第1章 #1 異変
じりじりと照りつける日差しの中
山奥にあるお寺を参拝し終えたライカはこれまで歩いてきた無人駅へと戻る為に歩き出していた
この日の気温はゆうに30℃を越しておりアスファルトからは陽炎がみえはじめている。
山道なので上りは傾斜がきつく、体力の消耗が激しかったが下りはかなり楽であった
それでも日頃運動不足がたたっているライカにとっては肩で息をする程、かなりキツク感じていた。
山林の中は涼しかったが、平野はそうはいかず、むしむしと暑苦しい。
山道を抜け駅方面に向かう道順を辿っていくと古びた小さな神社があった。
ライカはふと誰かの声を聞いたような気がして何だか無性に気になった。
周りには民家はほとんど無く、山が続いている。すれ違う人も居らず閑散としている為、
妙なこともあるものだとただ単にそう思っていた。
(お願い!助けてー)
通り過ぎようとして歩き出した瞬間、ライカは誰かの悲鳴に似た切実な声を聞いたような気がした。
キョロキョロと当たりを見回す。
ライカ「?…何だ?誰かの声が聞こえたようなき気がしたのだが…気のせいか?」
(お願い!このままじゃ…誰も助からない。この声が聞こえてるならどうか。もう1人のライカ!)
ライカ「え…?今、私の名前を呼ばれたような気が…。もしかしてこの上から…?」
ライカはふと石段の下に立ち止まり、神社の鳥居を見上げる。
するとそれに応えるかのように風が強く吹き付けてきた。
とりあえず、ライカはせっかく来たのだから参拝を済まそうと思い石段を上がり境内に踏み込んだ。
そして、手を清める為に杓が置いてある手洗い場へと向かっていく。だが、そこは長い間使われていないようで水は流れておらず下に溜まっている水も黒く汚れていた。
ライカは不気味に感じながらも
仕方なしに、手を洗らうことを諦めてそのまま本尊が祀られている所までそのまま行くことにした。
賽銭箱が置いてある本尊までの通路には幾つか絵が掛けられていた。
絵の内容は牛の絵、いつの時代か分からぬ合戦と思われるものが飾られていた。
その道を進み、目的地へと到達すると鈴を「カランカラン」と鳴らし、二礼二拍手一礼をして参拝を終える。その時ふと誰かがいる気配を感じた。
ライカ「何だ?この感じ…。誰かいるのか?」
しかし、返答はない…。それどころか人っ子一人として姿は見えないのだ。
否、後で知ることになるのだが、確かに人は居た。しかし、こちら側の世界にではない。別のもう一つの世界にだ。返答はあったのだ。しかし、ライカには届いてなかったという方が正しかった。