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猫と猫CAFE主人  作者: 零月隼人
〈第一部〉
4/23

数日後。

僕は結局、冒険に出る覚悟はできず、この猫CAFÉに定住することにした。やっぱり、ここが絶対安全だからね。

しかし、だからといって、一生猫CAFÉにこもったままというのも面白くない。

そこで、とりあえず、散歩に出かけることにした。

拓人が、見送ってくれる。


「気を付けてね。ここを出ると、人間がうじゃうじゃいるから。特に猫は、今一番狙われやすい生き物だしね。

それから、道に迷わないようにするんだよ。ここは、少し分かりにくい場所だから。」


拓人はとても心配してくれるね。

まあ、少し散歩に出るくらいだ。大丈夫だろう。

僕は、「散歩ぐらいなら・・・・・・」と僕の考えに同調する者共、二十数名を引き連れて、猫CAFÉを出た。



猫CAFÉの中でゴロゴロしておくのも安全でいいけど、マンネリ化して飽きる。

一方外は少し怖いが、解放感があり、新鮮さがあって良かった。

そう、僕がまだ野良猫だったころ思い出すような光景である。

・・・・・とはいえ、僕らは一度人間に捕まったことがある身だ。

最初は建物を離れるだけでも、ビクビクしていた。

他の猫達を見ると、みんな僕と同じ気持ちなのか、少し震えていた。

それなら、と思って、まずは建物周辺をぐるりと一周した。さすがに、猫CAFÉの加護が外にもやや漏れているのか、ここら辺にはまだ人は来ない。

お、案外いけるんじゃね。

他のみんなを見ると、さっきまでの恐れていた雰囲気はどこへやら、みんな余裕綽々という表情だった。

そんな感じで、調子に乗った僕たちは、もう少し広く一周回った。



そう、いつの間にか、僕らはだいぶ遠くまで来てしまったらしい。猫CAFÉの位置が分からなくなった。

・・・怖い。

他のみんなを見ると、余裕綽々の表情が嘘だったように、みんな真っ青になっていた。

今僕は、自分自身の顔を見ることはできないが、おそらく他とさほど変わらないだろう。

その時、僕らの頭上から声が聞こえてきた。


「お、猫じゃねえか。」

「おいおい、この食糧難時代、なんで猫がこんなにいっぱいウロウロしてんだ?」

「こんなもの、食べてくださいといっているようなもんだろ。ちょうど、今空腹なんだ。」

「いや、ここはあえて、高額で企業に売るってのもいいんじゃないか。そうすれば、俺達の懐にめっちゃ金が入るぜ。」


・・・・・・最悪だ。

上を見ると、何人かの人間が舌なめずりしていた。

どうする。

考えろ、考えろ・・・・・・

どうすれば、犠牲を出さずに、ここから離脱できる?

と、僕がこう考えている間に、すでに猫が何名か捕まったり、齧られたり、銜えられていたり、完食され切っていたりしていた。

ダメだ。

このままだと犠牲が増える一方だ。

僕の命とて、安全とは言いがたい。

人間の人数を把握しろ。

・・・・・・四人か。

一方こちらの数は?

やや数は減って、十数名か。

・・・・・・よし。


「お前ら、よく聞け。人間は個々の力は強大なので、このままでは我々は、全滅する恐れがある。しかし、現在、敵側には欠点がある。それは数の少なさだ。見たところ敵は四人、一方こちらは十名以上だ。それゆえ、今から四方八方に分散し、敵を一人ずつに割く。そこからは何とかして、猫CAFÉまで辿り着け。そうすれば、まだ何名かは生き残れるかもしれない。よし、言い出しっぺとして、僕が人間共を突破しよう。その隙に、ここからできるだけ離れるのだ。」


なんと無茶な作戦だ。

何とかして猫CAFÉに辿り着くなど、不可能に等しい。

それでも・・・・・・やるしかない。

ちなみに猫達は皆、出身地が別々だ。

そのため、僕の言葉も彼らには伝わらないだろう。


「おっしゃー、やってやろうぜ。兄貴、ついていきます!」

「そうね。この作戦なら、誰かは生き残れるかもしれない。ひょっとしたら、私だって。」

「人間共を殲滅してくれるわ。」


お、みんな、意気よしといったところか。

それじゃあ、作戦通り――――――


まず僕が突然、回れ右して、人間共の方へ向かって走り出す。


「おい、一匹こちらに向かって突進してくるぞ。自殺志望か。」


四人が同時に僕らの方へ目を向ける。

その隙に・・・・・・

次の瞬間、猫達がみんな四方八方に走りだした――――――

人間共は、僕に気を取られていて、まだ気づかない。

猫達がだいぶ離れたころ。

一人の人間がようやくこのことに気がついたようだ。


「しまった。この猫に気を取られて、他の猫があんな遠くに。」

「そんな。猫にこんな知能があったのか。」


何を言っているのやら。猫に知能があるわけないだろ。

これはすべて、偶然の産物だよ。

ちなみに僕は、人間の言葉を理解することはできない。

さあ、あとは賭けだ。僕が猫CAFÉに辿り着けるかどうか・・・・・・

思い出せ!!猫CAFÉまでのルートを。

人間に追いつかれないように、ただひたすら走る。

捕まらずに逃げ切る一方で、思考はすべて猫CAFÉの位置特定に捧げる。

今この一瞬、一瞬が、僕のこれからの生涯に関わっている。

人間の手が、僕に微かに触れる。

まだだ、まだ死ねない。

とにかく走れ!

体力が残っている限り走れ!



僕の意識が戻った時には、すでに猫CAFÉの中で保護されていた。

拓人が、僕が目覚めたのを見て、声をかけてくれる。


「お、気がついたかい。まったく、びっくりしたよ。何やら外が騒がしいと思ったら、人間に追いかけられているところを、君が必死に逃げてきたんだから。ああ、人間の方は大丈夫だよ。俺がちゃ~んと始末しておいた。しかし、人間を倒したと思って、改めて君を見たら、ぐったりと倒れていて・・・・・・ まさか死んだのかと思って、慌てて抱き上げたら、ただ気絶していただけだったみたいなので、安心したよ。」


どうやら僕は、少しの間意識を失っていたようだ。

今はもう猫CAFÉのソファーで、安静にしているが。

ちなみに僕は、人間の言葉を理解することはできない。

まわりを見ると、散歩に行かなかった猫達が、僕を見上げている。

それにしても・・・・・・今回は本当に大変な目にあった。

もう二度と、猫CAFÉからは出ない、と心に誓ったのである。



ちなみに・・・・・・僕と共に散歩に行った猫達は、一名たりとも、猫CAFÉへ帰ってくることはなかった。

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