国王は勅命を出した。
彼女の修道院入りを認めた教会トップである枢機卿も強硬な国王の命令には逆らえない。
平穏な修道院生活が終わることに失望しつつ、アリソンはせめてもと三つの条件を出した。
1.銀髪の乙女であるという素性を隠し、変装して学院に通うこと
2.貞操を守るためのボディガードをつけること
3.学院を卒業したら(=約一年後)再び修道院に戻ること
それらの条件が認められ、アリソンは国王が手配した三人のボディガードと顔を合わせた。
一人はリズ。青い髪の女性騎士。
リズはアリソン幼少期の専属護衛騎士だった。
一人はアラン。白い髪の王太子。
一人はニック。黒い髪の騎士。
アランとニックはアリソンの幼馴染だった。
幼馴染と言っても会うのは約七年ぶりだ。成長し幼い頃とは姿形がまったく異なる男性が同じ空間にいることは彼女にとって恐怖でしかない。緊張のせいで鳥肌が立つ。
アリソンは白い王太子のアランに目を向けた。
色素がまったくない真っ白な髪が光に透けて、長めに伸びた毛足が装飾品のように端整な顔を縁取る。少し灰色がかった蒼い瞳は冷たく彼女を見下ろしている。
彼の薄い唇が皮肉に歪んだ。
「お久しぶりです。『銀髪の乙女』と現世で再びまみえることができるとは思いもよりませんでした。大変光栄です」
軽く会釈をする彼の動作は優美で流れるようだ。しかし、彼の態度はあくまで儀礼的で感情がまったく入っていない。光栄などと思っていないのは明らかだった。
敵意とまではいかないまでも凍てつくような冷たい視線にアリソンは怖気づいた。
次にアリソンは黒髪の騎士、ニックを振り返った。
何も言わずに見返す眼差しには激しい怒りと憎悪が込められていて、彼女は思わず一歩退いた。
漆黒の艶やかな髪。黒曜石のように光る黒い瞳。対照的に白磁のような滑らかな肌。男らしい顎と彫りの深い鼻梁。精悍な顔立ちに鍛え抜かれた体躯。
幼い頃のあどけない顔しか思い出せないアリソンは、凛々しく成長した幼馴染から憎しみの籠った視線を向けられて恐怖に慄いた。
間に立っていたリズが取り繕うように
「あ、あのね。アリー様は男性の護衛をつけるなら自分を性的対象と見ないような人がいいと仰っていたでしょ?この二人は根っからの女嫌いで女性不信だから安心よ!」
とフォローするが、アランとニックの表情は変わらない。
大きく息を吸って、ニックは言い放った。
「俺は女が嫌いだ。特にお前みたいな女が大嫌いだ」
息をのんだアリソンに向かってもう一度蔑むような視線を投げると
「お前のことは大嫌いだが、俺は自分のやるべき仕事をする。それだけだ」
そう言ってニックは部屋から出て行った。