駄王国が!!
今までギルドの概念を持たなかった冒険者たちは、ギルドに登録などしていなかった。
登録の義務などが法で定められてないが故に、普通は従来の自由冒険者で過ごしていた。
なので数少ない登録者を消去してしまったメロウスは、路頭に迷うのであった。
しかし…
出来たばかりの冒険者ギルド『アメルダ』
扉を開け、一人の金髪の少女が入って来た。
「パパ!パパはどこ!?」
ん!?パパ?
「パパが冒険者として真面目に頑張るって言うから」
このギルドの冒険者…
その場の三人が風と共に去っていった男を思い出したが、目の前の可憐な少女とは、明らかに遺伝子が違いすぎると感じながらも、なにも言えなくなっていた。
「ねっねえ?あなたのお父さんどんな人なの~かな~?」
ナイス!アメルダ!!(一同)
「お父さんは、筋肉ムキムキでガタイがよくて」
「うんうん」(一同)
「髪型は、黒髪を頭の真ん中だけ残して剃ってて」
「キミは金髪なのにね」(一同)
「目つきが悪くて口癖がグッヘッヘッ」
「目つき違い過ぎるしグッヘッヘッは口癖に入るのかな~」(一同)
全員が察した。これは間違いなくあの男の娘、そしてこの世界の遺伝子は仕事をしていないと確信した。
仕方ない、やっちゃった手前何とか誤魔化すしかない!!
「あなた、私の声が聞こえる?」
少女はキョロキョロとあたりを見回している。剣が喋るとも思っていないわけだ。
「テーブルの上の剣が私ですよ」
「!?…あなたが聖剣レフトハンドソード様?」
クッ心が痛む…略してクッコロ…
「そうです。私がレフトハンドソードです。」
「レフトハンド様!どっどちらが勇者様なのでしょうか?」
「少し詳しく話しておきましょうか…」
ここが大事よメロウス、ここを凌ぐ…いいえ、ここで道筋を作るのよ。
この時、この子『リリン』につく嘘が、それが、これからの世界そのものを形を作るなんて、この時は知るよしもなかった。
「つまりレフトハンドソード様は、選ばれたものにしか真の力を使えないように鞘に納められ、勇者様は次の世界を救うために旅立たれた。パパは、勇者様と同じ力を示すために、同じ道をたどる冒険に出た…っということですね?」
「そうよリリン、二人ともそうでしょ?」
二人が無言で頷いた。
「リリンちょっと外で待っててくれる?大人の大事な話があるの?」
「わかりましたレフトハンドソード様…」
「終わったら呼ぶわ」
素直に外に出るリリン、その後姿を見送ると、バッと視線がメロウスに集まる。
「どうするの~よ」
けだるそうに、バーに両肘をかけている。
「そうだどうする?」
そう言いながらも酒を飲むのはやめない。
「それなんだけど、リリンちゃんに冒険してもらうのはどうかしら?」
「どういうこと?」
「リリンちゃんと素材集めに出て、頃合いを見てパパが死んだことにして、パパの後を継いで冒険してもらって剣完成、リリンちゃんもなんとか納得ってことよ」
「でもリリンちゃんは普通の女の子でしょ?」
「ふっふっふっそこは私のサポートでちょちょいのドーン」
「お前、鞘のくせに何をするんだ?」
「あのね、神から与えられた魔法と知識があれば、あの子はチート冒険者、並大抵の敵では勝てないはず。」
「神様ってそんなにすごい力をくれてるの?」
「あらゆる攻撃魔法が使え、この体も魔法剣として最強クラスの仕上がり」
「それってレフちゃんいるの?」
「それは言わないで…」
自立できる者の悲しさ…本来、普通は必要なものが、できるが故に、なくても何とかなってしまう事実…
そしてそれは多く場合手に入らない…
「詳しい事、細かいことは後々決めていくとして、まずは…神きている?」
『聞いているがどうする気だ?』
「聞いたまま、あの娘と旅に出て、素材を集めてくる!」
『ないものはどうするのだ?』
「そこに至るまでのルートを確立しておくのよ」
『なるほどなあ』
「つまり私が呼んだらすぐに返事な!!」
この後、少女リリンを説得し、二人で王の所に向かうことになった。
王の間、赤い絨毯の先に王が座している。
「神に聞いてると思うけど、全力で手伝えよ」
メロウスは悪態をついた。
「あの王様、私頑張ります!パパに会いたいんです!!」
リリンは純粋な気持ちをぶつけた。
「あれは会わなくても良いと思うぞ」
王様も純粋な気持ちで答えた。
何言ってんだこの王?今すぐ王子に王位継承させたろか?こんなんだから魔王に好き勝手されてたんだよ、駄目王が!!
「そっそうよ、アナタのお父さんも並々ならぬ決意で出て行ったはず、無理に会いに行かなくても、きっと使命を果たして戻ってくるはずよ」
王様は困惑した。えっ?あのモヒカン犯罪者のことだよね?いつ死んでくれても利益しかないと思うんだけど?そもそも、この娘は絶対に腹違いか連れ子だろ?
「あの男が居なくなって清々する。」
だっかっら!!殺すぞこのクソ王が!!!
「互いに悪態を付き合うくらいお父様と仲がよかったのよ~」
「うっうん…」
この後もひどかった。
大臣が…
「この旅の支度金は、あの親父の飲み代ではないぞ、くれぐれも渡しては駄目だ」
護衛の騎士が…
「お前の親から街の治安を守らなくていいようになればいいな」
神官が…
「父の暴力からあなたを退ける加護を授けましょう…」
王都の人々が…
「あいつ人間やめたったよ~」
どいつもこいつも本当のことばっかり言いやがってぇぇぇえ!!
横では、ずっと泣きそうなのを強がって我慢してるリリンちゃん…
街の門を出る直前に、一人の少年が近寄ってきた。
「なあ、お前もあの犯罪者みたいに頭の横ハゲちゃうの?」
クッソッッガッキがぁぁぁあああ!!!!!
顔を伏せ、街の門を走り抜けて行くリリンに、すれ違いざま門の守衛が声をかける。
「お父さんの虐待に気をつけるんだよぉぉぉおお!!」
それはそれは優しく力強い声だった。
街から遠ざかるリリン、これから彼女は慈愛の勇者として、この世界において『女神』と呼ばれるほどの異業と功績を残すが、その面影は今は無いし泣きまくっている。
「うわああんパパは悪…」
そこまで行って言葉に詰まる。なぜならお父さんが悪い奴なのがわかっいるからだ…
「ちょっと神様どうなってるの?事前に話してないの?」
私は神に訴えた。
『ここまで声をかけた一人一人に励ますように啓示を行っています。』
励ます啓示?ってことはアレか?王国全体が啓示があって、励ましてこの様か?こッッッッッの!!
「駄王国がぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!!!!!!!」
父の後追い、冒険者となったはリリン、冒険者として凄い役に立ち、千年王国の基礎を作った。
世界救済の駄目押しに、自身の刀身を作る素材を集めるため、異世界勇者を召喚し・・・
次回 駄勇者が!!