第二話 エルフの森
「ん?今なんて言いました?」
僕の耳がおかしくなってなければ彼女は今、ここはどこ私はだれといった。
ここはどこなんだーーは同意見。けれど後半はどういうことだ。
「あなたはだれ?ここはどこなんですか」
なんてことなんだ。こんな状況で栞ちゃんの記憶が消えてしまうとは。
「きゃー助けてーー」
悲鳴聞こえるとともに耳が長くてまるでエルフのような少女がこちらに走ってきた。
「どうしたの?何があったの」
その瞬間、森の木がバタバタと倒れものすごく大きなオークのようないやもうオークだ、走ってきた。
「おい、待ちやがれ逃げんじゃねー」
図太い声が辺りに響いた。だれが見てもやばい状況。とりあえず栞ちゃんと少女の手を取り走る。走るしかないが、図体がでかいあいつと競争をしても、追いつかれるのは分かってる。
「柊君、このまま走って行けば分かるから」
栞ちゃんが指示を出してきた。行けば分かるってまぁ彼女なりに策があるのだろう。
親しくなってから一時間しか経ってないけど僕は楽しかったよ大学生活。君と一緒に行けるなら僕は後悔なんて。そんな捨て台詞をはきながら走っていると彼女の言った意味が分かった。
そこには村があり、近くに結界のようなものが村を囲うようにありオークも追ってきていない。
「エルナ!大丈夫だったの....」
「うん!お兄ちゃんとお姉ちゃんがここまで連れてきてもらったから」
この少女、エルナのお母さんのようだ。後に話を聞くとエルナとエルナのお母さんは森に薬草を取りに行きそこでオークに襲われたようだ。
「ありがとうございます。この御恩一生忘れません。」
「いえいえ私達もどうなることかと思いましたがこの村の結界に救われました。」
彼女の言う通りだ。この村の結界がなければ僕たちも危うかった。でも彼女は結界があることを知っていたのか。
「エルナを救ってくれたそうじゃな。人間の方達よ。私らの精一杯の恩としてこの村で体を休めてくだされ。ささこちらへ」
この村の村長さんが出てきて村広場に案内される。
「あの、少し時間をもらえますかすぐに、行きますので」
彼女はそう言うと僕を村長達と離れた場所に連れて行った。
「柊君、もう気付いていると思いますがここは、松陰宗生の小説「エルフの森」の小説の中なんです。」
父の小説の中だと。確かに彼女が父の小説を開いたときにここに飛ばされてそれは「エルフの森」というタイトルの小説だ。
だがその小説の内容だとエルナがオークに襲われるのはまだ先のはずだ。おそらく僕達がこの物語に入ったことで話の内容が変わってしまったのだろう。
「えっと柊君、私はこの小説を何度も読み返しているのですが、この先の内容って思い出せますか?」
「いや、僕も何故だか分からない。本のタイトルとエルナが襲われる場面は分かるけど」
「私達は知っている本の世界に飛ばされたけど、本の最後は忘れているということですね」
ということは僕達の行動によってこの物語が変わってしまうということか。
「とりあえず謎の声の通りにこの物語を完成させなくてはなりませんね。エルフの村をオークから守ると言ったところでしょうか」
「謎の声って気絶してなかったっけ。まぁ今はそれしか方法がないか。村長さんのところへ行こうか。」
そのあと村長さんと会話をして村の人達にお礼を言われて夜には宴が開かれた。
この村は、男が二十人程度、女が十五人人程度の小さい村でなんでもエルフの村はここ以外にもあり、二年ほど前にオークに襲われた際に半分くらいのエルフは村を離れてしまったみたいだ。
「この先オークに村自体が襲われる可能性はありますか。」
「結界が村を守ってくれていますが、絶対に襲われないとは限りません。あぁ他のエルフが戻ってきたらどれほど心強いか」
「他のエルフは今どこにいるとかあてはあるのですか。」
「私の息子は二年前にオークと群れと戦いそのあと連絡が取れません。他の去ってしまったエルフも聖霊の加護を持っているものばかりで....」
今精霊の加護って言った?さすがファンタジーだな。村を守るには、他のエルフの力が必要になってくるな。今は大丈夫だけど結界が破られるのも時間の問題かもしれないし、早急に手を打たないと。
「お二人今日は、もう遅いでしょうから、我々が用意した部屋へ案内します。そこでお休みください。」
そう言って案内されたは良いもののなんと部屋は一つで布団が一枚枚敷かれていた。
「お二人はお若いですからどうぞごゆっくり」
この村長、僕達を勘違いしているな
「栞ちゃん、僕は外で寝るから、君は中で寝て。その困るよなこういうの」
僕は紳士だ。こういうことは手順をおいてだな。
「いいよ、柊君、外は寒いし、一緒に寝よ?」
なんだとーーこんなことが許されていいのか。
女の子と話しただけじゃなくて一緒の部屋で寝ることになるなんてこれはまさしく吊り橋効果ってやつかな。彼女は先に布団に入った。そして僕を手で手招きしている。
恐る恐る布団に入る。入ると言っても布団のギリギリの所を体半分入れたくらいだ。
「柊君そんなんじゃ寒いですよ。もっとこっちにこないと」
彼女が僕を引っ張ってきて僕は、体全部布団に入ることになった。当然彼女の肩がふれるくらいの距離で。
「なんだかおかしいですよね、この状況。今日話したばっかなのにここに飛ばされて、物語を完成させろなんて。でも私は柊君が居てくれればなんとかなると思います。」
「そうだね、僕達ならきっとできるよ、きっと」
そう言って彼女は先に寝てしまった。僕も寝たいけど、こんな状況で寝れないし何があってもいいように起きておこう。
夜が明けて朝になった。この世界と現実の時間はどうなっているのか分からないが飛ばされてから一日経ったということだ。彼女は、まだ寝ている。
「ん、柊君、いきなり私こういうのは初めてで」
もっと丁寧に書きたかった............