~ジョンのエピソード~【後編】
番外編 その②ー2
今回は、この小説で過去最大の、いわゆる「残酷な描写」があります。ご注意ください。
ジョン達が移住してから、2ヶ月がたった。ジョンは当時十二歳。本来であれば、小学六年生であるので、学校に行っていたはずだった。しかし、スイスに亡命してからは、当然現地の学校に編入することもできなかったので、勉強は独学となっていた。
彼は数日に一度、他の国に渡り、なんとか学びを得ていた。
そんなある日のことである。その日は、メアリーが体調を崩したので、マイケルが都市部まで、解熱剤や頭痛薬など、いくつか薬を買いに行った。だが、なかなか全てのものが揃わなかったため、複数軒店を回った。
その中の一つの店で、マイケルは目撃してしまった。紅国の軍人だと思われる、3人を。
どうやら3人の方はマイケルに気づいていないようで、まわりを気にせず話していた。
「船宮軍曹、よくやった。逃亡者、マイケル・ブラックとその家族を見つけ出すとは。すぐにその3人を捕らえるぞ!」
「お褒めいただき、恐悦至極でございます、完田様。つきましてはこれより、3人のアジトまでご案内いたしましょう。」
これを聞いたマイケルは、青ざめ、慌てて店を出た。
そして、すぐに家に急行した。
「ジョン!メアリー!」
マイケルは家に着くと、大声で二人を呼んだ。
そんなマイケルに、何事かと、ジョンもメアリーも駆けつけた。マイケルは、先ほど起こっていたことを、二人に説明した。説明が終わると、ジョンはマイケルに尋ねた。
「それで、なんでそんなに慌てているの?紅国の軍人にここを見つけられるから?」
マイケルは答えた。
「ああ。少なくとも、“様”付けされていたヤツは、おそらく士官以上だ。末端の兵士であれば、俺と同じく徴兵された身であろうから、説得することも可能かもしれないが、三人のうち、二人は志願兵だ。こちらの言い分は通用しない。」
マイケルの言葉に、ジョンは反論できなかった。
マイケルは続ける。
「こうなったら、もう見つかる前に逃げるしかない。相手は軍人。戦っても勝ち目はない。ということで、一刻も早く逃げる準備をしろ。」
ジョンは聞いた。
「え、どこへ?」
「とりあえずスイスには居続けるべきではない。どこかで民間機を調達し、また別の国に亡命するしかないだろう。」
ジョンはそれを聞き、準備に入った。
そして準備出来次第出発し、まずは、アルプスを越えることに挑戦することとなった。
結局、民間機を調達するのは困難だった。そこで、代わりに山の中に放置されていた、車を修理して走らせた。これでまだ徒歩よりは安全だ。
マイケルは、車を走らせながら、周囲を見回した。まだ、追っ手は近くにはいない。これなら逃げ切れるかも、と自信を持ち直した。
だが、ようやくアルプスを越えられるか否かの所で、マイケルは前方に、三人の人影を確認した。
「あいつらは・・・・・」
そう、先ほどドラッグストアで目撃した、紅国の軍人たちである。
マイケル、車体を急速回頭。今来た道を引き返した。
しかし、後方を見ると・・・・・・
一人の男が、車と同じスピードで追いかけてくる。
ていうかこの小説、人間離れした速度出せる人間多すぎる気がする。
もちろん、この男の正体は、完田中尉である。
車と同じスピードだから、だいたい時速100kmくらいかな。上東やジョンには劣る。
マイケルがなんとか完田中尉を振り切ろうとしていると、前方にも一人の人間が現れた。船宮軍曹である。
「くそ、こうなったら、ひき殺してやる。」
こうして、船宮軍曹は、車の下敷きになった。
しかし、車が走り去ったあと、船宮軍曹は立ち上がった。
「私は不死身&不老不死。そんな攻撃は通用せん。」
これを見たマイケルは歯ぎしりした。
そう、これこそがマイケル達の敗因である。
完田中尉と船宮軍曹に気を取られて、もう一人軍人がいたことを忘れていた。中川速太郎二等兵だ。
「中国拳法奥義・発頸!!」
車の左側面に、強力な打撃が加えられた。その直後、車が横転した。
完田中尉達に捕獲されたジョン達は、そのまま正座させられた。
完田中尉が、一方的に話し出す。
「徴兵から逃れようとした、愚か者共め。貴様達の動きなど、我々の想定範囲内だ。マイケルよ、お前は店で我々と遭遇した時、気づかれないと思いこんで、我々の会話を盗み聞きしていただろう。薄汚いドブネズミめ、貴様は気づいていなかったが、我々はそんなことなど最初から承知している。あそこで貴様を捕らえることもできたが、それでは捕まえられるのは貴様一人だけだ。貴様は、死んでも妻と息子の居場所を吐かない。だから敢えて泳がせ、貴様を尾行し、アジトの場所を特定したのだ。そうそう、店ではまるで貴様らのアジトを知っているかのように見せたが、本当はあの段階では場所の見当などついていなかったのだ。そして、貴様達は他国へ逃亡しようと焦る。しかし、それにはアルプス山脈を越えざるをえない。だから、我々はここで待ち伏せたのだ。」
マイケルはこれを聞き、尾行に気がつかなかった自らを悔やんだ。
完田中尉が続ける
「それでは貴様達を罪状を伝え、罰を与えよう。マイケル・ブラック、メアリー・ブラック、ジョール・ブラック、貴様達三人は、許可なく本国を出国し、そのまま他国へ密入国した。それにより紅国最高裁判所より、不正出国と国家反逆の罪で逮捕状が出ている。そこで、我々三人は、お前達凶悪犯罪者を捕らえるため、この国に派遣された。貴様達三人の刑罰もすでに確定している。
まず、マイケル・ブラック、貴様は今回の事件の主犯だ。よって、死刑に処す。
次に、メアリー・ブラック、貴様は主犯ではないが、この事件の共犯者で、れっきとした成人女性である。よって、隠岐島に流罪の上、終身刑に処す。
最後に、ジョール・ブラック、貴様もメアリー同様、この事件の共犯だが、貴様は未成年だ。よって無罪とする。
それでは、船宮!これより、マイケル・ブラックの銃殺刑を敢行する。拳銃発砲用意!!」
この言葉を聞き、船宮軍曹は、銃を構え、躊躇いなく撃った。
船宮軍曹から放たれた拳銃の弾は、マイケルの眉間に直撃し、そのまま貫通した。
マイケルは、遺言すら許されず、息絶えた。
メアリーとジョンがただひたすらに泣き喚いたのは、言うまでもない。
その後、メアリーとジョンは、拘束されたまま、紅国に強制送還された。
途中、護送のヘリが隠岐の上空を通過した際、完田中尉はメアリーをヘリから突き落とされた。メアリーの生死は、不明である。
またジョンは、無罪ではあったものの、両親を失ったため、そのまま軍の独房に収容され、成人するまでの八年間、そこから一歩も出ることを許されず、二十四時間・365日監視付きの生活を強要された。
そして、ジョンは収容所の中で知らされたことであるが、あのあとマイケルの遺体は、国に送り届けられ、首と胴体を切断されたあと、首は国中に晒され、それ以外の体の部位は、食肉として出荷されたという。このことは、全国の国民に知れ渡り、軍上層部は、もし徴兵令に逆らえば、マイケルと同じ刑に処すと宣言したため、徴兵令に従わない国民は、一人たりともいなくなった。
次は、本編に戻ります。




